12 / 99
第1章 悪役令嬢の婚約
第12話 対策は『男同士の友情』?
しおりを挟む
「お父様、このことはお兄様たちには?」
「二人にはそれぞれ十三歳になったときに話したさ。ヴァイスハーフェン家は歴史的にこういった王家の横暴には、陰になり日向になり何らかの抵抗を示してきたからね。ヴェルダートルの件はあまりにも王家の処置が早く何もできなかったが……」
「だから、お兄様たちは……」
私と婚約をした王太子を敵視していた理由はそれか!
ようやく合点がいった。
「私はお兄様たちにも迷惑をかけてしまうかもしれないですね……」
私を心配して王太子に厳しい目を向けていた兄たちの心が染みると同時に、申し訳ない気持ちも生まれてくる。
「そんなこと、サラは思わなくていいんだ。私たちはヴェルダートルとは違い王家に対抗しうる力を得ることが可能だ、みすみす滅ぼされるようなことはない!」
「お父さま、そんな不穏なこと、誰かに聞かれたら……」
私は周囲を見回した。
いくら家の中と言ってもスパイが紛れ込んでいるかもしれないでしょ。
「そうだね、ここだけの話だ。私が言いたかったのは、私たち家族はいつでもサラの味方だってことだよ」
父は私の頭に手を置きささやく。
実際、父であるヴァイスハーフェン公爵は魔法省と財務省の大臣を兼任している。
家が代々管理してきた国の重要機関もいくつもある。
そんじょそこらの兵力で滅ぼすのは無理だろう。
そのせいか、物語の中のサラは高慢で冷血。
ヴァイスハーフェンがかかわっているところは魔法関連が多いせいか、家はまるでマッドサイエンティストの集団のような描かれ方だった。
「家族の支えは心強いですわ。でも、基本的に殿下とのことは見守っていただきたいかなと……」
私は父に懇願した。
「わかった。王太子との関係が今後どうなるかわからないけど、問題が起きたらすぐに言うんだよ」
父は私の頭の上にのせている手で髪をくしゃくしゃと撫でながら優しく言った。
私の現実の中の王国にて起こりうるであろう乙女ゲームの展開。
その裏にはこんな深い歴史的な事情もあったとはね。
破滅を回避するためにできることは二つ。
起こらないようにすることと起こってしまった時の被害を最小限にとどめること。
起こらないようにするためには、すでに非道なことをしでかした国王夫妻はともかく、婚約者の王太子殿下とはできれば良好な関係を保っておいた方がいい。
恋愛に関しては相手の好みもあるしどうしようもない。
でも、別の女性に心を移しても、友人として良好な関係を保っていればそこまで非情なことはされないかもしれない。
幸いなことに、ジークは今の段階では婚約者である私にも好意的に接してくれている。まだ恋愛云々を意識する年頃ではない、と、いうことからかもしれないが、その関係を維持していけるように努力しよう。
「目標は『男同士の友情』ね。いや、私は男じゃないけどそれに近い感じで。恋愛関係になるのは難しくても、同性同士の友情に近い親密な関係を作っていくってこと。うん、とりあえず、それで行こう!」
自室のベッドの上で私は独りごちた。
「二人にはそれぞれ十三歳になったときに話したさ。ヴァイスハーフェン家は歴史的にこういった王家の横暴には、陰になり日向になり何らかの抵抗を示してきたからね。ヴェルダートルの件はあまりにも王家の処置が早く何もできなかったが……」
「だから、お兄様たちは……」
私と婚約をした王太子を敵視していた理由はそれか!
ようやく合点がいった。
「私はお兄様たちにも迷惑をかけてしまうかもしれないですね……」
私を心配して王太子に厳しい目を向けていた兄たちの心が染みると同時に、申し訳ない気持ちも生まれてくる。
「そんなこと、サラは思わなくていいんだ。私たちはヴェルダートルとは違い王家に対抗しうる力を得ることが可能だ、みすみす滅ぼされるようなことはない!」
「お父さま、そんな不穏なこと、誰かに聞かれたら……」
私は周囲を見回した。
いくら家の中と言ってもスパイが紛れ込んでいるかもしれないでしょ。
「そうだね、ここだけの話だ。私が言いたかったのは、私たち家族はいつでもサラの味方だってことだよ」
父は私の頭に手を置きささやく。
実際、父であるヴァイスハーフェン公爵は魔法省と財務省の大臣を兼任している。
家が代々管理してきた国の重要機関もいくつもある。
そんじょそこらの兵力で滅ぼすのは無理だろう。
そのせいか、物語の中のサラは高慢で冷血。
ヴァイスハーフェンがかかわっているところは魔法関連が多いせいか、家はまるでマッドサイエンティストの集団のような描かれ方だった。
「家族の支えは心強いですわ。でも、基本的に殿下とのことは見守っていただきたいかなと……」
私は父に懇願した。
「わかった。王太子との関係が今後どうなるかわからないけど、問題が起きたらすぐに言うんだよ」
父は私の頭の上にのせている手で髪をくしゃくしゃと撫でながら優しく言った。
私の現実の中の王国にて起こりうるであろう乙女ゲームの展開。
その裏にはこんな深い歴史的な事情もあったとはね。
破滅を回避するためにできることは二つ。
起こらないようにすることと起こってしまった時の被害を最小限にとどめること。
起こらないようにするためには、すでに非道なことをしでかした国王夫妻はともかく、婚約者の王太子殿下とはできれば良好な関係を保っておいた方がいい。
恋愛に関しては相手の好みもあるしどうしようもない。
でも、別の女性に心を移しても、友人として良好な関係を保っていればそこまで非情なことはされないかもしれない。
幸いなことに、ジークは今の段階では婚約者である私にも好意的に接してくれている。まだ恋愛云々を意識する年頃ではない、と、いうことからかもしれないが、その関係を維持していけるように努力しよう。
「目標は『男同士の友情』ね。いや、私は男じゃないけどそれに近い感じで。恋愛関係になるのは難しくても、同性同士の友情に近い親密な関係を作っていくってこと。うん、とりあえず、それで行こう!」
自室のベッドの上で私は独りごちた。
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
私の敬愛するお嬢様は、天使の様な悪女でございます。
芹澤©️
恋愛
私がお仕えしておりますアリアナ様は、王太子殿下の婚約者で優秀な御令嬢でございます。容姿端麗、勉学も学年で上位の成績。そして何より天真爛漫で、そこが時折困りますが、それもまた魅力的な方でございます。
けれど、二つ年上の王太子殿下はアリアナ様ではなく、一般家庭出の才女、ミレニス嬢と何やら噂になっていて…私の敬愛するお嬢様に何たる態度!けれども、アリアナ様はそんな王太子殿下の行動なんて御構い無しなのです。それは純真さがさせるのか、はたまた…?
私の中では王太子殿下の好感度はごっそり削られているのですが…私は何処までもお嬢様について参ります!!
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます
愛徳らぴ
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。
第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。
アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。
そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。
自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。
処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。
そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる