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第4章 変わってゆくシナリオ
第62話 砕けた杖【リーニャ視点】
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「リーニャ、大丈夫? 服の方は濡れていない?」
ミリアが私の傍に寄ってきた尋ねた。
「うん、服の方はほとんど濡れてないけど」
私は雨合羽を脱ぎながら答えた。
「髪の毛の方がずいぶん濡れてるね」
ミリアがタオルを手渡してくれる。
「そうね、転んだはずみでフードが脱げたから、あはは」
私はタオルで頭を拭きながら笑って言った。
フェリシアの方には仲のいいアリシアやエリーゼが寄ってきて、そのまま広場から離れていった。
その後、本日の授業が終わってから、私は職員室のフォーゲル先生を訪ねた。
「欠陥品というわけじゃなさそうだ。そもそも新入生用の杖は慎重に検品されたのち販売されているから、そう言ったモノが出るとはとても思えないんだよね」
先生は残骸となってしまった私の「杖」を手でもてあそびながら告げた。
「もう少し僕が預かっていてもいいかな? 一体どういう力が加わればこんな風に壊れるのかもっとよく調べてみたいと思うし、結果が出るまで時間がかかりそうなんだけど……」
「そうなると、私の杖は……、買いなおしですか?」
その杖を授業で使うのは半年間だけ。
その後の授業ではより性能の優れた別の杖が指定されている。
学園指定の杖は平民上がりの私たちでも買えない金額ではないが、あと半年もないのに二本目を買うとなるともったいないし、お財布的にも厳しい。
「僕のお古で良かったら使うかい?」
私のしょぼくれた顔を見て先生が言ってくださった。
「いいんですか⁈」
渡りに船とはまさにこのこと。
「ちょっと待ってね、この辺に入れ込んでいたかな?」
先生は引き出しの奥をごそごそと探った。あったあった、と、言って、出してこられた杖は、私たちの金色に光り先が丸く加工された杖と違って、鈍色に光り先が三角錘になっていた。
「……?」
先生に手渡され握ってみた感じではそれほど違和感はないのだけど。
「君たちの頃と形状が違うからね、それでもよければ性能的には違いはないよ」
私はありがたくそれを受け取り職員室を後にした。
教室に戻るとミリアが待ってくれていた。
「杖が壊れた原因はわからないんだって。それで先生に代わりの杖をいただいたの」
「そうなんだ、でもびっくりよね、いきなり杖が壊れるなんて、怪しいと思わない?」
「何が?」
「悪役令嬢よ。細部には多少違いはあるけど、ヒロインの物を壊したり、水をかけたり、ほぼストーリーといっしょじゃない」
「フェリシアのこと? いやでもね……」
私に水砲が飛んできたとき、フェリシアも非常に慌てていた。彼女が犯人なら杖が壊れるのはわかっていたから、あそこまで慌てることはないはず。
「憶測だけで言っちゃだめだよ、この前生徒会でも言われたでしょ」
私はミリアにくぎを刺すことにする。
「まあね、でも言っているのは私だけじゃないからね」
意味ありげな笑みを浮かべミリアは言うのだった。
ミリアが私の傍に寄ってきた尋ねた。
「うん、服の方はほとんど濡れてないけど」
私は雨合羽を脱ぎながら答えた。
「髪の毛の方がずいぶん濡れてるね」
ミリアがタオルを手渡してくれる。
「そうね、転んだはずみでフードが脱げたから、あはは」
私はタオルで頭を拭きながら笑って言った。
フェリシアの方には仲のいいアリシアやエリーゼが寄ってきて、そのまま広場から離れていった。
その後、本日の授業が終わってから、私は職員室のフォーゲル先生を訪ねた。
「欠陥品というわけじゃなさそうだ。そもそも新入生用の杖は慎重に検品されたのち販売されているから、そう言ったモノが出るとはとても思えないんだよね」
先生は残骸となってしまった私の「杖」を手でもてあそびながら告げた。
「もう少し僕が預かっていてもいいかな? 一体どういう力が加わればこんな風に壊れるのかもっとよく調べてみたいと思うし、結果が出るまで時間がかかりそうなんだけど……」
「そうなると、私の杖は……、買いなおしですか?」
その杖を授業で使うのは半年間だけ。
その後の授業ではより性能の優れた別の杖が指定されている。
学園指定の杖は平民上がりの私たちでも買えない金額ではないが、あと半年もないのに二本目を買うとなるともったいないし、お財布的にも厳しい。
「僕のお古で良かったら使うかい?」
私のしょぼくれた顔を見て先生が言ってくださった。
「いいんですか⁈」
渡りに船とはまさにこのこと。
「ちょっと待ってね、この辺に入れ込んでいたかな?」
先生は引き出しの奥をごそごそと探った。あったあった、と、言って、出してこられた杖は、私たちの金色に光り先が丸く加工された杖と違って、鈍色に光り先が三角錘になっていた。
「……?」
先生に手渡され握ってみた感じではそれほど違和感はないのだけど。
「君たちの頃と形状が違うからね、それでもよければ性能的には違いはないよ」
私はありがたくそれを受け取り職員室を後にした。
教室に戻るとミリアが待ってくれていた。
「杖が壊れた原因はわからないんだって。それで先生に代わりの杖をいただいたの」
「そうなんだ、でもびっくりよね、いきなり杖が壊れるなんて、怪しいと思わない?」
「何が?」
「悪役令嬢よ。細部には多少違いはあるけど、ヒロインの物を壊したり、水をかけたり、ほぼストーリーといっしょじゃない」
「フェリシアのこと? いやでもね……」
私に水砲が飛んできたとき、フェリシアも非常に慌てていた。彼女が犯人なら杖が壊れるのはわかっていたから、あそこまで慌てることはないはず。
「憶測だけで言っちゃだめだよ、この前生徒会でも言われたでしょ」
私はミリアにくぎを刺すことにする。
「まあね、でも言っているのは私だけじゃないからね」
意味ありげな笑みを浮かべミリアは言うのだった。
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