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第1章 悪役令嬢の婚約

第4話 難くせをつける王妃陛下

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 ジークとのお茶会から三日後、私は国王夫妻から呼び出された。

 ヴァイスハーフェン家ではなく、私を名指ししての呼び出しなので青くなった。

 やっぱりあのお茶会で何かやらかしたのだろうか?

 何しろ中身は現代日本の『庶民』なのだから、知らずに不敬なことをしでかしている可能性は大だ。

 王宮には父が同行した。

 非公式の体面で使われる広間に私たちは通され、すでに国王夫妻は待っていた。

「サラ嬢だけを呼び出したはずなのだが?」

 国王が同行した父を見ていぶかる。

「サラはまだ未成年ゆえ、問題があったなら親である私が責任を取らねばなりませんので、お話は一緒にうかがうべきと」

 父が国王に答えた。

 国王は少し気まずそうに顔をしかめる。

「サラ殿は婚約者になったことを勘違いして、王族のようにふるまっていたそうですね」

 国王より先に王妃が口を開いた。

 王族のようにふるまう?

 身に覚えがないのですが?

 思いもかけない指摘だったので、私が返答できないでいると父が先に言葉を返した。

「具体的にはどのような?」

 お父様、目が怖いよ。

 父については家族への甘すぎるなまざししか知らない。

 それが、いったいどこの筋の人ですか、と、聞きたくなるような凄みのある父の目つき、初めて見た……。

「そ、それは……、『殿下』という呼称もつけず、こんな基本的なこと……、ヴァイスハーフェン家では何を教えてらっしゃるのかしらね」

「他には?」

 王妃の答えに固い表情のまま、父は続けて質問をする。

「他って……、これだけでも十分不敬ではなくて……?」

 うろたえながらもなんとか言い返す王妃。

 それを聞いたとたん、父が大きな声で笑いだした、いや、目は笑ってないな。

「いや失礼、学生時代には子爵令嬢の分際で当時王太子であった国王陛下をはじめ、あまたの高位貴族の令息に、敬称なしの名前呼びでひんしゅく買いながらも改めなかった方が今になってそのような、と、思いまして」

 えっ、そうなの?

 ようするに自分のことは棚に上げて王妃陛下は私を叱責しようとしたってこと?

 それはそうと、おもいきり王妃陛下を侮辱してるんじゃないですか?

「公爵……、あ、あなた……、なんという……」

 王妃はブルブル震えながらなんとか反論しようと言葉を探していた。

 そんな王妃をしり目に父はさらに言葉を続ける。

「いえいえ、悪い意味で言ったのではなく、地位が人を作るというのは本当なのだな、と、感心したまでです。あの礼儀知らずで傍若無人な令嬢が、今や他者の礼儀作法に対してモノ申すことができるようになっているとは」

 完全にケンカ売っているでしょう、お父様!

 確信犯なのは目を見ればわかる。

「おい、エシャール……、それに、公爵殿も……」

 国王が険悪な雰囲気を見ておろおろしだしたわ。

 何のためにいるの、この方?

「私たち親子が入室したとき、国王陛下はサラが一人で登城しなかったことに納得いかない顔をされていましたね。大人二人で子供をよってたかって責めるつもりが、当てが外れたというわけですか?」

 父が追い打ちをかける。

「そんなつもりは……」

 国王が口ごもる。

 王妃はもはや言葉も出ず震えている。

 これ、どうやって事を収めるの?

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