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第1章 悪役令嬢の婚約
第14話 兄たちの惨敗と父のお説教
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三歳以上年長の男子二名と対峙するという不公平な形の勝負となったジーク王太子を心配したが、それは杞憂に終わった。
いや、本当に瞬殺だった。
トロイアがなぜ止めないのか、と、疑問に思ったが、その光景を見て『当然』という顔をしていた。
私が彼の顔を見ると説明してくれた。
「身のこなしでだいたいの実力がわかりますからね。まあ、これなら二人かかりでこられても、殿下の方が勝つかなと」
彼は王太子の一番そば近くに使える剣の達人。
体格や普段の動作で相手の実力をはかるなんて朝飯前のようだ。
「さきほども言われていたけど、殿下もサラ殿にいいところを見せたかったのでしょう」
「でも、私は心配しましたわ!」
「そうでしたか。では、そのことも殿下におっしゃっていただけるとお喜びになると思います」
えぇっと、そうでしょうか?
心配っていうのは、怪我でもされたらうちがおとがめ受けるのではないか、と、言うたぐいの心配だったのですけどね。
私の『心配』とやらを喜ぶって、やっぱり私と違って年相応の素直さがあるってことかしら。
殿下らが帰ったあと、兄二人は父からがっつりお説教を食らった。
二人の言い分はこうだ。
王太子の剣技の高評価はどうせ周囲の人間がおべっかを使ってわざと負けてやっているのだろう、だから、それが通じないヴァイスハーフェン家でその鼻をへし折ってやる。
そう思っていたらしい。
まあね、若干十一歳の少年が十代後半から二十代前半の騎士複数人と勝負して勝てるなんて、信じられないのも無理はない。
そこはさすがは攻略対象!
兄たちも私を心配してくれたからだろうけど、やることがまるでモブの悪役。
ああ、そうか。
悪役令嬢とその一族だもんな。
「殿下の実力がお前たちを上回っていたので事なきを得たが、もし二人がかりで怪我をさせてしまったとしたら大変なことになっていたぞ!」
うんうん、そこなのよ。
父は私と同じことを心配してらっしゃった。
精神年齢的にはやはり私は、実年齢に前世の年齢がプラスされるので、考えが父や母に近いのかしら。
私に良いカッコしたかったらしい王太子も、その王太子をぎゃふんと言わせたかった兄たちも、私から見れば少々子供っぽいもの。
「心配はありがたいのですが、殿下とのことは黙って見守っていただける方がありがたいかと……」
父にも言ったことを私はまた言った。
良かれと思ってやったことで惨敗の挙句お説教。
それが堪えたのか、こちらの希望通り、兄たちはあまりジークとのことに口出しはしてこなくなった。
それからは、王宮での妃教育とふた月に一度のジークの訪問は特に大きな問題も起きず月日は過ぎ去っていく。
そして二年の月日が経ったある秋の日のこと、ジークが私に『ここだけの話』と、あることを教えてくれた。
「弟のエミールの婚約が決まりそうなんだ。お相手はブリステル家のフェリシア嬢だよ」
いや、本当に瞬殺だった。
トロイアがなぜ止めないのか、と、疑問に思ったが、その光景を見て『当然』という顔をしていた。
私が彼の顔を見ると説明してくれた。
「身のこなしでだいたいの実力がわかりますからね。まあ、これなら二人かかりでこられても、殿下の方が勝つかなと」
彼は王太子の一番そば近くに使える剣の達人。
体格や普段の動作で相手の実力をはかるなんて朝飯前のようだ。
「さきほども言われていたけど、殿下もサラ殿にいいところを見せたかったのでしょう」
「でも、私は心配しましたわ!」
「そうでしたか。では、そのことも殿下におっしゃっていただけるとお喜びになると思います」
えぇっと、そうでしょうか?
心配っていうのは、怪我でもされたらうちがおとがめ受けるのではないか、と、言うたぐいの心配だったのですけどね。
私の『心配』とやらを喜ぶって、やっぱり私と違って年相応の素直さがあるってことかしら。
殿下らが帰ったあと、兄二人は父からがっつりお説教を食らった。
二人の言い分はこうだ。
王太子の剣技の高評価はどうせ周囲の人間がおべっかを使ってわざと負けてやっているのだろう、だから、それが通じないヴァイスハーフェン家でその鼻をへし折ってやる。
そう思っていたらしい。
まあね、若干十一歳の少年が十代後半から二十代前半の騎士複数人と勝負して勝てるなんて、信じられないのも無理はない。
そこはさすがは攻略対象!
兄たちも私を心配してくれたからだろうけど、やることがまるでモブの悪役。
ああ、そうか。
悪役令嬢とその一族だもんな。
「殿下の実力がお前たちを上回っていたので事なきを得たが、もし二人がかりで怪我をさせてしまったとしたら大変なことになっていたぞ!」
うんうん、そこなのよ。
父は私と同じことを心配してらっしゃった。
精神年齢的にはやはり私は、実年齢に前世の年齢がプラスされるので、考えが父や母に近いのかしら。
私に良いカッコしたかったらしい王太子も、その王太子をぎゃふんと言わせたかった兄たちも、私から見れば少々子供っぽいもの。
「心配はありがたいのですが、殿下とのことは黙って見守っていただける方がありがたいかと……」
父にも言ったことを私はまた言った。
良かれと思ってやったことで惨敗の挙句お説教。
それが堪えたのか、こちらの希望通り、兄たちはあまりジークとのことに口出しはしてこなくなった。
それからは、王宮での妃教育とふた月に一度のジークの訪問は特に大きな問題も起きず月日は過ぎ去っていく。
そして二年の月日が経ったある秋の日のこと、ジークが私に『ここだけの話』と、あることを教えてくれた。
「弟のエミールの婚約が決まりそうなんだ。お相手はブリステル家のフェリシア嬢だよ」
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