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第1章 山岳国家シュウィツアー
第41話 王宮裁判 ~証人ミカ・キタヤマ~
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王太子の婚約者、クーデン男爵家の令嬢サルビア。
三大公爵家の一つノルドベルク家の夫人ロベリア。
そして同じくノルドベルク家の嫡男エルフリード。
この三名の逮捕によって王宮内に激震が走った。
罪状は『反逆罪』。
王族及び準王族に危害を加えようとしたりその協力をしたと見なされた時に適応される。
王族とは現在即位している国王から見て直系の血族。
準王族とは国王の兄弟姉妹とその家族、および、王族と婚約関係にあり将来王族に加わる予定の者。
なお王族から臣籍降下している場合、本人のみが準王族となりその家族は含まれなくなる。
逮捕された三名は貴族ではあるが罪状が罪状なので、それぞれ王宮内の地下牢に収監された。
彼らの家族にも捜査の手がおよぶ。
まずノルドベルク公爵は被疑者ではないので王宮内の一室にとどめ置かれ、その間に王都内の公爵邸の家宅捜索が行われた。
サルビア嬢の実父クーデン男爵とその家族は王都にはおらず領地内にいたので、捜査のための兵団が派遣され彼らが帰還するのを待っている状態であった。
裁判を開くのに必要な捜査の結果を待っている間、王太子は何度も警務省などにかけあってみたが、詳しい情報は何一つ得ることはできなかった。それは王都内の他の人間にとっても同じことであった。
そして一週間後、クーデン男爵領から帰還した兵団の報告を受けた警務省が三名を裁判にかけるべく起訴を行い、ついに王宮内にて裁判が開かれることとなった。
国王や王都の名だたる貴族が列席する中、ロベリア、エルフリード、サルビアが被告人として中央に立たされる。
本来なら陪審役の一人としているはずのノルドベルク公爵は、他の貴族たちとは少し離れた席に座らされ、王太子もまた本来なら国王の隣に席が設けられるはずが少し離れたところで警務隊士に両脇を固められた状態で着席させられることとなった。
ゲオルグ・シュドリッヒの直属の上司で警務省ナンバー2のホーファー伯爵が冒頭陳述を読み上げた。
彼らの容疑は準王族であったロゼライン・ノルドベルクの殺害容疑。
「準王族殺害容疑ですって! 何を言っているの? 私自身が王太子殿下の婚約者で準王族なのよ、お分かり!」
罪状を読み上げられサルビアが噛みつくように言った。
「確かに今はそうでしょう。しかし犯行が行われていた当時は違います。そして殿下の婚約者になったからと言って過去の罪が消えるわけではありません。なお、裁判長の許可を得ないうえでの発言はお控えください」
ホーファー伯爵が反論し注意を促した。
しばらく沈黙が続いたのち、陳述書を読み上げていた伯爵が告げた。
「それでは証人尋問にはいります。ミカ・キタヤマこれへ」
伯爵に呼ばれ黒髪の若い女性が入室した。
どうして!
あの女、なぜ死んでないの?
彼女の姿を見てサルビアは戦慄した。
「ミカ・キタヤマ。十月九日の夕刻あなたがサルビア・クーデン嬢にされたことをこの場にてお話しください」
ミカはその日の夕刻、サルビアの部屋に呼ばれたこと、レモネードをごちそうになったこと。そのあと具合が悪くなり魔法省に診てもらい毒物を魔法で排出してもらったことなどを話した。
なぜミカが毒を盛られたことを見破ったのか、サルビアには見当もつかなかった。
しかしそれが『反逆罪』とどう結びつくのかとサルビアはくってかかった。
三大公爵家の一つノルドベルク家の夫人ロベリア。
そして同じくノルドベルク家の嫡男エルフリード。
この三名の逮捕によって王宮内に激震が走った。
罪状は『反逆罪』。
王族及び準王族に危害を加えようとしたりその協力をしたと見なされた時に適応される。
王族とは現在即位している国王から見て直系の血族。
準王族とは国王の兄弟姉妹とその家族、および、王族と婚約関係にあり将来王族に加わる予定の者。
なお王族から臣籍降下している場合、本人のみが準王族となりその家族は含まれなくなる。
逮捕された三名は貴族ではあるが罪状が罪状なので、それぞれ王宮内の地下牢に収監された。
彼らの家族にも捜査の手がおよぶ。
まずノルドベルク公爵は被疑者ではないので王宮内の一室にとどめ置かれ、その間に王都内の公爵邸の家宅捜索が行われた。
サルビア嬢の実父クーデン男爵とその家族は王都にはおらず領地内にいたので、捜査のための兵団が派遣され彼らが帰還するのを待っている状態であった。
裁判を開くのに必要な捜査の結果を待っている間、王太子は何度も警務省などにかけあってみたが、詳しい情報は何一つ得ることはできなかった。それは王都内の他の人間にとっても同じことであった。
そして一週間後、クーデン男爵領から帰還した兵団の報告を受けた警務省が三名を裁判にかけるべく起訴を行い、ついに王宮内にて裁判が開かれることとなった。
国王や王都の名だたる貴族が列席する中、ロベリア、エルフリード、サルビアが被告人として中央に立たされる。
本来なら陪審役の一人としているはずのノルドベルク公爵は、他の貴族たちとは少し離れた席に座らされ、王太子もまた本来なら国王の隣に席が設けられるはずが少し離れたところで警務隊士に両脇を固められた状態で着席させられることとなった。
ゲオルグ・シュドリッヒの直属の上司で警務省ナンバー2のホーファー伯爵が冒頭陳述を読み上げた。
彼らの容疑は準王族であったロゼライン・ノルドベルクの殺害容疑。
「準王族殺害容疑ですって! 何を言っているの? 私自身が王太子殿下の婚約者で準王族なのよ、お分かり!」
罪状を読み上げられサルビアが噛みつくように言った。
「確かに今はそうでしょう。しかし犯行が行われていた当時は違います。そして殿下の婚約者になったからと言って過去の罪が消えるわけではありません。なお、裁判長の許可を得ないうえでの発言はお控えください」
ホーファー伯爵が反論し注意を促した。
しばらく沈黙が続いたのち、陳述書を読み上げていた伯爵が告げた。
「それでは証人尋問にはいります。ミカ・キタヤマこれへ」
伯爵に呼ばれ黒髪の若い女性が入室した。
どうして!
あの女、なぜ死んでないの?
彼女の姿を見てサルビアは戦慄した。
「ミカ・キタヤマ。十月九日の夕刻あなたがサルビア・クーデン嬢にされたことをこの場にてお話しください」
ミカはその日の夕刻、サルビアの部屋に呼ばれたこと、レモネードをごちそうになったこと。そのあと具合が悪くなり魔法省に診てもらい毒物を魔法で排出してもらったことなどを話した。
なぜミカが毒を盛られたことを見破ったのか、サルビアには見当もつかなかった。
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