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第8話 どんどん仲間が増えるわよ
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警務隊のゲオルグから捜査の進捗情報について聞けたのは大きな収穫だったわ。
一応殺人の線も考慮に入れ、パーティ当日、ロゼラインを殺害する動機のある者たちのアリバイはしっかり調べたみたい。
サルビアや王太子、そして王太子らの取り巻きもシロ。
事件が起こった時間には皆パーティ会場にいたことが第三者の証言からも明らかにされている。
しかし、ロゼラインの家族、それは容疑者のうちには入ってなかったようね。
母親の自己保身のための毒物混入が原因であることをゲオルグに話すと、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたわ。
彼の中の『家族』の概念だとあり得ない話だったのね。
それだけ『幸せな人』と言えるけど……。
実の母や弟が事件に関わっていてもことを明るみにすることを希望する、と、ロゼラインが告げると、ゲオルグふたたび感動して落涙。
彼の中ではもはやロゼラインも神格化しているわね。
とにもかくにも、ことを明るみに使用にも時間が経ちすぎているし、クロと言える面々がそろいもそろって国の重要人物なので、捜査を進展させるのは難しい状況。
関係者を全員しょっぴくには、毒物がサルビアの手から母親の手に渡るまでの過程を何らかの形で証明する必要がある。ロゼラインは、前世の国の捜査には『指紋』という手段があり、それさえ使えればはっきりさせられるのにと悔しがったわ。
「待ってください。指の痕跡はわからぬが、モノに触れると残った思念からそれまでに触った人たちが全てわかる追跡魔法がありましたぞ、それを使えば毒がどういった経緯で人から人へ渡ったか、明らかにできるかもしれません」
ロゼラインの言葉がヒントになったみたい、ゲオルグが提案したわ。
問題の毒物は鑑定をした魔法省においてあるとのこと。
「魔法省には僕が話をつけよう、君は聞き取りなど警務部でできることを頼む」
ゼフィーロ王子がゲオルグに命じて役割分担が決まったわね。
◇ ◇ ◇
数日後、心地よい風吹く晴天の日。
ゼフィーロとアイリスはピクニック、つまりデート、という名目で王都の郊外に足を延ばしたの。
もちろん私やロゼラインも一緒よ。
ほかの人間には見えないけどね。
ロゼラインの元侍女のゾフィ・エルダーという人を訪ねるためよ。
彼女は未来の王太子妃に仕えるべく訓練されたスーパー侍女。
地理や歴史・外交などもろもろの教育をロゼラインと一緒に受け、相談相手としての役も期待され、いざという時には妃を守る最後の砦、体術の達人でもあったの。
ロゼラインのことを、不出来で期待外れな娘、と、罵るだけの家族より、よっぽど近しい存在であり、真の意味での同志だったのよ。
でも、ロゼラインが死んだのでノルドベルク家に解雇され、今は実家に身を寄せていたらしいの。
「このようなところまでおいでいただき恐悦至極に存じます」
突然訪ねてきたゼフィーロとアイリスをこじんまりした邸宅の応接室に通し、ゾフィはあいさつ。
二人の訪問でゾフィは、いやがうえにも亡き主人ロゼラインのことを思い出したみたい。自分がしっかり支えていこうと思っていたのだが、みすみす死なせてしまったことが悔やまれ、自分の力不足への怒りと後悔にゾフィの心は再び染まる。
そんなゾフィにロゼラインは話しかける。
「申し訳ございません、お二人にお会いしたせいか、ロゼライン様の幻が! お声まで鮮明に響いてくるのです」
「見えるのですか、ロゼライン様が?」
「なんだって、それなら話が早い!」
ゼフィーロとアイリスが口々に言ったわ。
「えっと、あの……、皆様方にもロゼライン様が……?」
ゾフィ困惑。
「ああ、しっかり見えているよ、今日訪ねてきたのはそのことについてなんだよ」
おかげであっさり本題に入れるわ。
ゼフィーロは事件のあらましをゾフィに説明。
「そんな! ご自害あそばされたのではなかったなんて! ああ、でも、だったら私は毒の入ったお茶とも知らずにそれをロゼライン様のもとへ運んで……」
「あなたのせいじゃないわ! 今日ここに来たのはお茶を母が入れたことの証言をお願いしたかったからなの」
「はい、例の『宣言』の後、ロゼライン様は会場を下がられまっすぐ控室に向かわれました。私はロゼライン様のお茶を用意すべく厨房へ向かいました。用意している途中でお母上様が入ってこられ、ポットからティーカップにお茶を注がれました。手元は良く見えませんでした。ふつうお茶を注ぐのは部屋に入ってからなので、先にティーカップに注がれては持っていきにくいと思ったのですが、お母上様がお入れしたものですから仕方なくそれを運んだのです」
「道理でお茶が少し冷めていたわけね」
「ゾフィ、今の私はね、私の死を心から惜しんでくれる人にだけ見えるらしいの。あなたが私に気づいてくれて本当にうれしい! さらに私の死の真相を明らかにして無念を晴らす協力をしてくれたらこれ以上の喜びはないわ」
「ロゼライン様、私の証言がお役に立つならどこででもそれをいたします!」
よしっ、母親が毒物を入れたことを証言してくれる人間ゲットよ!
ゾフィはその後、アイリスの侍女という立場でウスタライフェン公爵家で雇われることとなったわ。
彼女の能力は埋もれさせるには惜しいし、ロゼライン毒殺事件で生き証人なりうる存在だと気付かれたら、彼女の身に危険が及ぶ可能性もあるから、公爵家が盾になる方がいいって判断したのよね。
一応殺人の線も考慮に入れ、パーティ当日、ロゼラインを殺害する動機のある者たちのアリバイはしっかり調べたみたい。
サルビアや王太子、そして王太子らの取り巻きもシロ。
事件が起こった時間には皆パーティ会場にいたことが第三者の証言からも明らかにされている。
しかし、ロゼラインの家族、それは容疑者のうちには入ってなかったようね。
母親の自己保身のための毒物混入が原因であることをゲオルグに話すと、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたわ。
彼の中の『家族』の概念だとあり得ない話だったのね。
それだけ『幸せな人』と言えるけど……。
実の母や弟が事件に関わっていてもことを明るみにすることを希望する、と、ロゼラインが告げると、ゲオルグふたたび感動して落涙。
彼の中ではもはやロゼラインも神格化しているわね。
とにもかくにも、ことを明るみに使用にも時間が経ちすぎているし、クロと言える面々がそろいもそろって国の重要人物なので、捜査を進展させるのは難しい状況。
関係者を全員しょっぴくには、毒物がサルビアの手から母親の手に渡るまでの過程を何らかの形で証明する必要がある。ロゼラインは、前世の国の捜査には『指紋』という手段があり、それさえ使えればはっきりさせられるのにと悔しがったわ。
「待ってください。指の痕跡はわからぬが、モノに触れると残った思念からそれまでに触った人たちが全てわかる追跡魔法がありましたぞ、それを使えば毒がどういった経緯で人から人へ渡ったか、明らかにできるかもしれません」
ロゼラインの言葉がヒントになったみたい、ゲオルグが提案したわ。
問題の毒物は鑑定をした魔法省においてあるとのこと。
「魔法省には僕が話をつけよう、君は聞き取りなど警務部でできることを頼む」
ゼフィーロ王子がゲオルグに命じて役割分担が決まったわね。
◇ ◇ ◇
数日後、心地よい風吹く晴天の日。
ゼフィーロとアイリスはピクニック、つまりデート、という名目で王都の郊外に足を延ばしたの。
もちろん私やロゼラインも一緒よ。
ほかの人間には見えないけどね。
ロゼラインの元侍女のゾフィ・エルダーという人を訪ねるためよ。
彼女は未来の王太子妃に仕えるべく訓練されたスーパー侍女。
地理や歴史・外交などもろもろの教育をロゼラインと一緒に受け、相談相手としての役も期待され、いざという時には妃を守る最後の砦、体術の達人でもあったの。
ロゼラインのことを、不出来で期待外れな娘、と、罵るだけの家族より、よっぽど近しい存在であり、真の意味での同志だったのよ。
でも、ロゼラインが死んだのでノルドベルク家に解雇され、今は実家に身を寄せていたらしいの。
「このようなところまでおいでいただき恐悦至極に存じます」
突然訪ねてきたゼフィーロとアイリスをこじんまりした邸宅の応接室に通し、ゾフィはあいさつ。
二人の訪問でゾフィは、いやがうえにも亡き主人ロゼラインのことを思い出したみたい。自分がしっかり支えていこうと思っていたのだが、みすみす死なせてしまったことが悔やまれ、自分の力不足への怒りと後悔にゾフィの心は再び染まる。
そんなゾフィにロゼラインは話しかける。
「申し訳ございません、お二人にお会いしたせいか、ロゼライン様の幻が! お声まで鮮明に響いてくるのです」
「見えるのですか、ロゼライン様が?」
「なんだって、それなら話が早い!」
ゼフィーロとアイリスが口々に言ったわ。
「えっと、あの……、皆様方にもロゼライン様が……?」
ゾフィ困惑。
「ああ、しっかり見えているよ、今日訪ねてきたのはそのことについてなんだよ」
おかげであっさり本題に入れるわ。
ゼフィーロは事件のあらましをゾフィに説明。
「そんな! ご自害あそばされたのではなかったなんて! ああ、でも、だったら私は毒の入ったお茶とも知らずにそれをロゼライン様のもとへ運んで……」
「あなたのせいじゃないわ! 今日ここに来たのはお茶を母が入れたことの証言をお願いしたかったからなの」
「はい、例の『宣言』の後、ロゼライン様は会場を下がられまっすぐ控室に向かわれました。私はロゼライン様のお茶を用意すべく厨房へ向かいました。用意している途中でお母上様が入ってこられ、ポットからティーカップにお茶を注がれました。手元は良く見えませんでした。ふつうお茶を注ぐのは部屋に入ってからなので、先にティーカップに注がれては持っていきにくいと思ったのですが、お母上様がお入れしたものですから仕方なくそれを運んだのです」
「道理でお茶が少し冷めていたわけね」
「ゾフィ、今の私はね、私の死を心から惜しんでくれる人にだけ見えるらしいの。あなたが私に気づいてくれて本当にうれしい! さらに私の死の真相を明らかにして無念を晴らす協力をしてくれたらこれ以上の喜びはないわ」
「ロゼライン様、私の証言がお役に立つならどこででもそれをいたします!」
よしっ、母親が毒物を入れたことを証言してくれる人間ゲットよ!
ゾフィはその後、アイリスの侍女という立場でウスタライフェン公爵家で雇われることとなったわ。
彼女の能力は埋もれさせるには惜しいし、ロゼライン毒殺事件で生き証人なりうる存在だと気付かれたら、彼女の身に危険が及ぶ可能性もあるから、公爵家が盾になる方がいいって判断したのよね。
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