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第24話 かけたのは魔王、でも、続けたのは人間
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「「「えっ!」」」
妻魔王の言葉にその場にいた三名がすっとんきょうな声を上げた。
「伝えた?」
「なら、なぜまだ呪いが続いているのですか?」
「誰に伝えたんだ? その者が正しく王家に伝えなかったとか?」
三名がそれぞれ疑問を口にした。
「家臣とか第三者じゃなく、当時の国王に直接伝えたわよ。にもかかわらずいまだに呪いを解いてないなんてね……?」
妻メディアが答える。
なぜだ、と、夫魔王が頭をひねり、それに対する一つの答えをテティスが予測する。
「考えられるとしたら、呪いと引き換えに得られる大量の魔石ね。それもまだ引き続きメディア国内で取り続けられているんでしょう」
「まあね、あの術のおかげで魔石は、他の貴石や宝石を掘るような手間もいらず、簡単に採掘できるほどに湧いて出ているのよ」
「それがなくなるのが惜しいから、無効化の方法を教えても実践していない、と、いうことか」
呪いを断ち切る方法を知ってもそれを実行しない王家の欲深さに三名は考え込んだ。
「つまり、呪いをかけたのは確かにこちらにいらっしゃる魔王メディアだけど、それを継続する選択をしたのは王家の人々ということですか?」
メルは沈痛な面持ちで結論を出した。
「まあ、そういうことになるわね……」
テティスがあきれながら、気まずそうに答える。
「それなら、もうすこし犠牲になって呪いを受け続けている者に対して、愛情や尊敬を示すくらいのことをしたらいいのに……」
メルはベネットに対する王家の人間の仕打ちを思い出しながら言った。
「そこはいやなんでしょ。呪いという得体のしれないものを受けている者はさげすむ対象にしたいのよ」
テティスが人間の醜い部分を容赦なくつく。
「恩恵は受けたいくせにその元となっている者は虐げる、えげつないな! 俺たち魔物も真っ青だ」
人間心理に疎い夫魔王があきれるように言った。
「そういえば、これは、レナートの先代のヴァルカン殿に聞いた話なんだけどね。ある代の呪われた王子が夜にだけ呪いが消えて普通の顔になることを自分の家族に話したらしいの。でも、あざ笑われただけだったって」
テティスがある話を語り始める。
「「「どうして?」」」
三人が疑問を口にする。
「う~ん……。とにかくね、彼が仮面を取って夜に王宮内を歩くと、これ見よがしにくすくすと笑って精神的な圧迫をかけたそうよ。王家の人間だけでなく、召使もそう。今まで、彼に同情的で比較的よくしてくれた召使ほど、その態度がひどかったみたい。たとえ夜だけでも、顔の件で悩まされていることが消え、皆も喜んでくれると思っていたのに、逆にいっそう馬鹿にされ笑われるようになった彼の精神はどんどん追いつめられた……」
「それでどうなったのです?」
「自殺を図ったそうよ、未遂だったけど。これには国王も慌てて、その呪われた王子を今までの王太子用の部屋から貴族牢のようなところに閉じ込め、刃物など先のとがったもの、あるいはひも状のものは一切部屋に置かず、四六時中監視がつけられ、それは次の呪われた子が生まれるまで続いたの」
「ひでえな……」
「そして、次の呪われた赤子が生まれるとあっさり放逐され、生きようが死のうが知ったことじゃないって態度だったらしいわ。だからメディア王家にも呪われた王子が国から消えるとまずいという認識は、今思えば、おそらくあったのね」
妻魔王の言葉にその場にいた三名がすっとんきょうな声を上げた。
「伝えた?」
「なら、なぜまだ呪いが続いているのですか?」
「誰に伝えたんだ? その者が正しく王家に伝えなかったとか?」
三名がそれぞれ疑問を口にした。
「家臣とか第三者じゃなく、当時の国王に直接伝えたわよ。にもかかわらずいまだに呪いを解いてないなんてね……?」
妻メディアが答える。
なぜだ、と、夫魔王が頭をひねり、それに対する一つの答えをテティスが予測する。
「考えられるとしたら、呪いと引き換えに得られる大量の魔石ね。それもまだ引き続きメディア国内で取り続けられているんでしょう」
「まあね、あの術のおかげで魔石は、他の貴石や宝石を掘るような手間もいらず、簡単に採掘できるほどに湧いて出ているのよ」
「それがなくなるのが惜しいから、無効化の方法を教えても実践していない、と、いうことか」
呪いを断ち切る方法を知ってもそれを実行しない王家の欲深さに三名は考え込んだ。
「つまり、呪いをかけたのは確かにこちらにいらっしゃる魔王メディアだけど、それを継続する選択をしたのは王家の人々ということですか?」
メルは沈痛な面持ちで結論を出した。
「まあ、そういうことになるわね……」
テティスがあきれながら、気まずそうに答える。
「それなら、もうすこし犠牲になって呪いを受け続けている者に対して、愛情や尊敬を示すくらいのことをしたらいいのに……」
メルはベネットに対する王家の人間の仕打ちを思い出しながら言った。
「そこはいやなんでしょ。呪いという得体のしれないものを受けている者はさげすむ対象にしたいのよ」
テティスが人間の醜い部分を容赦なくつく。
「恩恵は受けたいくせにその元となっている者は虐げる、えげつないな! 俺たち魔物も真っ青だ」
人間心理に疎い夫魔王があきれるように言った。
「そういえば、これは、レナートの先代のヴァルカン殿に聞いた話なんだけどね。ある代の呪われた王子が夜にだけ呪いが消えて普通の顔になることを自分の家族に話したらしいの。でも、あざ笑われただけだったって」
テティスがある話を語り始める。
「「「どうして?」」」
三人が疑問を口にする。
「う~ん……。とにかくね、彼が仮面を取って夜に王宮内を歩くと、これ見よがしにくすくすと笑って精神的な圧迫をかけたそうよ。王家の人間だけでなく、召使もそう。今まで、彼に同情的で比較的よくしてくれた召使ほど、その態度がひどかったみたい。たとえ夜だけでも、顔の件で悩まされていることが消え、皆も喜んでくれると思っていたのに、逆にいっそう馬鹿にされ笑われるようになった彼の精神はどんどん追いつめられた……」
「それでどうなったのです?」
「自殺を図ったそうよ、未遂だったけど。これには国王も慌てて、その呪われた王子を今までの王太子用の部屋から貴族牢のようなところに閉じ込め、刃物など先のとがったもの、あるいはひも状のものは一切部屋に置かず、四六時中監視がつけられ、それは次の呪われた子が生まれるまで続いたの」
「ひでえな……」
「そして、次の呪われた赤子が生まれるとあっさり放逐され、生きようが死のうが知ったことじゃないって態度だったらしいわ。だからメディア王家にも呪われた王子が国から消えるとまずいという認識は、今思えば、おそらくあったのね」
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