4 / 99
第1章 悪役令嬢の婚約
第4話 難くせをつける王妃陛下
しおりを挟む
ジークとのお茶会から三日後、私は国王夫妻から呼び出された。
ヴァイスハーフェン家ではなく、私を名指ししての呼び出しなので青くなった。
やっぱりあのお茶会で何かやらかしたのだろうか?
何しろ中身は現代日本の『庶民』なのだから、知らずに不敬なことをしでかしている可能性は大だ。
王宮には父が同行した。
非公式の体面で使われる広間に私たちは通され、すでに国王夫妻は待っていた。
「サラ嬢だけを呼び出したはずなのだが?」
国王が同行した父を見ていぶかる。
「サラはまだ未成年ゆえ、問題があったなら親である私が責任を取らねばなりませんので、お話は一緒にうかがうべきと」
父が国王に答えた。
国王は少し気まずそうに顔をしかめる。
「サラ殿は婚約者になったことを勘違いして、王族のようにふるまっていたそうですね」
国王より先に王妃が口を開いた。
王族のようにふるまう?
身に覚えがないのですが?
思いもかけない指摘だったので、私が返答できないでいると父が先に言葉を返した。
「具体的にはどのような?」
お父様、目が怖いよ。
父については家族への甘すぎるなまざししか知らない。
それが、いったいどこの筋の人ですか、と、聞きたくなるような凄みのある父の目つき、初めて見た……。
「そ、それは……、『殿下』という呼称もつけず、こんな基本的なこと……、ヴァイスハーフェン家では何を教えてらっしゃるのかしらね」
「他には?」
王妃の答えに固い表情のまま、父は続けて質問をする。
「他って……、これだけでも十分不敬ではなくて……?」
うろたえながらもなんとか言い返す王妃。
それを聞いたとたん、父が大きな声で笑いだした、いや、目は笑ってないな。
「いや失礼、学生時代には子爵令嬢の分際で当時王太子であった国王陛下をはじめ、あまたの高位貴族の令息に、敬称なしの名前呼びでひんしゅく買いながらも改めなかった方が今になってそのような、と、思いまして」
えっ、そうなの?
ようするに自分のことは棚に上げて王妃陛下は私を叱責しようとしたってこと?
それはそうと、おもいきり王妃陛下を侮辱してるんじゃないですか?
「公爵……、あ、あなた……、なんという……」
王妃はブルブル震えながらなんとか反論しようと言葉を探していた。
そんな王妃をしり目に父はさらに言葉を続ける。
「いえいえ、悪い意味で言ったのではなく、地位が人を作るというのは本当なのだな、と、感心したまでです。あの礼儀知らずで傍若無人な令嬢が、今や他者の礼儀作法に対してモノ申すことができるようになっているとは」
完全にケンカ売っているでしょう、お父様!
確信犯なのは目を見ればわかる。
「おい、エシャール……、それに、公爵殿も……」
国王が険悪な雰囲気を見ておろおろしだしたわ。
何のためにいるの、この方?
「私たち親子が入室したとき、国王陛下はサラが一人で登城しなかったことに納得いかない顔をされていましたね。大人二人で子供をよってたかって責めるつもりが、当てが外れたというわけですか?」
父が追い打ちをかける。
「そんなつもりは……」
国王が口ごもる。
王妃はもはや言葉も出ず震えている。
これ、どうやって事を収めるの?
ヴァイスハーフェン家ではなく、私を名指ししての呼び出しなので青くなった。
やっぱりあのお茶会で何かやらかしたのだろうか?
何しろ中身は現代日本の『庶民』なのだから、知らずに不敬なことをしでかしている可能性は大だ。
王宮には父が同行した。
非公式の体面で使われる広間に私たちは通され、すでに国王夫妻は待っていた。
「サラ嬢だけを呼び出したはずなのだが?」
国王が同行した父を見ていぶかる。
「サラはまだ未成年ゆえ、問題があったなら親である私が責任を取らねばなりませんので、お話は一緒にうかがうべきと」
父が国王に答えた。
国王は少し気まずそうに顔をしかめる。
「サラ殿は婚約者になったことを勘違いして、王族のようにふるまっていたそうですね」
国王より先に王妃が口を開いた。
王族のようにふるまう?
身に覚えがないのですが?
思いもかけない指摘だったので、私が返答できないでいると父が先に言葉を返した。
「具体的にはどのような?」
お父様、目が怖いよ。
父については家族への甘すぎるなまざししか知らない。
それが、いったいどこの筋の人ですか、と、聞きたくなるような凄みのある父の目つき、初めて見た……。
「そ、それは……、『殿下』という呼称もつけず、こんな基本的なこと……、ヴァイスハーフェン家では何を教えてらっしゃるのかしらね」
「他には?」
王妃の答えに固い表情のまま、父は続けて質問をする。
「他って……、これだけでも十分不敬ではなくて……?」
うろたえながらもなんとか言い返す王妃。
それを聞いたとたん、父が大きな声で笑いだした、いや、目は笑ってないな。
「いや失礼、学生時代には子爵令嬢の分際で当時王太子であった国王陛下をはじめ、あまたの高位貴族の令息に、敬称なしの名前呼びでひんしゅく買いながらも改めなかった方が今になってそのような、と、思いまして」
えっ、そうなの?
ようするに自分のことは棚に上げて王妃陛下は私を叱責しようとしたってこと?
それはそうと、おもいきり王妃陛下を侮辱してるんじゃないですか?
「公爵……、あ、あなた……、なんという……」
王妃はブルブル震えながらなんとか反論しようと言葉を探していた。
そんな王妃をしり目に父はさらに言葉を続ける。
「いえいえ、悪い意味で言ったのではなく、地位が人を作るというのは本当なのだな、と、感心したまでです。あの礼儀知らずで傍若無人な令嬢が、今や他者の礼儀作法に対してモノ申すことができるようになっているとは」
完全にケンカ売っているでしょう、お父様!
確信犯なのは目を見ればわかる。
「おい、エシャール……、それに、公爵殿も……」
国王が険悪な雰囲気を見ておろおろしだしたわ。
何のためにいるの、この方?
「私たち親子が入室したとき、国王陛下はサラが一人で登城しなかったことに納得いかない顔をされていましたね。大人二人で子供をよってたかって責めるつもりが、当てが外れたというわけですか?」
父が追い打ちをかける。
「そんなつもりは……」
国王が口ごもる。
王妃はもはや言葉も出ず震えている。
これ、どうやって事を収めるの?
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
私の敬愛するお嬢様は、天使の様な悪女でございます。
芹澤©️
恋愛
私がお仕えしておりますアリアナ様は、王太子殿下の婚約者で優秀な御令嬢でございます。容姿端麗、勉学も学年で上位の成績。そして何より天真爛漫で、そこが時折困りますが、それもまた魅力的な方でございます。
けれど、二つ年上の王太子殿下はアリアナ様ではなく、一般家庭出の才女、ミレニス嬢と何やら噂になっていて…私の敬愛するお嬢様に何たる態度!けれども、アリアナ様はそんな王太子殿下の行動なんて御構い無しなのです。それは純真さがさせるのか、はたまた…?
私の中では王太子殿下の好感度はごっそり削られているのですが…私は何処までもお嬢様について参ります!!
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます
愛徳らぴ
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。
第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。
アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。
そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。
自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。
処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。
そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる