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第6章 相談所にて密談

第81話 唯一の可能性

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 話が微妙になって来たので私は話をまとめて〆ることにする。

「先生は変わり者でね。将来は駐屯騎士団に併設するうちの研究施設に勤めて新種の生物や魔物を発見するのが夢なんだそうだ。鳥の名はどこかで霊感を受け、まだ発見されていない鳥の姿と名が浮かんだのかもしれませんね」

 前にも言ったがそういうことにしておこう。

「とりあえず、杖の件はリーニャがあえて犯人捜しを望まないのなら、しばらく様子見ということにしましょう。それでいい?」

 そして、杖の件に話を戻した。

 リーニャがうなづいたので先生の依頼の件は決着した。

 先生とリーニャは一緒に部屋を出て行こうとしたが、私はリーニャだけ、まだ生徒会の相談があるから、と、引き留めた。

「もしかしたら、君も気づいたかもしれないが、彼は多分日本で生きた前世を持っている」

 先生が去ったのを確認し私はリーニャに言った。

「やはりそうですか」

 リーニャは答える、気づいていたようだ。

「彼は私たちのように明確に記憶を持っているわけじゃないけど、たまにぽろっと日本で生きていたとしか思えないような知識を漏らすことがある。それで本人自身もよく混乱することがあるみたいだから、話を早く終わらせて返したんだけどね」

「なるほど」

「そういう人は多いみたいなんだ。彼のように鳥などの知識が染み出る分にはまだ可愛げがあるが……」

「……?」

 リーニャは神妙な顔で考え込んだ。

「私が言いたかったのは、前世で身につけた知識や感覚はけっこう根深いってこと。先生の場合、思い入れのある知識だったんだろうな。これが前世をきっちり覚えていて思い入れのある場合…」

「ミリアのことですか?」

 リーニャは答える、全く察しのいい子だ。

「ああ、いくら日本の前世があるとはいえ記憶のない先生に乙女ゲームのことは話せなかったが、君の杖を壊せる能力と機会のあった人間なら一人だけいる。それがミリア・プレディスさ」

 リーニャは大きな目をさらに見開いて私を見つめた。
 私は話を続ける。

「パート1の断罪イベントでは、これまでの悪行を追及された悪役令嬢が隠し持っていた新入生用の小さな杖で魔法を使い、場を混乱させた隙に逃げようとするんだ。その意図をヒロインの友人が察知して、あらかじめ魔力を込めると壊れるように細工するというエピソードがある」

「悪役令嬢がフェリシアで、ヒロインの友人がミリアですか?」

「たぶんね。やり方はゲームストーリーにも出ていたから彼女なら知っていただろう。しかも、彼女はすべての属性が同じ値という稀有な素質の持ち主だから能力的にも問題がない」

「でも、どうしてミリアが私の杖を?」

「しいてあげるなら、フェリシアを悪役令嬢に仕立て上げるためかな?」

 ショックを受けたような、理解できないというような何とも言えない表情をリーニャは浮かべた。
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