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第5章 ノア・ウィズダム
第28話 大公家とウィズダム家の内部事情
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ウィズダム家のばあやへの伝言係として公爵邸を出たアンジュが、そのばあやを伴って帰ってきたのは夕刻であった。
帰路の馬車の中でもウィズダム家の内部事情をばあやはいろいろ語ってくれた。
「お嬢様はもともと勉学を治めて、どこかの省庁の文官か、あるいは王宮の女官として王都で働くことを希望されていました。しかし大公殿下のお子をお産みになったことで、その道に進むことはかなわなくなりました」
婚約者のいる大公、当時は王弟と、結婚をせず子を産んだいわくつきの女を雇いたがるところなど、確かになかっただろう。
「それを決めたのはペトラさんなんだからしかたがないにしても、父親である大公はどう責任を取ったのですかね?」
「それですよ! 大公が渡す養育費は雀の涙。それは母のペトラ様が亡くなってからも変わりませんでした。王家からの支援金の方が多かったほどなんです」
そんなけち臭い男には見えなかったが、と、アンジュは首を傾げた。
しいて言えば正妻に対する遠慮かな?
でも、正妻(婚約者)を裏切ったのは大公自身なのに、そのツケを子供が払わされるのもなんだかな?
他にも以下のことがアンジュは把握できた。
ウィズダム子爵家の人々は普段は領地に滞在していた。
そこの一人娘であったノアの母ペトラは学園に通うため、ばあやとともに王都のミリュタイユ通りの家を間借りし、そして現在も、息子のノアとばあやが同じ家に住んでいる。
ペトラはノアが七歳の時に亡くなり、さらに後を追うように数年後、領地にいたペトラの両親、つまりノアの祖父母も亡くなり、わずか十歳でノアはウィズダム家の子爵位をついだ。
幸いにもウィズダム領は大公領に隣接していたため、父親の大公が人をやって現在は領内の管理を任せており、ノアはまだ一度も領地に行ったことがない。
現在のウィズダム家の家計は、領内で得られる収入と王家の血を引く者に与えられる支援金で何とか賄っているとのこと。
以上のアンジュがばあやから教えてもらったウィズダム家の内部事情は、ヴォルターにも一応報告しておいた。
◇ ◇ ◇
「う~ん、大公家の正妻のマイア様のご実家のフォトヴォラン家は、王国で一、二を争うほどの騎士団を有し、大きな声では言えないが、非合法な行為、つまり殺しなどを頼める組織との太いパイプもあるとのうわさがありますからね」
「そんな怖い家なのですか?」
「はは、高位貴族なら一つや二つ、そんな噂はついてまわりますよ。大公殿下の御子の中ではノア様が一番年長のようだし、あまり厚遇しすぎると逆にその『怖い家』ににらまれて警戒される危険性がある。正妻の子を差し置いて大公がノア様を跡継ぎにしようとしていると彼らに思われたら、母子ともども消される危険性もあったのでしょうな」
「……」
「いや、あくまで可能性ですよ。王家の不興を買ってまで、自分の息子を差し出すなんて、大公側にも何らかの思惑があってのことだとは推測してましたが……」
「思惑ですか?」
「察するに、ノア様をマールベロー家に婿入りするかもしれない立場にしておいたら、正妻側からの警戒は薄まります。相手に恩を売っておいて、自分もちゃっかり利益を得る、やはりしたたかな御仁ですね、デュシオン大公は」
「セシル様の今後を平穏におさめるだけでも悩ましいのに、大公家内部の問題まで押し付けられても……」
「高位貴族同士の結婚なんてそんなものですよ」
苦笑いしながらヴォルターはアンジュをなだめた。
ばあやはノアのいる客間の隣の使用人の控室に滞在してもらうことにした。
今は荷物を置いてノアのそばについている。
「コペトンさんの見立てでは、もともと虚弱な体質の上、古い医学知識と怪しげな民間療法を勧める藪医者がノア様の体を見ていたから、あまり芳しくない状況です」
「そんなにひどいのですか?」
「ええ、単に風邪をこじらせただけではなく、長年のそれが蓄積されているようですね。平民向けの医者などは大概そんなものですが、ノア様にもしものことがあれば、大公殿下とのつながりにもひびが入るし、彼の健康状態の改善はマールベロー家にとっても急務ですな」
「具体的にどのように……?」
「考えがあるのですが、セシル様とも相談をしなければなりません。アンジュさんは、侍女長としての仕事や夕食を終えたら、一度ノア様たちの様子を見に行っていただけますか? その報告などは明日でもよいので」
「かしこまりました」
◇ ◇ ◇
夕食と残った仕事を片付けてアンジュはノアの部屋に向かった。
ノアは起き上がって枕に体をもたれさせ本を読んでいた。
ばあやの姿はなかった。
「起きていて大丈夫なのですか?」
アンジュは尋ねた。
「ああ、倒れてからずっと眠っていたから、この時間になって逆に目がさえてね。ばあやが持ってきてくれた荷物の中に読みかけの本があったので、眠くなるまで読もうかなと……」
「あまり根をつめるとまた具合が悪くなりますよ」
「公爵家の方々には迷惑をかけたからね。たしかにちゃんと養生しないとだめだな」
「迷惑だなんて、むしろ具合が悪いのに野外で過ごさせてしまって……」
「僕が言わなかったんだからしかたがないさ、ゴホッ!」
ノアがせき込み始めた。
「これを飲んでください、クウィンスのはちみつ漬けです。お湯で解いて飲むと喉が楽になりますよ」
アンジュは小瓶に入ったはちみつ漬けの小さな果実をいくつか取り出して、カップに入れお湯を注ぐ。
そして、それをノアに手渡した。
帰路の馬車の中でもウィズダム家の内部事情をばあやはいろいろ語ってくれた。
「お嬢様はもともと勉学を治めて、どこかの省庁の文官か、あるいは王宮の女官として王都で働くことを希望されていました。しかし大公殿下のお子をお産みになったことで、その道に進むことはかなわなくなりました」
婚約者のいる大公、当時は王弟と、結婚をせず子を産んだいわくつきの女を雇いたがるところなど、確かになかっただろう。
「それを決めたのはペトラさんなんだからしかたがないにしても、父親である大公はどう責任を取ったのですかね?」
「それですよ! 大公が渡す養育費は雀の涙。それは母のペトラ様が亡くなってからも変わりませんでした。王家からの支援金の方が多かったほどなんです」
そんなけち臭い男には見えなかったが、と、アンジュは首を傾げた。
しいて言えば正妻に対する遠慮かな?
でも、正妻(婚約者)を裏切ったのは大公自身なのに、そのツケを子供が払わされるのもなんだかな?
他にも以下のことがアンジュは把握できた。
ウィズダム子爵家の人々は普段は領地に滞在していた。
そこの一人娘であったノアの母ペトラは学園に通うため、ばあやとともに王都のミリュタイユ通りの家を間借りし、そして現在も、息子のノアとばあやが同じ家に住んでいる。
ペトラはノアが七歳の時に亡くなり、さらに後を追うように数年後、領地にいたペトラの両親、つまりノアの祖父母も亡くなり、わずか十歳でノアはウィズダム家の子爵位をついだ。
幸いにもウィズダム領は大公領に隣接していたため、父親の大公が人をやって現在は領内の管理を任せており、ノアはまだ一度も領地に行ったことがない。
現在のウィズダム家の家計は、領内で得られる収入と王家の血を引く者に与えられる支援金で何とか賄っているとのこと。
以上のアンジュがばあやから教えてもらったウィズダム家の内部事情は、ヴォルターにも一応報告しておいた。
◇ ◇ ◇
「う~ん、大公家の正妻のマイア様のご実家のフォトヴォラン家は、王国で一、二を争うほどの騎士団を有し、大きな声では言えないが、非合法な行為、つまり殺しなどを頼める組織との太いパイプもあるとのうわさがありますからね」
「そんな怖い家なのですか?」
「はは、高位貴族なら一つや二つ、そんな噂はついてまわりますよ。大公殿下の御子の中ではノア様が一番年長のようだし、あまり厚遇しすぎると逆にその『怖い家』ににらまれて警戒される危険性がある。正妻の子を差し置いて大公がノア様を跡継ぎにしようとしていると彼らに思われたら、母子ともども消される危険性もあったのでしょうな」
「……」
「いや、あくまで可能性ですよ。王家の不興を買ってまで、自分の息子を差し出すなんて、大公側にも何らかの思惑があってのことだとは推測してましたが……」
「思惑ですか?」
「察するに、ノア様をマールベロー家に婿入りするかもしれない立場にしておいたら、正妻側からの警戒は薄まります。相手に恩を売っておいて、自分もちゃっかり利益を得る、やはりしたたかな御仁ですね、デュシオン大公は」
「セシル様の今後を平穏におさめるだけでも悩ましいのに、大公家内部の問題まで押し付けられても……」
「高位貴族同士の結婚なんてそんなものですよ」
苦笑いしながらヴォルターはアンジュをなだめた。
ばあやはノアのいる客間の隣の使用人の控室に滞在してもらうことにした。
今は荷物を置いてノアのそばについている。
「コペトンさんの見立てでは、もともと虚弱な体質の上、古い医学知識と怪しげな民間療法を勧める藪医者がノア様の体を見ていたから、あまり芳しくない状況です」
「そんなにひどいのですか?」
「ええ、単に風邪をこじらせただけではなく、長年のそれが蓄積されているようですね。平民向けの医者などは大概そんなものですが、ノア様にもしものことがあれば、大公殿下とのつながりにもひびが入るし、彼の健康状態の改善はマールベロー家にとっても急務ですな」
「具体的にどのように……?」
「考えがあるのですが、セシル様とも相談をしなければなりません。アンジュさんは、侍女長としての仕事や夕食を終えたら、一度ノア様たちの様子を見に行っていただけますか? その報告などは明日でもよいので」
「かしこまりました」
◇ ◇ ◇
夕食と残った仕事を片付けてアンジュはノアの部屋に向かった。
ノアは起き上がって枕に体をもたれさせ本を読んでいた。
ばあやの姿はなかった。
「起きていて大丈夫なのですか?」
アンジュは尋ねた。
「ああ、倒れてからずっと眠っていたから、この時間になって逆に目がさえてね。ばあやが持ってきてくれた荷物の中に読みかけの本があったので、眠くなるまで読もうかなと……」
「あまり根をつめるとまた具合が悪くなりますよ」
「公爵家の方々には迷惑をかけたからね。たしかにちゃんと養生しないとだめだな」
「迷惑だなんて、むしろ具合が悪いのに野外で過ごさせてしまって……」
「僕が言わなかったんだからしかたがないさ、ゴホッ!」
ノアがせき込み始めた。
「これを飲んでください、クウィンスのはちみつ漬けです。お湯で解いて飲むと喉が楽になりますよ」
アンジュは小瓶に入ったはちみつ漬けの小さな果実をいくつか取り出して、カップに入れお湯を注ぐ。
そして、それをノアに手渡した。
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