上 下
26 / 99
第2章 乙女ゲーム開始準備

第25話 翡翠色の学園教師

しおりを挟む
 ジークの入学後、長兄オーティスの学園時代の友人が訪ねてきて、彼らが話している応接室に顔を出すように、と、侍女が伝えてきた。

 アルト・フォーゲル。
 翡翠色ひすいいろの髪をした青年である。

「妹のサラだ。来年学園に入学するんだ」

 兄は私を友人に紹介した。

「初めまして、サラ殿。学園で教師をしておりますフォーゲルと申します」

 友人は胸に手を当て恭しくお辞儀をした。

「お前もいずれヤツの教え子になるから、一応、紹介しておこうと思ってな」

 兄は言った。

「今は新入生の火と水の授業。それから魔物の授業の補助をしています」

「まあ、じゃあ、ジークも教えてもらっているのかしら?」

「「ジーク?」」

「あ、いえ、あの……、ジグムント王太子殿下です」

 私は慌てて言いなおした。

「ああ、そういえば王太子殿下も入学しておられると聞きました」

「いまいましいことに妹の婚約者なんだ」

「なんだい、兄としての嫉妬全開な言い方は?」
 
「嫉妬じゃねえよ」

 兄とフォーゲル氏はじゃれ合うように言い合った。

「あはは、余計なこと言っちゃいましたか。フォーゲルさんは学園の教師になる前は一体どこで?」

 私は話を切り替えた。

「王都の東部にある初等学校の教員をしていました。僕は伯爵家の五男だから、研究職に付きたくてもすぐに王宮直属のところにつとめられるわけじゃないからね」

 そうか、よほどの成績優秀者か、高位貴族の子弟でなければ、卒業してすぐに王宮が関係する部署に務めることはできないからね。

 教職というのは通常、第二子以下の家を継ぐことのできない貴族や魔力持ちの平民などが、魔力で国に貢献して新たに爵位を得るためにまずつく仕事。

 最初は各地の初等教育の教職に当たり、経験を積めば学園の教師。
 さらにその後は研究職に就いたり、文官になったり。
 つまり、学園の教師というのは各々のキャリアを積むための通過点のような仕事なのだ。

「僕は魔物の研究者になるのが夢なんだけどね。できれば、森の中央駐屯地の研究所で働いてみたいなあ、と」

 次兄ライナートがぶつぶつ言っていた場所に行きたがる人もいるんだ。
 でも、そこで働いてみたいなら、運営元の我らがヴァイスハーフェン家との縁はつないでいた方が有利だよね。

「こいつ昔から変わっていたからな。夢想癖があるというか。髪の毛が翡翠色なのを女子にほめられたら、どや顔で『ヒスイはカワセミの色なんだよ』って言いだすんだぜ。性懲りもなく何度も。カワセミってなんだよ? そんな魔物いたっけ?」

 兄の発言に私は息をのんだ。

 カワセミ、鮮やかなコバルトブルーの羽をもつ水辺に生息する鳥。
 空飛ぶ宝石ともいわれる美しい鳥として前世の日本では知られていた。

 この人はそれを知っている?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

私の敬愛するお嬢様は、天使の様な悪女でございます。

芹澤©️
恋愛
私がお仕えしておりますアリアナ様は、王太子殿下の婚約者で優秀な御令嬢でございます。容姿端麗、勉学も学年で上位の成績。そして何より天真爛漫で、そこが時折困りますが、それもまた魅力的な方でございます。 けれど、二つ年上の王太子殿下はアリアナ様ではなく、一般家庭出の才女、ミレニス嬢と何やら噂になっていて…私の敬愛するお嬢様に何たる態度!けれども、アリアナ様はそんな王太子殿下の行動なんて御構い無しなのです。それは純真さがさせるのか、はたまた…? 私の中では王太子殿下の好感度はごっそり削られているのですが…私は何処までもお嬢様について参ります!!

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

愛徳らぴ
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。 第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。 アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。 そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。 自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。 処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。 そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...