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第6章 相談所にて密談
第83話 王太子殿下とミリア【リーニャ視点】
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「やあ、サラ。せっかくの休みだし夜は外で一緒に食事をと思ってね」
サラ会長と一緒に私も部屋を出た。
受付前には見目麗しい貴公子が立っておられた。
「王太子殿下!」
サラ会長の声に私は驚く。
王太子殿下はエミール殿下と同じ髪や目の色をされてるが、弟君に比べると見た目や物腰はもう少し柔和な感じがする。
「サラ、いつも言っているだろう。二人の時は『ジーク』でいいって」
会長の後ろに隠れていた小柄な私が見えなかったのかな。
後ろにいた私の姿を確認すると、殿下は少しきまり悪そうに微笑まれた。
何はともあれ、お二人の親しさの度合いがわかるというもの、悪役令嬢の婚約関係は冷たいものとミリアは言うが、今の様子からはとてもそうには思えない。
「すいません、まだ少し仕事が残っていて……。そうだ、お手数ですがリーニャを寮まで送ってやっていただけないでしょうか? 話が長引いてつい遅くなってしまったので……」
サラ会長、何を言って……、私を王太子殿下に送らせる?
そんな恐れ多いことを!
日が落ちるのが早い晩秋の季節、フォーゲル先生にも言われてたが、薄暮の時間帯に私を一人で返すよりは、と、気を利かせたのだろうけど……。
「わかったよ、リーニャ君だっけ、行こうか。彼女を送って帰ってきたら、君はまだここにいるんだよね」
うわああっ!
王族の使う馬車ですよ!
こんな機会はおそらく一生に一度。
生きた心地がしないけど夢見心地な状態で、体はしっかり硬直しながら学生寮までの道のりを馬車でドライブさせていただいた。
寮の入り口の門に王宮の馬車が停まると、そりゃ、目立つのだろう。
玄関の方まで出てきて見に来た人もいたりして……。
その中でも、えっ、ミリア?
もしかして私が乗っているのがわかった?
どうして?
馬車を降りて私を玄関まで送ってくださる王太子殿下と私に走りよってきた。
「リーニャ、今日はどうしたの?」
いつもの調子で走り寄ろうとした途中で、私のそばにいるのがエミール王子ではないということに気づき少し戸惑った様子。
「じゃ、僕はここで」
王太子殿下は再び馬車に乗りサラ会長のところへ引き返していかれた。
「いまのは?」
ミリアが私に尋ねる。
「えっと、今日は会長に呼ばれて街に行っていて、帰りに王太子殿下に送っていただいたの……」
少し苦しい説明を私はする。
「王太子殿下、今のが……」
なぜ一人で出かけたのか?
なぜサラ会長に呼ばれたのか(嘘)?
そして、どういう経緯で王太子殿下に送っていただいたのか?
質問されそうな事がいろいろあって私も身構えたが、ミリアは少しぼうっとしているようだった。
彼女としゃべるのは本当に久方ぶり。
夕食後の自由時間にそれとなく、ミリアが言っていたゲームの内容と現実の違う点、サージェス副会長の件とかを例に出しながら、ゲームの通りに人が動いたりするわけがない、と、いうことを主張していき、ミリアは小さく、わかった、と、返事をした。
その日以降、私たちは前と同じようになった。
ミリアも理解してくれたのだろうと私は解釈していた。
そんなある日、教室の私の机の引き出しに一通の手紙。
『お話がありますので、放課後東の塔へ通じる階段上までご足労願えないでしょうか。必ず一人でお願いいたします。フェリシア・ブリステル』
サラ会長と一緒に私も部屋を出た。
受付前には見目麗しい貴公子が立っておられた。
「王太子殿下!」
サラ会長の声に私は驚く。
王太子殿下はエミール殿下と同じ髪や目の色をされてるが、弟君に比べると見た目や物腰はもう少し柔和な感じがする。
「サラ、いつも言っているだろう。二人の時は『ジーク』でいいって」
会長の後ろに隠れていた小柄な私が見えなかったのかな。
後ろにいた私の姿を確認すると、殿下は少しきまり悪そうに微笑まれた。
何はともあれ、お二人の親しさの度合いがわかるというもの、悪役令嬢の婚約関係は冷たいものとミリアは言うが、今の様子からはとてもそうには思えない。
「すいません、まだ少し仕事が残っていて……。そうだ、お手数ですがリーニャを寮まで送ってやっていただけないでしょうか? 話が長引いてつい遅くなってしまったので……」
サラ会長、何を言って……、私を王太子殿下に送らせる?
そんな恐れ多いことを!
日が落ちるのが早い晩秋の季節、フォーゲル先生にも言われてたが、薄暮の時間帯に私を一人で返すよりは、と、気を利かせたのだろうけど……。
「わかったよ、リーニャ君だっけ、行こうか。彼女を送って帰ってきたら、君はまだここにいるんだよね」
うわああっ!
王族の使う馬車ですよ!
こんな機会はおそらく一生に一度。
生きた心地がしないけど夢見心地な状態で、体はしっかり硬直しながら学生寮までの道のりを馬車でドライブさせていただいた。
寮の入り口の門に王宮の馬車が停まると、そりゃ、目立つのだろう。
玄関の方まで出てきて見に来た人もいたりして……。
その中でも、えっ、ミリア?
もしかして私が乗っているのがわかった?
どうして?
馬車を降りて私を玄関まで送ってくださる王太子殿下と私に走りよってきた。
「リーニャ、今日はどうしたの?」
いつもの調子で走り寄ろうとした途中で、私のそばにいるのがエミール王子ではないということに気づき少し戸惑った様子。
「じゃ、僕はここで」
王太子殿下は再び馬車に乗りサラ会長のところへ引き返していかれた。
「いまのは?」
ミリアが私に尋ねる。
「えっと、今日は会長に呼ばれて街に行っていて、帰りに王太子殿下に送っていただいたの……」
少し苦しい説明を私はする。
「王太子殿下、今のが……」
なぜ一人で出かけたのか?
なぜサラ会長に呼ばれたのか(嘘)?
そして、どういう経緯で王太子殿下に送っていただいたのか?
質問されそうな事がいろいろあって私も身構えたが、ミリアは少しぼうっとしているようだった。
彼女としゃべるのは本当に久方ぶり。
夕食後の自由時間にそれとなく、ミリアが言っていたゲームの内容と現実の違う点、サージェス副会長の件とかを例に出しながら、ゲームの通りに人が動いたりするわけがない、と、いうことを主張していき、ミリアは小さく、わかった、と、返事をした。
その日以降、私たちは前と同じようになった。
ミリアも理解してくれたのだろうと私は解釈していた。
そんなある日、教室の私の机の引き出しに一通の手紙。
『お話がありますので、放課後東の塔へ通じる階段上までご足労願えないでしょうか。必ず一人でお願いいたします。フェリシア・ブリステル』
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