悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない

玄未マオ

文字の大きさ
上 下
60 / 139
第4章 変わってゆくシナリオ

第58話 警告

しおりを挟む
 ここまでの一年生たちの表情と発言を見るに、ペルティナは私の発言を受けフェリシアの立場を理解している側。
 ミリア・ザロモ・バルドリックはエミールに同調し、フェリシアに対して悪い印象を持っている側。
 リーニャとシュザンナはちょっとわからない。

「よくよく聞いたらほんと最低! 男のクズじゃないの、エミール殿下って!」

 ペルティナがさらに続ける。その点に関しては私も同意なんだが……。

「ああ、ゴメンゴメン。いない人の悪口は言わない方がいいんだったわね」

 そして、副会長の発言を逆手にとってとぼけた物言い。
 ペルティナ、無双すぎるぞ。

「エミール殿下に同調していたメンツはわかっている。今回はそれについてこれ以上は言わんが、今後彼女を貶めるようなうわさが学園で流れれば真っ先にその連中を疑わせてもらう。肝に銘じておけ!」

 発言を引き合いに出された副会長サージェスが厳しく警告する。

「『恩知らず』が生徒会にいらないと同時に、他人の事情をおもんばかることなく、浅はかな判断で悪口を吹聴するような人間もまたこの生徒会にはいらん」

 続けて私は生徒会の方針を彼らに告げる。
 不満を隠せない表情の者もいるし、一年生の間で亀裂ができかかっていることも気にかかる。

「本来ならブリステル公爵家が出ばって名誉棄損を訴えることも可能だったんだ。でも、学園内で起こったことだから私たちが注意するだけで公爵閣下は寛大にも納得してくださった、そのことを忘れるな!」
 
 サージェスよりさらにきつい脅しを私は一年生にかけた。

 彼らには学生同士のノリで相手に非情なことをすれば大きなしっぺ返しが来ることを、前もって知らせておく方が親切だと思った。

 もっとも、ストーリーに『強制力』のようなものがあったとしたら、こんな脅しもただの『権力をかさに着た汚い脅し』にしかならないかもしれない。

 今日の活動はいつもより少し早いが以上で終わりにしたので、みんな帰り支度を始めた。

「ザロモ、行くわよ」

 ペルティナが弟のザロモに声をかける。

「僕はバルドリックとちょっと寄り道するから先に帰って」

 ザロモは答える。
 姉のペルティナに言われたきつい一言のせいでまだ機嫌がなおっていない表情だ。

 ペルティナは気にすることなくさっさと生徒会室を出て行く。
 私も今日の生徒会のことをジークに報告したいので、後のことはサージェスらにまかせて、部屋を出て行った。

 後日、気になる話をアデリーたちから聞いた。

「平民の間では高位の貴族を『悪役』っていうのかしらね?」

 アデリーが疑問を口にする。

「どういうこと?」

「サラ会長が帰った後、ミリアが友達のリーニャに『やっぱり悪役令嬢は悪役令嬢をかばうのね』って言ったの。ペルティナがサラ会長の意見に同調したことをさしているんだろうけど、彼女たちにとって高位貴族は『悪役』になるのかなあ……」

 あたりまえのようにリーニャに『悪役令嬢』と言う語を使って話しかけるとは、ミリアも転生者?
 しかも、リーニャ以上にフェリシアに敵意を向けるということは、やはり彼女は親友リーニャに協力し、パート2でヒロインになる役で間違えなさそうだな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。 そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。 死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

処理中です...