悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない

玄未マオ

文字の大きさ
上 下
17 / 139
第1章 悪役令嬢の婚約

第17話 父の毒舌全開

しおりを挟む
「残念なことに、フェリシア嬢は『赤のブリステル』の性質を全く受け継いでいないようで、その辺もサラ嬢とは大違いですな」

 フェリシアへの陰口は続き、わざわざそれを父に言いに来る貴族もいた。

 彼女と比較して私を持ち上げれば父の気分が良くなると思ったようだ。

 でも、当の本人としてはそんなほめられ方をされてもうれしくはないのだよ。

 嫌味な貴族が言う『赤のブリステル』と言うのは、五大英雄の髪色に基づく国民のイメージである。

 ヴァイスハーフェンは青。

 だから私の髪はぴったりだと言いたいのだろうが……。

「はっはっはっ、貴殿はあまり歴史に詳しくないと見受けられますなぁ!」

 うわっ!

 父がこの笑い方をしたってことは、歯に衣着せぬ毒舌がさく裂する前触れ!

「五大英雄の話ほど有名ではないが、その英雄の嫡男が森の外から来た銀髪の美女を妻に迎えたことはご存じですかな?」

「え、そうなのですか……」

 おべっか使いの貴族が父の意外な反応にうろたえている。

 父、かまわずしゃべり続ける。

「ええ、その美女は治癒能力に優れた『聖女』と呼んでも差し支えのない存在で、メレディスの英雄とともに、治癒魔法の仕組みを解析し今の体系を構築したのです。フェリシア嬢の銀髪はその美女ゆずりなのでしょうね」

 いわゆる先祖返りってやつ、フェリシアの髪色って。

「髪色が英雄のそれと違うからって他の家の者バカにされるとは、私なら絶対耐えられないですな」

 おべっか使いの貴族、及び、それに同調するその1、その2、エトセトラ。
 皆乾いた笑いを浮かべる。

「わが嫡男は妻ゆずりの橙色の髪なのですけどねぇ」

 父、とどめのイヤミ炸裂。

 そうなのよね。

 長兄のオーティスの髪は、私や次兄のライナートとちがってオレンジっぽい色で、本人はそれを悩んでいた時期もあったらしい。

 青髪を譲り受けているライナートの方が跡継ぎにふさわしいのではないか?
 そう父に余計なことを言いに来る貴族もいたらしいから、こういう話題はうちの家族にとっては、実は地雷だったのだ。

「それにしても十一歳の少女の体調不良をおもんばからず陰口、その家の『民度』がわかるというものですわね、ほほほ」

 母、扇で口元を隠しながらイヤミ。

 とどめを刺したのは母の方だったかも。

 なんにせよ、グッジョブ、お父様、お母様!


【作者メモ】
 『婚約破棄された公爵令嬢ですが、魔女によって王太子の浮気相手と赤ん坊のころ取り換えられていたそうです』
 https://www.alphapolis.co.jp/novel/886367481/638794694

 ヒロインの父が言っていた『森の外から来た銀髪の美女』は、こちらのお話のヒロインです(完結済))。

 一緒に読んでいただければ嬉しいです。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?

狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?! 悪役令嬢だったらどうしよう〜!! ……あっ、ただのモブですか。 いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。 じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら 乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...