上 下
98 / 99
第8章 エルフ族との邂逅

第96話 生徒会欠員補充に悩む

しおりを挟む
 入学時に役員候補として選ばれた七名のうち、ミリア、バルドリック、ザロモ、そしてエミール王子と計四名の生徒が学園を去った。辞退する人間は毎年何名かいるが、半数以上が学園からいなくなるなんて前代未聞だ。

 乙女ゲーム対策として自分もいろいろ動いてはいたが、この事態についてはなかなか厳しいものがある。

「男が一人もいなくなった……」

 サージェス副会長も居心地の悪さを少し感じているようだ。

 「そろそろ実技の実力もわかってくる頃だし、それで優秀な生徒をスカウトしてみるよ」

 生徒会のメンバーに私は言った。

「『スカウト』とは?」

「ああ、ごめん。うちの領地の方言みたいなもので『見出して登用する』って意味さ」

 私は笑ってごまかした。

 手始めに私はフェリシアに声をかけた。
 以前彼女は、本当はやってみたかった、と、言っていたからね。

 彼女は快く引き受けてくれた。彼女が生徒会に参加するようになってから、心なしかサージェスの顔が緩んできている。それは時々、友人のエリーゼが様子を見に顔を出すからだろう。

 ここまでは順調だった。
 しかし、それ以外の生徒となると難しかった。

 入学して数か月たつと、新入生もそれぞれ授業が終わった後の過ごし方が決まってくる。生徒会に声をかけられなかったがそれなりに優秀な者は、課外活動、前世で言うところのクラブ活動に参加している者も多く、今さら生徒会が声をかけても参加してもらうのは難しい状態だ。

 優秀、かつ、クラブなどには参加していない帰宅部で、コミュ力も適度にあり、できれば男子が望ましい。

 そんな人材いるか!

 いや、自分の言葉に自分でツッコんでどうする……。

 男子が欲しいと言ったのは理由がある。
 実は三年には会長、書記、会計と生徒会室に入り浸っている役職のほかに、学園内を巡回する役目の者もいるのだ。
 風紀委員や保険委員やそのほかもろもろを併せ持った役割の存在。今はリュート・マルベックが引き受けており、彼の下に同学年の副長とサージェス以外の二年の役員候補がついている。
 外部から雇い入れた衛兵隊と連携してもめごとの解決に当たることもあり、できれば、他の生徒たちににらみを利かせられるタイプがふさわしい。
 たとえば、バルドリックなど適役だったのだがな。

 女子でもできないことはないが、リーニャやシュザンナ、そしてペルティナは見た目そのものの可憐さから、なめられる恐れがあり不適格。フェリシアはさすが妃教育を受けていただけあって存在感はあるが、繊細な彼女に一般の生徒同士のもめごとにもかかわる役目は少々荷が重いのではないかと思われる。

 どうしたもんかな?

 先生たちにも声をかけ人材の紹介をお願いしているがなかなか良い返事がない。
 あきらめかけていたころ、ある先生から学期途中から編入してきたある生徒を紹介された。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

私の敬愛するお嬢様は、天使の様な悪女でございます。

芹澤©️
恋愛
私がお仕えしておりますアリアナ様は、王太子殿下の婚約者で優秀な御令嬢でございます。容姿端麗、勉学も学年で上位の成績。そして何より天真爛漫で、そこが時折困りますが、それもまた魅力的な方でございます。 けれど、二つ年上の王太子殿下はアリアナ様ではなく、一般家庭出の才女、ミレニス嬢と何やら噂になっていて…私の敬愛するお嬢様に何たる態度!けれども、アリアナ様はそんな王太子殿下の行動なんて御構い無しなのです。それは純真さがさせるのか、はたまた…? 私の中では王太子殿下の好感度はごっそり削られているのですが…私は何処までもお嬢様について参ります!!

毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。 第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。 アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。 そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。 自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。 処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。 そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

処理中です...