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第7章 回帰前3(リジェンナ処刑まで)
第49話 会議は荒れる
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その日の午後、国王、王太子、各大臣、侯爵位以上の高位貴族の当主、さらに事件の関係者と世界魔道協会会長。
そうそうたる面々がユーディット国王宮の一室に集まった。
本日の会議は上座も下座もない円卓に皆が腰をかけ行われる。
「ゴホンッ! 僭越ながら会議の進行役を任されたタロンティーレじゃ。今日の会議は魔道具を通じて希望する国の大使館や報道機関にも映像を配信することをユーディット国王に許可していただいた」
世界魔道協会会長が折り目正しく最初の挨拶を述べる。
ほとんどの出席者は国王があらかじめ決めている決断を推測し、それに従えばいいと考えてるが、特に強い感情をもってこの会議に挑んでいる者も数名いる。
セシルやリアムへの王太子らの仕打ちに、強い怒りを持つ友人のオリビアや元侍女のアンジュ。
逆にリジェンナへの処罰の可能性に怒りを示しているダンゼル。
アンジュはセシルの父であるマールベロー公爵の横に、オリビアは今日は単独で魔道協会会長のすぐ横に、ダンゼルも父であるブレイズ騎士団長の横に着席していた。
「まずは、今回の件について王太子殿下の見解をうかがいたい。特に心身ともに深い傷を負ったセシル・マールベローや命を落としたリアム・ジェラルディに言いたいことはありませぬか? この場には彼らの身内の者も出席しておられる、その方たちに対しておっしゃっていただきたい」
いきなり発言を求められて王太子はうろたえた。
先ほどから、オリビアやマールベロー公爵の隣にいる女の鋭い視線は何となく感じていた。しかし、卒業パーティの件についてこの場で意見を求められるなど、まるで公開処刑ではないか、と、王太子は思った。
「なぜ、私がそのようなことを……。今回の会議とは趣旨が違う!」
答えに窮した王太子が反論した。
「いやいや、卒業パーティでの蛮行こそすべての始まりであり、王太子夫妻の邪悪さを証明するものなのですぞ。その事件のせいで命を落としたものまでいる。令嬢の冤罪が明らかになった今、過去の自分たちの蛮行に対していかにお考えなのかを聞くことの、どこが趣旨に反することなのでしょうな?」
タロンティーレは反論した。
「この要求に抗議する! 進行役はユーディットの王太子をさらし者にしようという魂胆であろう。父上! 皆さま! やはりこの者はわが国の評判を下げ弱体化を狙って……」
「控えよ、ダンゼル!」
ダンゼル・ブレイズが割って入り、それを父のブレイズ卿が大声でいさめた。
「しかし父上! これではまるでつるし上げではありませぬか! 一国の王太子に対してこのような……」
「これは異なことを? 卒業パーティという晴れの舞台において無実の令嬢をやってもいない罪で寄ってたかってつるし上げた挙句、裁判もなしに地下牢に連行したのはどこのどなたらであったですかな?」
自分たちの行いは棚に上げ、被害者気取りで文句を言うダンゼルやだんまりになる王太子に対し、タロンティーレはきつい皮肉を浴びせる。
タロンティーレの言葉は続く。
「それに比べるとわしはちゃんと事実に踏まえて、あなた方自身がしでかしたことに対する見解を求めてますぞ。たった一人の淑女を大の男ら十人余りが取り囲んで責め立てるような醜行も致しておりませぬ。ああ、たった一人ではなく、彼女を護ろうとした騎士もいましたが、その者とてそなたによって命を奪われたのでしたな、ダンゼル・ブレイズ殿」
ダンゼルは言葉につまった。
会議の場に沈黙が広がる代わりに、魔道具から王太子らを嘲笑するような声がいくつか聞こえてきた。
『あれが未来の国王と側近とはな……』
『終わってるな、ユーディット国……』
容赦なく聞こえてくる他国や報道機関からの批評。
ぼんやりと抱いていた未来の主君に対する不安をこのような形ではっきり示され、大臣たちも動揺する。
「答えていただけますかな、王太子殿下」
重苦しい空気をものともせず、静かな口調でタロンティーレは再び王太子に発言を促した。
「王太子もよくよく反省はしておる。若さゆえの暴走、つまり、思い込みからセシル嬢には本当に申し訳ないことをしたと、後悔はしきりじゃ、なあ、王太子よ」
「私は王太子殿下に聞いておるのですぞ、国王陛下!」
答えに窮した王太子の代わりに答えた父の国王にタロンティーレは厳しく言い放った。
「その……、セシル嬢や護衛の騎士には、申し訳ないことを……」
小声でしぶしぶ王太子は謝罪の弁を述べる。
「はあっ! 聞こえませぬぞ! この国の王太子殿下は発言なさる時、このようにぼそぼそとつぶやくように話すのですかな?」
いやいや謝っているような態度をタロンティーレは許さなかった。
『とても反省しているように見えぬな……』
『裁判すら行わず、旧時代の野蛮な施設に有無を言わさず収監しておいて、謝罪も反省もなくあの態度とはね』
『そんな腐った性根だから魅了の魔女と気があったのでしょう』
再び魔道具から聞こえてくる各国の声。
「亡くなったリアム・ジェラルディの身内の者ですが、確かに聞こえませぬので、もっと大きな声で言ってくださいますか? その言は、被害を受けた者の身内に向かっておっしゃってらっしゃるのでしょう」
アンジュ・ジェラルディが王太子を見据えて声を上げた。
そうそうたる面々がユーディット国王宮の一室に集まった。
本日の会議は上座も下座もない円卓に皆が腰をかけ行われる。
「ゴホンッ! 僭越ながら会議の進行役を任されたタロンティーレじゃ。今日の会議は魔道具を通じて希望する国の大使館や報道機関にも映像を配信することをユーディット国王に許可していただいた」
世界魔道協会会長が折り目正しく最初の挨拶を述べる。
ほとんどの出席者は国王があらかじめ決めている決断を推測し、それに従えばいいと考えてるが、特に強い感情をもってこの会議に挑んでいる者も数名いる。
セシルやリアムへの王太子らの仕打ちに、強い怒りを持つ友人のオリビアや元侍女のアンジュ。
逆にリジェンナへの処罰の可能性に怒りを示しているダンゼル。
アンジュはセシルの父であるマールベロー公爵の横に、オリビアは今日は単独で魔道協会会長のすぐ横に、ダンゼルも父であるブレイズ騎士団長の横に着席していた。
「まずは、今回の件について王太子殿下の見解をうかがいたい。特に心身ともに深い傷を負ったセシル・マールベローや命を落としたリアム・ジェラルディに言いたいことはありませぬか? この場には彼らの身内の者も出席しておられる、その方たちに対しておっしゃっていただきたい」
いきなり発言を求められて王太子はうろたえた。
先ほどから、オリビアやマールベロー公爵の隣にいる女の鋭い視線は何となく感じていた。しかし、卒業パーティの件についてこの場で意見を求められるなど、まるで公開処刑ではないか、と、王太子は思った。
「なぜ、私がそのようなことを……。今回の会議とは趣旨が違う!」
答えに窮した王太子が反論した。
「いやいや、卒業パーティでの蛮行こそすべての始まりであり、王太子夫妻の邪悪さを証明するものなのですぞ。その事件のせいで命を落としたものまでいる。令嬢の冤罪が明らかになった今、過去の自分たちの蛮行に対していかにお考えなのかを聞くことの、どこが趣旨に反することなのでしょうな?」
タロンティーレは反論した。
「この要求に抗議する! 進行役はユーディットの王太子をさらし者にしようという魂胆であろう。父上! 皆さま! やはりこの者はわが国の評判を下げ弱体化を狙って……」
「控えよ、ダンゼル!」
ダンゼル・ブレイズが割って入り、それを父のブレイズ卿が大声でいさめた。
「しかし父上! これではまるでつるし上げではありませぬか! 一国の王太子に対してこのような……」
「これは異なことを? 卒業パーティという晴れの舞台において無実の令嬢をやってもいない罪で寄ってたかってつるし上げた挙句、裁判もなしに地下牢に連行したのはどこのどなたらであったですかな?」
自分たちの行いは棚に上げ、被害者気取りで文句を言うダンゼルやだんまりになる王太子に対し、タロンティーレはきつい皮肉を浴びせる。
タロンティーレの言葉は続く。
「それに比べるとわしはちゃんと事実に踏まえて、あなた方自身がしでかしたことに対する見解を求めてますぞ。たった一人の淑女を大の男ら十人余りが取り囲んで責め立てるような醜行も致しておりませぬ。ああ、たった一人ではなく、彼女を護ろうとした騎士もいましたが、その者とてそなたによって命を奪われたのでしたな、ダンゼル・ブレイズ殿」
ダンゼルは言葉につまった。
会議の場に沈黙が広がる代わりに、魔道具から王太子らを嘲笑するような声がいくつか聞こえてきた。
『あれが未来の国王と側近とはな……』
『終わってるな、ユーディット国……』
容赦なく聞こえてくる他国や報道機関からの批評。
ぼんやりと抱いていた未来の主君に対する不安をこのような形ではっきり示され、大臣たちも動揺する。
「答えていただけますかな、王太子殿下」
重苦しい空気をものともせず、静かな口調でタロンティーレは再び王太子に発言を促した。
「王太子もよくよく反省はしておる。若さゆえの暴走、つまり、思い込みからセシル嬢には本当に申し訳ないことをしたと、後悔はしきりじゃ、なあ、王太子よ」
「私は王太子殿下に聞いておるのですぞ、国王陛下!」
答えに窮した王太子の代わりに答えた父の国王にタロンティーレは厳しく言い放った。
「その……、セシル嬢や護衛の騎士には、申し訳ないことを……」
小声でしぶしぶ王太子は謝罪の弁を述べる。
「はあっ! 聞こえませぬぞ! この国の王太子殿下は発言なさる時、このようにぼそぼそとつぶやくように話すのですかな?」
いやいや謝っているような態度をタロンティーレは許さなかった。
『とても反省しているように見えぬな……』
『裁判すら行わず、旧時代の野蛮な施設に有無を言わさず収監しておいて、謝罪も反省もなくあの態度とはね』
『そんな腐った性根だから魅了の魔女と気があったのでしょう』
再び魔道具から聞こえてくる各国の声。
「亡くなったリアム・ジェラルディの身内の者ですが、確かに聞こえませぬので、もっと大きな声で言ってくださいますか? その言は、被害を受けた者の身内に向かっておっしゃってらっしゃるのでしょう」
アンジュ・ジェラルディが王太子を見据えて声を上げた。
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