上 下
10 / 45
第1章 悪役令嬢の婚約編

第10話 ヴァイスハーフェンの功績

しおりを挟む
 森の三つの駐屯地と王宮はポータルで繋がり瞬時に移動できる仕組みがある。

 そして三つの中で一番大きな中央駐屯地には、他の二つよりより高度な治療が施せる医療施設と、魔物退治に有効な魔法装備を開発するための研究施設が併設されている。

 その二つともヴァイスハーフェン家が管理運営を請け負っている。

 そもそも、それらの施設を作るのを進言したのはうちのご先祖様である。

 フリーダ女王様、やるべきことが多すぎて、各公爵が得意分野を活かしてできることについてはけっこう丸投げだったみたいね。

 魔法研究が好きだったヴァイスハーフェン家のご先祖様は、その後、王宮の魔法省の大臣の地位も得て、魔法を国民生活を良くするために利用するあらゆる部署を設置し、親族はその要となっていった。

 他の公爵家でもそうだが、それぞれの得意分野で国の運営に深くかかわっていく。

 それは王家にとって心強いと同時に脅威でもあった。

 エルフの血はこの国を統べる存在にとって、王位の正当性を保証するようになったが、それならば他の貴族とて同じ。

 特に五大公爵家はすでにその優れた資質を国民に示している。

 だからこそ、歴代の跡継ぎは年回りの近い公爵家の子を伴侶として迎えていた。

 だが、何世代かに一人ぐらいはそういう伝統に反発する者が出てくるようだ。

 父は語った。

「ルルージュやメレディスが滅んだのは、その家との婚約が気に入らない王家の世継ぎが言いがかりをつけたせいとも言われている」

 ちょっと、何ですか、その乙女ゲームのような展開は?

 私の前世の記憶では、ブリステルがパート1、ヴァイスハーフェンがパート2で滅ぼされているが、それ以前も似たようなことがあったとは!

 物語やゲームでは、話の佳境に入ると過去にさかのぼったエピソードを紹介する場合がある。だから、パート3以降でそれらがあった可能性もあるが、私はパート2発売の後しばらくして死んだのでわからない。

 いずれにせよ、この時間軸では過去の話。

 すでに起こってしまったことは今さら変えられない。

 父はさらに話を続ける。

「二家が滅んだのは百年以上前の話だが、ヴェルダートルは違う。だからこそ、国王陛下が王太子の時代、婚約者だったイレーネ嬢の罪を問い生家のヴェルダートルごと滅ぼした時には、過去の悪夢が再現されたと貴族社会に衝撃が走った」

「それは、私の聞いていた話と全然違う……」

 そもそも、エシャール王妃の前に国王に婚約者がいたこと自体、初耳だ。

「そう、わずか数十年前の話なのに国民には隠蔽されているんだ。王太子時代、国王は婚約者であったイレーネ嬢を差し置いて子爵令嬢のエシャール殿を寵愛した」

 こっちも乙女ゲームもどきか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で捨て子を育てたら王女だった話

せいめ
ファンタジー
 数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。  元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。  毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。  そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。 「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」  こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが… 「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?  若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」  孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…  はあ?ムカつくー!  だったら私が育ててやるわ!  しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。  誤字脱字、いつも申し訳ありません。  ご都合主義です。    第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。  ありがとうございました。

悪役令嬢の腰巾着に転生したけど、物語が始まる前に追放されたから修道院デビュー目指します。

火野村志紀
恋愛
貧乏な男爵家の三女として生まれたリグレットは、侯爵令嬢ブランシェの在りもしない醜聞を吹聴した罪で貴族界から追放。修道院送りになってしまう。 ……と、そこでリグレットは自分の前世を思い出した。同時に、農家の行き遅れ娘でモリモリ頑張りつつ、その合間にプレイしていた乙女ゲームの世界の中にいると気づく。 リグレットは主要キャラではなく、ライバルの悪役令嬢プランシェの腰巾着。 ゲーム本編には一切登場せず、数多いるブランシェの被害者の一人に過ぎなかった。 やったね! ヒロインがヒーローたちをフラグを立てているうちにさっさとこの国から逃げる計画を立てよう! 何とこのゲーム、メリバエンドがいくつも存在していて、この国そのものが滅亡するぶっ飛んだエンドもある。 人の恋路に巻き込まれて死にたくねぇ。というわけで、この国を脱出するためにもまずは修道院で逞しく生きようと思います。 それとメインヒーローの弟さん、何故私に会いに来るんですか?

婚約破棄された公爵令嬢ですが、魔女によって王太子の浮気相手と赤ん坊のころ取り換えられていたそうです

玄未マオ
ファンタジー
シエラ・マリア・ローゼンシア公爵令嬢は王太子と婚約していた。 王太子は学園の卒業パーティでシエラを断罪し、婚約破棄をもくろむが失敗。 性懲りもなく、数か月後の現国王(王太子の父親)の即位記念パーティで婚約破棄を宣言する王太子と浮気相手のサリエ。 そして、そこで語られる『真実』によって、シエラの運命が激変する。

たった今、婚約破棄された悪役令嬢ですが、破滅の運命にある王子様が可哀想なのでスローライフにお誘いすることにしました

桜枕
ファンタジー
「私たち、異世界転生してる!?」 乙女ゲームの登場キャラクターであり、攻略対象であるフェルド王子は魔力ゼロで魔法を発動できないが、優れた剣技の持ち主である。そんな彼に転生していた辻くんは臆病な性格だが、家事全般をこなせるハイスペック男子だった。 ヒロインに嫌がらせをして断罪される公爵令嬢リリアンヌは膨大な魔力を持っていて、ルート分岐次第で敵幹部になるくせ者である。そんな彼女に転生していた美鈴さんはずる賢くも天然な一面を持つ女の子だった。 彼らは婚約破棄をきっかけに前世の記憶を取り戻した。 このままではゲーム通りの運命が待ち受けていると確信した二人は王宮を逃げ出し、モブキャラクターとして異世界でのスローライフを送る誓いを立てた。 互いの欠点を補いつつ生活を始めた二人は最高のパートナーとなっていく。 美鈴さんの自由奔放さに惹かれて彼女を溺愛する元王子様と、膨大な魔力を頼りにされていると勘違いした元悪役令嬢。 ひょんなことから魔力を持たないはずの辻くんに美鈴さんの魔力が流れ込み、彼は初めて魔法を発動させる。 それは超希少とされる精霊魔法だった。 王宮に戻るように騎士団に追われたり、魔王軍から勧誘を受けたり。 美鈴さんの理想とするスローライフは前途多難なものとなってしまう。 これは運命を逃れたい一心の二人が色々なものから逃げ切れなかった物語。 ※小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

【完結】やり直しの人形姫、二度目は自由に生きていいですか?

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
「俺の愛する女性を虐げたお前に、生きる道などない! 死んで贖え」  これが婚約者にもらった最後の言葉でした。  ジュベール国王太子アンドリューの婚約者、フォンテーヌ公爵令嬢コンスタンティナは冤罪で首を刎ねられた。  国王夫妻が知らぬ場で行われた断罪、王太子の浮気、公爵令嬢にかけられた冤罪。すべてが白日の元に晒されたとき、人々の祈りは女神に届いた。  やり直し――与えられた機会を最大限に活かすため、それぞれが独自に動き出す。  この場にいた王侯貴族すべてが記憶を持ったまま、時間を逆行した。人々はどんな未来を望むのか。互いの思惑と利害が入り混じる混沌の中、人形姫は幸せを掴む。  ※ハッピーエンド確定  ※多少、残酷なシーンがあります 2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2021/07/07 アルファポリス、HOT3位 2021/10/11 エブリスタ、ファンタジートレンド1位 2021/10/11 小説家になろう、ハイファンタジー日間28位 【表紙イラスト】伊藤知実さま(coconala.com/users/2630676) 【完結】2021/10/10 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~

一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】 悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……? 小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位! 更新予定:毎日二回(12:00、18:00) ※本作品は他サイトでも連載中です。

誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る

ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。 能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。 しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。 ——それも、多くの使用人が見ている中で。 シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。 そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。 父も、兄も、誰も会いに来てくれない。 生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。 意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。 そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。 一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。 自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。

処理中です...