上 下
4 / 45
第1章 悪役令嬢の婚約編

第4話 難くせをつける王妃陛下

しおりを挟む
 ジークとのお茶会から三日後、私は国王夫妻から呼び出された。

 ヴァイスハーフェン家ではなく、私を名指ししての呼び出しなので青くなった。

 やっぱりあのお茶会で何かやらかしたのだろうか?

 何しろ中身は現代日本の『庶民』なのだから、知らずに不敬なことをしでかしている可能性は大だ。

 王宮には父が同行した。

 非公式の体面で使われる広間に私たちは通され、すでに国王夫妻は待っていた。

「サラ嬢だけを呼び出したはずなのだが?」

 国王が同行した父を見ていぶかる。

「サラはまだ未成年ゆえ、問題があったなら親である私が責任を取らねばなりませんので、お話は一緒にうかがうべきと」

 父が国王に答えた。

 国王は少し気まずそうに顔をしかめる。

「サラ殿は婚約者になったことを勘違いして、王族のようにふるまっていたそうですね」

 国王より先に王妃が口を開いた。

 王族のようにふるまう?

 身に覚えがないのですが?

 思いもかけない指摘だったので、私が返答できないでいると父が先に言葉を返した。

「具体的にはどのような?」

 お父様、目が怖いよ。

 父については家族への甘すぎるなまざししか知らない。

 それが、いったいどこの筋の人ですか、と、聞きたくなるような凄みのある父の目つき、初めて見た……。

「そ、それは……、『殿下』という呼称もつけず、こんな基本的なこと……、ヴァイスハーフェン家では何を教えてらっしゃるのかしらね」

「他には?」

 王妃の答えに固い表情のまま、父は続けて質問をする。

「他って……、これだけでも十分不敬ではなくて……?」

 うろたえながらもなんとか言い返す王妃。

 それを聞いたとたん、父が大きな声で笑いだした、いや、目は笑ってないな。

「いや失礼、学生時代には子爵令嬢の分際で当時王太子であった国王陛下をはじめ、あまたの高位貴族の令息に、敬称なしの名前呼びでひんしゅく買いながらも改めなかった方が今になってそのような、と、思いまして」

 えっ、そうなの?

 ようするに自分のことは棚に上げて王妃陛下は私を叱責しようとしたってこと?

 それはそうと、おもいきり王妃陛下を侮辱してるんじゃないですか?

「公爵……、あ、あなた……、なんという……」

 王妃はブルブル震えながらなんとか反論しようと言葉を探していた。

 そんな王妃をしり目に父はさらに言葉を続ける。

「いえいえ、悪い意味で言ったのではなく、地位が人を作るというのは本当なのだな、と、感心したまでです。あの礼儀知らずで傍若無人な令嬢が、今や他者の礼儀作法に対してモノ申すことができるようになっているとは」

 完全にケンカ売っているでしょう、お父様!

 確信犯なのは目を見ればわかる。

「おい、エシャール……、それに、公爵殿も……」

 国王が険悪な雰囲気を見ておろおろしだしたわ。

 何のためにいるの、この方?

「私たち親子が入室したとき、国王陛下はサラが一人で登城しなかったことに納得いかない顔をされていましたね。大人二人で子供をよってたかって責めるつもりが、当てが外れたというわけですか?」

 父が追い打ちをかける。

「そんなつもりは……」

 国王が口ごもる。

 王妃はもはや言葉も出ず震えている。

 これ、どうやって事を収めるの?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

君が僕に心をくれるなら僕は君に全てをあげよう

下菊みこと
恋愛
君は僕に心を捧げてくれた。 醜い獣だった僕に。 だから僕は君にすべてをあげよう。 そう、この命のすべてをー… これは醜い獣だった彼が一人の少女のためだけにヒトの形を得て、彼女を虐げたすべてをざまぁする物語。 そしてそこから始まる甘々溺愛物語。 アルファポリス様で新手のリクエストをいただき書き始めたものです。 リクエストありがとうございます! 小説家になろう様でも投稿しています。

ラ・ラ・グッドバイ

おくむらなをし
恋愛
大学の事務員として働く派遣社員の吉田は、何度目かの失恋をした。 仕事も恋も長続きしない自分に苛立ちながら副業にしている日雇いの現場へ向かい、そこで栗谷ほまれという年下の女性に出会った。 妙にパーソナルスペースが狭い彼女の態度に戸惑いながらも一緒に食事をして別れ際、彼女は「またね」という言葉を口にする。 その後2人は意外なかたちで再開することとなり……。 ◇この作品はフィクションです。全20話+アフターSS、完結済み。 ◇この小説はNOVELDAYSにも掲載しています。

心変わりを咎めるつもりはありません。え?私を愛してる?…???

下菊みこと
恋愛
正直悲恋なのかそうでないのか、報われてるのかそうでないのか、そもそも報われるとしてそれはどっちなのか…。 ジャンルが迷子です。オチもハッピーエンドのつもりだけど、ビターエンド?場合によってはバッドエンドにも見えるのかな? 主人公は貴族の娘にしては特殊な環境で育った子。あまり人の考えがわからない子なのでご了承ください。 お相手の婚約者は恋に酔ったクソ野郎さま。多分下手な方向に酔い続けているのかも。挽回できるのかどうなのか。 クソ野郎さまに恋慕される聖女さまはいますが、まともに聖人やってる方なのでそこだけはご安心いただけるかと。 つらつらと書いてしまいましたが、とりあえず楽しんでいただけたら嬉しいです。ただ、読後感は少なくとも爽やかではないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

process(0)

おくむらなをし
青春
下村ミイナは、高校1年生。 進路希望調査票を紙飛行機にして飛ばしたら、担任の高島先生の後頭部に刺さった。 生徒指導室でお叱りを受け、帰ろうとして開けるドアを間違えたことで、 彼女の人生は大きく捻じ曲がるのであった。 ◇この物語はフィクションです。全30話、完結済み。 ◇この小説はNOVELDAYSにも掲載しています。

最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音
ファンタジー
『目的はただ1つ、1年間でその喋り方をどうにかすること』  辺境伯令嬢である主人公はそんな手紙を持たされ実家を追放された為、冒険者にならざるを得なかった。 「人生ってクソぞーーーーーー!!!」 「嬢ちゃんうるせぇよッ!」  隣の部屋の男が相棒になるとも知らず、現状を嘆いた。  リィンという偽名を名乗った少女はへっぽこ言語を駆使し、相棒のおっさんもといライアーと共に次々襲いかかる災厄に立ち向かう。  盗賊、スタンピード、敵国のスパイ。挙句の果てに心当たりが全くないのに王族誘拐疑惑!? 世界よ、私が一体何をした!?  最低ランクと舐めてかかる敵が居れば痛い目を見る。立ちはだかる敵を薙ぎ倒し、味方から「敵に同情する」と言われながらも、でこぼこ最凶コンビは我が道を進む。 「誰かあのFランク共の脅威度を上げろッッ!」  あいつら最低ランク詐欺だ。  とは、ライバルパーティーのリーダーのお言葉だ。  ────これは嘘つき達の物語 *毎日更新中*小説家になろうと重複投稿

あめふりバス停の優しい傘

朱宮あめ
青春
雨のバス停。 蛙の鳴き声と、 雨音の中、 私たちは出会った。 ――ねぇ、『同盟』組まない? 〝傘〟を持たない私たちは、 いつも〝ずぶ濡れ〟。 私はあなたの〝傘〟になりたい――。 【あらすじ】 自身の生い立ちが原因で周囲と距離を置く高校一年生のしずくは、六月のバス停で同じ制服の女生徒に出会う。 しずくにまったく興味を示さない女生徒は、 いつも空き教室から遠くを眺めている不思議なひと。 彼女は、 『雪女センパイ』と噂される三年生だった。 ひとりぼっち同士のふたりは 『同盟』を組み、 友達でも、家族でも恋人でもない、 奇妙で特別な、 唯一無二の存在となってゆく。

死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」  かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。   『お飾りの王妃』    彼に振り向いてもらうため、  政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。  アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。  そして二十五の歳。  病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。  苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。  しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。  何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。  だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。  もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。  自由に、好き勝手に……私は生きていきます。  戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。

処理中です...