黒猫ですが精霊王の眷属をやっています、死んだ公爵令嬢とタッグを組んで王国の危機を救います

玄未マオ

文字の大きさ
上 下
9 / 19

第9話 ロゼラインの目撃談が増えてるの

しおりを挟む
 最近少し困ったこととして、ロゼラインの目撃談が増えているのよ。

 死に方が死に方だったから、王太子の元婚約者の幽霊なんて怪談話としては格好のネタよね。

 見えている人間はロゼラインの死を心から惜しんでる者たちだけど、それが増えてきたのは、新しい王太子の婚約者サルビアが期待はずれすぎるからだそうよ。

 これにはロゼラインも複雑な顔をしたわ。

 生きている間は一生懸命仕事をしてもそれを当たり前のように思って、母や王太子にロゼラインが好き勝手罵られてもかばってくれる人もいなかったくせに。
 居なくなってから、今さら惜しまれても……。

 でも、噂が拡散されていく速さについては、

「そうですね、亡くなられたロゼライン様の姿を目にしても、普通は自分の目がおかしくなったのでは、と、考えます。現に自分もそうでした。でも、誰かが『視える』と口火を切ったら、『自分も』と明かす人間がどんどん出てきて、それが今の状態なのではないでしょうか」

 心理分析にもたけた侍女ゾフィが語る。

 困るのはその目撃談が第二王子ゼフィーロと一緒にいるところが多いこと。

 捜査は秘密裏に行っているので、ゼフィーロとロゼラインが関連付けられるのは少々まずい。

 ウ~ン、と、皆で思案しているときに聞き覚えのある声が。

「そろそろ行きづまる頃だと思っていた。だから助太刀に来たぞ、我が小さな眷属と薄命の美姫よ」

 精霊のサタ坊よ。

 あのね、普段彼らをフォローしているのは私でしょ、たまに顔出すだけのくせになぜにそんなにドヤ顔?

 ついでに言うと私は精霊王ティナの眷属であんたの部下じゃない。

「君たちがそろそろ助けを必要とする頃だと思ってやってきたんだ、感謝してほしいな」

 だから、なぜどや顔で感謝の強要?

 そもそもあんたらの失態でロゼラインは今の状態になっているわけだし……。

 サタ坊は白い小さな人型をロゼラインに差し出したわ。

 これは私たちの仲間、四大精霊の一人、破壊と再生をつかさどるプルカシアだけが作ることのできる人造人間ホムンクルスよ。

 魂をその中に入れると人間のように活動できるの。

 ロゼラインが入るとまず彼女そのものの姿になったわ。

 さすがにその姿のままではまずいので手直し。

 頭の中で姿を思い浮かべれば容姿も変えられるのよ。

 ロゼラインは前世の北山美華の姿を連想したわ。
 そのあと、少し顔の彫りを深くして目鼻立ちもはっきりさせる。

 ロゼラインと美華のハイブリットね。

 ロゼラインと私たち精霊が相談し合いながら人造人間の形を変えてゆく様を、生者三名(ゼフィーロ、アイリス、ゾフィ)はぽかんとした形で見ていたわ。

「ほらほら、感心してないで! これでロゼラインも捜査に加わることができるわ。奴らのより近くで秘密がつかめるような働き場所を、エライ人が手をまわして確保しないでどうするのよ!」

 私がはっぱをかけ、ロゼラインはウスタライフェン家の口利きで王宮の掃除婦として雇われることとなったわ。

 この人造人間《ホムンクルス》にはどんな毒も聞かないし、刺されたり殴られたりしても痛みは感じないし、死にもしない、ほぼ不死身の体なの。

 ああ、そうそう。
 捜査の進捗状況だけど、例の毒薬に追跡魔法をかけてみたんだけど、王宮内の魔導士たちでは時間が経ちすぎておぼろげにしか分からない。
 それでは証拠能力に乏しいので、外部の魔導士に頼むことにしたの。

 時間が経ってもわずかな思念の痕跡から触れた人物を全て言い当てることのできる凄腕なんですって。

 彼を呼んで調べてもらえるまでにはまだ時間がかかるから、その間にロゼラインも潜入、その結果ははたして?

 私もがんばるわよ!

 それからサタ坊に、どうしてそんなにもったいぶって偉そうなの?って、こっそり聞いてみたら、

「私たち精霊は人々の信仰の対象でもあるんだ。ある程度威厳を見せなきゃ格好がつかないじゃないか」

 ですって……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

処理中です...