12 / 51
第12話 会食での嫌がらせ
しおりを挟む
形式だけの結婚なので『家族』といわれてもピンとこなかったが、メルは初めて王家一家がそろう夕食の席に足を向けた。
侍従に案内され部屋に足を踏み入れると、
「あら、来たの?」
と、王妃が冷淡な言葉をかけた。
その部屋には王家の人々となぜかエメもいた。
しかし、夫である王太子ベネットはいない。
「そこに席を作ってあげなさい」
王妃の指令でメルの席が長テーブルの入り口に一番近いところに作られた。
部屋にいる者たちにはすでに食前酒と前菜が給されている。
メルに急きょ用意されたものは彼らのものより質素で見た目も劣るものであった。
「このグランシャーモンのカナッペとても美味しいですわね、クレール様」
「そうだろう、このルオマールも試してごらんよ」
メルの扱われ方をよそ眼に、彼らはどうやら侍従の言っていたアクタラッサの献上品である魚介類を楽しんでいた。
いったいどういうつもりで自分を呼んだのか、と、メルはいぶかった。
その後、スープ、メインディッシュと進んでいっても、メルの料理だけいつも食している平凡な、彼らが食べている者よりは一段劣るものであった。
王家の者とエメはまるでメルをいないもののように扱い、自分たちの食事に舌鼓を打ちながら、時々ちらちら彼女の方を見てはほくそ笑んでいた。
「失礼します!」
メインディッシュの途中で突然、王太子ベネットが入ってきた。
「なんですか、突然!」
「ベネット、不作法だぞ!」
王妃と国王が口々に入ってきた王太子ベネットをとがめた。
「無作法、これは異なことを? 我が妻をテーブルの端に座らせて一段劣るメニューの食事を提供し、まるで使用人のような扱いをしている。これは明らかに礼を失しているのではないですか?」
「しょ…、食材が足りなかったのだ……。急きょメルの妹もディナーに参加することになってな……。メルはほら、姉だからいつも一つしかない場合は妹のエメに譲っていたと父親の侯爵からも聞いておったので、こういう次第に……」
ベネット王太子の質問に国王がしどろもどろになりながら答えた。
「急きょ、と、おっしゃる割には私がやってきたとき、エメはすでに着席して前菜や食前酒も他の方と同じように配ぜんされていました。やってきた私に王妃様は……」
メルは国王の言うことを否定した。
「まあまあ、王妃殿下ときたら、最初から王太子殿下を仲間外れにしてさらし者にする目的で呼びつけたというわけでしょうかね?」
ひときわ大きな声でベネットの後ろに控えていたばあやが大きな声で無邪気に感想を述べた。
「仲間外れだなんて人聞きの悪い!」
ばあやの声に王妃はきっと反論する、そして、
「どういうこと? 聞いていた話とはずいぶん違うじゃないの? 妹のエメに譲るって話にしたらあの子は何も言わないんじゃなかったの?」
隣に座っていたクレールに耳打ちした。
「そんなこと、僕に言われたって、エメが……」
「聞こえてますよ、母上、クレール」
ベネットが母と弟をにらみつけた。
侍従に案内され部屋に足を踏み入れると、
「あら、来たの?」
と、王妃が冷淡な言葉をかけた。
その部屋には王家の人々となぜかエメもいた。
しかし、夫である王太子ベネットはいない。
「そこに席を作ってあげなさい」
王妃の指令でメルの席が長テーブルの入り口に一番近いところに作られた。
部屋にいる者たちにはすでに食前酒と前菜が給されている。
メルに急きょ用意されたものは彼らのものより質素で見た目も劣るものであった。
「このグランシャーモンのカナッペとても美味しいですわね、クレール様」
「そうだろう、このルオマールも試してごらんよ」
メルの扱われ方をよそ眼に、彼らはどうやら侍従の言っていたアクタラッサの献上品である魚介類を楽しんでいた。
いったいどういうつもりで自分を呼んだのか、と、メルはいぶかった。
その後、スープ、メインディッシュと進んでいっても、メルの料理だけいつも食している平凡な、彼らが食べている者よりは一段劣るものであった。
王家の者とエメはまるでメルをいないもののように扱い、自分たちの食事に舌鼓を打ちながら、時々ちらちら彼女の方を見てはほくそ笑んでいた。
「失礼します!」
メインディッシュの途中で突然、王太子ベネットが入ってきた。
「なんですか、突然!」
「ベネット、不作法だぞ!」
王妃と国王が口々に入ってきた王太子ベネットをとがめた。
「無作法、これは異なことを? 我が妻をテーブルの端に座らせて一段劣るメニューの食事を提供し、まるで使用人のような扱いをしている。これは明らかに礼を失しているのではないですか?」
「しょ…、食材が足りなかったのだ……。急きょメルの妹もディナーに参加することになってな……。メルはほら、姉だからいつも一つしかない場合は妹のエメに譲っていたと父親の侯爵からも聞いておったので、こういう次第に……」
ベネット王太子の質問に国王がしどろもどろになりながら答えた。
「急きょ、と、おっしゃる割には私がやってきたとき、エメはすでに着席して前菜や食前酒も他の方と同じように配ぜんされていました。やってきた私に王妃様は……」
メルは国王の言うことを否定した。
「まあまあ、王妃殿下ときたら、最初から王太子殿下を仲間外れにしてさらし者にする目的で呼びつけたというわけでしょうかね?」
ひときわ大きな声でベネットの後ろに控えていたばあやが大きな声で無邪気に感想を述べた。
「仲間外れだなんて人聞きの悪い!」
ばあやの声に王妃はきっと反論する、そして、
「どういうこと? 聞いていた話とはずいぶん違うじゃないの? 妹のエメに譲るって話にしたらあの子は何も言わないんじゃなかったの?」
隣に座っていたクレールに耳打ちした。
「そんなこと、僕に言われたって、エメが……」
「聞こえてますよ、母上、クレール」
ベネットが母と弟をにらみつけた。
13
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
さよなら聖女様
やなぎ怜
ファンタジー
聖女さまは「かわいそうな死にかた」をしたので神様から「転生特典」を貰ったらしい。真偽のほどは定かではないものの、事実として聖女さまはだれからも愛される存在。私の幼馴染も、義弟も――婚約者も、みんな聖女さまを愛している。けれども私はどうしても聖女さまを愛せない。そんなわたしの本音を見透かしているのか、聖女さまは私にはとても冷淡だ。でもそんな聖女さまの態度をみんなは当たり前のものとして受け入れている。……ただひとり、聖騎士さまを除いて。
※あっさり展開し、さくっと終わります。
※他投稿サイトにも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる