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第3章 北の大国フェーブル
第84話 王太子妃教育
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さて、ロゼとクロがブラウシュテルン公爵家でサフィニアといろいろやっていた頃、王宮ではロゼッタ・シーラッハ男爵令嬢に対して王太子妃教育を施す面々とロゼッタとの顔合わせが行われていた。
本来なら侍女ゾフィアのふりをしているロゼも同席する予定だったが、待ち合わせの部屋に向かう途中、クロからの呼び出しがかかってロゼは行ってしまった。
僕だけで対峙しなきゃならないなんてそりゃきついよ。
ロゼッタこと精霊ネイレスが心の中でぼやきながら、王妃に紹介された教師一人一人に頭を下げる。
「ロゼッタ嬢が音を上げるのが早いか、王太子がロゼッタ嬢に飽きるのが早いか。それまで教師の皆様もお手数ですがよろしくお願いいたしますね」
王妃ダリアは教師たちに告げた。
このおばさん、容赦ないな……。
ダリアの辛辣な物言いにネイレスことロゼッタ嬢は苦笑いした。
教師はそれぞれ「礼儀作法」「ダンス」「音楽」「美術」「法律」「外交」「歴史」など、とりあえず七名が揃えられていた。
「あの、お手柔らかにお願いします」
おずおずとロゼッタは教師たちに頭を下げ頼んだ
「いいえ、ビシバシと行きます。後々国王となられるお方の妃になるという事は甘い事ではないとわかっていただくことが重要、と、王妃殿下からも言いつかっておりますゆえ」
そう言ったのは礼儀作法を教える教師のディケット夫人である。
礼儀作法を教える人間というのはどうしてこう底意地の悪いのが多いのかな?
やはり他人のあら捜しが主な業務だからかな?
参考に聞いていた精霊ロゼが人間だった頃の体験談も合わせてネイレスは思った。
「顔合わせだけの予定でしたが、基本的なお辞儀をしていただいてもよろしいですか? カーテシーという片足を引いて腰をかがめる、ご存じですわね」
いきなりな要求を夫人は突きつけた。
それに対してロゼッタ嬢ことネイレスは、かしこまりました、と、見事なカーテシーをやって見せた。
「ま、まあ、美しいですわね……、でも、そのくらいはできていてくれないと……」
さっそく男爵と王族や高位貴族とのレベルの違いを思い知らせてダメ出ししようとした夫人が、意表を突かれたような顔をした。
当たり前だ、僕を誰だと思っている。美と夢幻を司る精霊だぞ。
人の心が望む美しさを体現するなんて朝飯前さ。
心の中でドヤりながら、ありがとうございます、と、しおらしくロゼッタ嬢は答えた。
「そのへんはさすがに息子の王太子をタブらか……、いえ、魅了しただけのことはあるのでしょうね。まあ、それだけとも言えますけどね」
ダリア王妃が感想をもらした。
相も変わらず辛口だな、と、思いながらも、ロゼッタ嬢はなおも王妃にすがるように言った。
「あの、私はヴィオレッタ嬢よりきっとお役に立って見せますから」
月並みだが目をウルウルさせロゼッタは言った。
「まあ、頼もしいこと! ならばそのお得意の人をたらし込む、いえ……、魅了する力で公爵以上の後見を得てみせなさい。そうすればこちらとしてもあなたへの認識を改めるというもの」
軽く笑って王妃は部屋を後にした。
こういう感じでこびていけばナーレン王太子の方は『イチコロ』だったのだが、女性でしかも海千山千といった王妃はそう簡単には行かないようだ。
ネイレスはそう思ったがダリア王妃のほうは、
「あの娘、見かけだけで頭は足りないと思っていたけど、意外としたたかね。使いようによっては下賤な公爵代行や何を考えているかわからないヴィオレッタよりも役に立つかもしれないわ」
と、廊下を歩きながら独りごちていた。
冷淡な態度をっていたもののロゼッタに対する認識はそれなりに向上していた。
とはいっても、あくまで自分の権力保持に有用かどうかという基準においてではあるが。
本来なら侍女ゾフィアのふりをしているロゼも同席する予定だったが、待ち合わせの部屋に向かう途中、クロからの呼び出しがかかってロゼは行ってしまった。
僕だけで対峙しなきゃならないなんてそりゃきついよ。
ロゼッタこと精霊ネイレスが心の中でぼやきながら、王妃に紹介された教師一人一人に頭を下げる。
「ロゼッタ嬢が音を上げるのが早いか、王太子がロゼッタ嬢に飽きるのが早いか。それまで教師の皆様もお手数ですがよろしくお願いいたしますね」
王妃ダリアは教師たちに告げた。
このおばさん、容赦ないな……。
ダリアの辛辣な物言いにネイレスことロゼッタ嬢は苦笑いした。
教師はそれぞれ「礼儀作法」「ダンス」「音楽」「美術」「法律」「外交」「歴史」など、とりあえず七名が揃えられていた。
「あの、お手柔らかにお願いします」
おずおずとロゼッタは教師たちに頭を下げ頼んだ
「いいえ、ビシバシと行きます。後々国王となられるお方の妃になるという事は甘い事ではないとわかっていただくことが重要、と、王妃殿下からも言いつかっておりますゆえ」
そう言ったのは礼儀作法を教える教師のディケット夫人である。
礼儀作法を教える人間というのはどうしてこう底意地の悪いのが多いのかな?
やはり他人のあら捜しが主な業務だからかな?
参考に聞いていた精霊ロゼが人間だった頃の体験談も合わせてネイレスは思った。
「顔合わせだけの予定でしたが、基本的なお辞儀をしていただいてもよろしいですか? カーテシーという片足を引いて腰をかがめる、ご存じですわね」
いきなりな要求を夫人は突きつけた。
それに対してロゼッタ嬢ことネイレスは、かしこまりました、と、見事なカーテシーをやって見せた。
「ま、まあ、美しいですわね……、でも、そのくらいはできていてくれないと……」
さっそく男爵と王族や高位貴族とのレベルの違いを思い知らせてダメ出ししようとした夫人が、意表を突かれたような顔をした。
当たり前だ、僕を誰だと思っている。美と夢幻を司る精霊だぞ。
人の心が望む美しさを体現するなんて朝飯前さ。
心の中でドヤりながら、ありがとうございます、と、しおらしくロゼッタ嬢は答えた。
「そのへんはさすがに息子の王太子をタブらか……、いえ、魅了しただけのことはあるのでしょうね。まあ、それだけとも言えますけどね」
ダリア王妃が感想をもらした。
相も変わらず辛口だな、と、思いながらも、ロゼッタ嬢はなおも王妃にすがるように言った。
「あの、私はヴィオレッタ嬢よりきっとお役に立って見せますから」
月並みだが目をウルウルさせロゼッタは言った。
「まあ、頼もしいこと! ならばそのお得意の人をたらし込む、いえ……、魅了する力で公爵以上の後見を得てみせなさい。そうすればこちらとしてもあなたへの認識を改めるというもの」
軽く笑って王妃は部屋を後にした。
こういう感じでこびていけばナーレン王太子の方は『イチコロ』だったのだが、女性でしかも海千山千といった王妃はそう簡単には行かないようだ。
ネイレスはそう思ったがダリア王妃のほうは、
「あの娘、見かけだけで頭は足りないと思っていたけど、意外としたたかね。使いようによっては下賤な公爵代行や何を考えているかわからないヴィオレッタよりも役に立つかもしれないわ」
と、廊下を歩きながら独りごちていた。
冷淡な態度をっていたもののロゼッタに対する認識はそれなりに向上していた。
とはいっても、あくまで自分の権力保持に有用かどうかという基準においてではあるが。
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