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第3章 いよいよゲーム開始編
第35話 乙女ゲームへの心の準備?【リーニャ視点】
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平民たちの髪は黒でも茶でも金でも、元いた「地球」の人間たちと同じような色合いだが、魔力持ちというのはエルフの血の影響なのか、ちょっと変わった髪や目の色をしている者が多い。
例えば、私の父は黄色みがかった鮮やかな赤、つまりオレンジ。
ミリアの金髪も山吹色と言っていいほどで、ゆるくウェーブがかかっているけど、逆にそれがボリュームを作り波打つ見事な金のロングヘアとなっている。
「ピンクのフワフワ髪はヒロインの証だよ」
ミリアはそう言って私をフォローしてくれる。
でも、いったい何のヒロイン?
「学園に入学した時がゲームの始まりなのよ。気合い入れなきゃ」
「ゲーム?」
「そう、貴方をヒロインとした乙女ゲーム『虹色コンチェルト』。王子をはじめとする攻略対象が何名かいて、好感度を上げていくんだからね」
「あの、あたし、乙女ゲームってやったことないんだけど……」
「そうなの、じゃあ、私がいろいろ教えてあげるから。私の役は主人公の友人で、攻略対象とヒロインをさりげなく二人きりにしたり、断罪イベントでいじめられていた事実を証言したりするの」
「……?」
乙女ゲームを題材にした小説や漫画なら読んだことある。
でもそれは、いわゆる『悪役令嬢』が主人公じゃなかったかな?
フラグを叩き折ったりしながら、バッドエンドを回避するのよね。
ヒロインポジの子が悪役令嬢と仲良くなる場合もあるけど、ざまあされる場合もあり、それは物語によってそれぞれ違う。
「一押しはエミール第二王子ね。大本命の攻略対象よ」
ミリアは言う。
「王子!」
私もつい大声を出してしまった。
新入生の中に第二王子のエミール殿下がいらっしゃることは私も知っているけど、「攻略対象」と言われても……。
高嶺の花、と、言うのは男性にも使ってよろしいのかな?
学園では魔法の使い方を学ぶと同時に、未来の伴侶、すなわち結婚相手も見つけるのを目的に通う者も多くいる。
兄のミランなど、頑張ってひっかけてこい、などと、十代の少女に何を言ってくれちゃってるのか。確かにこの国は結婚年齢が近代日本よりは早くて、十五ともなればしっかり婚活しなきゃいけない年代なのかもしれないが……。
そんな風に雑談を続けていると、ミリアのお母さんがミリアを呼び戻しに来る。
ミリアは顔を曇らせて立ち上がる。
「準備が済んだなら、うちの手伝いでもすればいいのに、こんなところで油を売って! この子じゃなく兄のファヴォリットの方が魔力持ちだったらすべてうまくいったって言うのにさ、兄の恩恵を奪い取って、まったく疫病神だよ!」
相変わらずの悪口雑言。
よそのお宅のことだけど、ミリアのお母さんのミリアへの当たり方はきつすぎと思う。手伝いというけど、兄の方には家事を手伝わせたことがないらしい。兄と私、手の空いた方に頼むうちとは大違い。
兄の恩恵というけど、兄は魔力持ちでないだけで他に不遇な要素は見当たらない。
じゃあね、と、言ってミリアは家に戻っていった。
少し苦い感覚が広がったが、すぐに忘れて明日からのミリアとの学園生活に期待を膨らませた。
例えば、私の父は黄色みがかった鮮やかな赤、つまりオレンジ。
ミリアの金髪も山吹色と言っていいほどで、ゆるくウェーブがかかっているけど、逆にそれがボリュームを作り波打つ見事な金のロングヘアとなっている。
「ピンクのフワフワ髪はヒロインの証だよ」
ミリアはそう言って私をフォローしてくれる。
でも、いったい何のヒロイン?
「学園に入学した時がゲームの始まりなのよ。気合い入れなきゃ」
「ゲーム?」
「そう、貴方をヒロインとした乙女ゲーム『虹色コンチェルト』。王子をはじめとする攻略対象が何名かいて、好感度を上げていくんだからね」
「あの、あたし、乙女ゲームってやったことないんだけど……」
「そうなの、じゃあ、私がいろいろ教えてあげるから。私の役は主人公の友人で、攻略対象とヒロインをさりげなく二人きりにしたり、断罪イベントでいじめられていた事実を証言したりするの」
「……?」
乙女ゲームを題材にした小説や漫画なら読んだことある。
でもそれは、いわゆる『悪役令嬢』が主人公じゃなかったかな?
フラグを叩き折ったりしながら、バッドエンドを回避するのよね。
ヒロインポジの子が悪役令嬢と仲良くなる場合もあるけど、ざまあされる場合もあり、それは物語によってそれぞれ違う。
「一押しはエミール第二王子ね。大本命の攻略対象よ」
ミリアは言う。
「王子!」
私もつい大声を出してしまった。
新入生の中に第二王子のエミール殿下がいらっしゃることは私も知っているけど、「攻略対象」と言われても……。
高嶺の花、と、言うのは男性にも使ってよろしいのかな?
学園では魔法の使い方を学ぶと同時に、未来の伴侶、すなわち結婚相手も見つけるのを目的に通う者も多くいる。
兄のミランなど、頑張ってひっかけてこい、などと、十代の少女に何を言ってくれちゃってるのか。確かにこの国は結婚年齢が近代日本よりは早くて、十五ともなればしっかり婚活しなきゃいけない年代なのかもしれないが……。
そんな風に雑談を続けていると、ミリアのお母さんがミリアを呼び戻しに来る。
ミリアは顔を曇らせて立ち上がる。
「準備が済んだなら、うちの手伝いでもすればいいのに、こんなところで油を売って! この子じゃなく兄のファヴォリットの方が魔力持ちだったらすべてうまくいったって言うのにさ、兄の恩恵を奪い取って、まったく疫病神だよ!」
相変わらずの悪口雑言。
よそのお宅のことだけど、ミリアのお母さんのミリアへの当たり方はきつすぎと思う。手伝いというけど、兄の方には家事を手伝わせたことがないらしい。兄と私、手の空いた方に頼むうちとは大違い。
兄の恩恵というけど、兄は魔力持ちでないだけで他に不遇な要素は見当たらない。
じゃあね、と、言ってミリアは家に戻っていった。
少し苦い感覚が広がったが、すぐに忘れて明日からのミリアとの学園生活に期待を膨らませた。
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