ペニスマン

終焉の愛終(しゅうえんのあいうぉあ)

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18.遡る体

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 休日の土曜日、定番の三人で喫茶店『古時計』に向かう途中であった。
 駅近辺の商店街で人の悲鳴が三人の耳へ届いたのだ。
 
「今の聞こえた?」
「あぁ、何かあったんだ。事件かもしれない」
「まゆみん、どうする?」
「行く。行って、何があったか確かめないと」
「事件だったら、巻き込まれる可能性があるぞ。巻き込まれてもいいのか、有式」
「確認するだけだよ」

 真弓は真剣な顔で、赤塚に答えた。
 事件が発生したのならば、赤い巨人として機能する真弓が一人で行くべきだ。しかし、一人で行くのは、赤い巨人=真弓だと二人に露見してしまうリスクがあった。
 最悪の場合、何とか二人を振り払って、赤い巨人に変身し事件を解決するべく動かなければならない。だが、それはあくまでも最終的手段だ。
 今はとにかく、

「行って確かめよう、いいよね?」
「一応は確認したが、最初からそのつもりだ。おれの親父には、もうラインで連絡してる」
「良かった、じゃあ二人ともいくよ」
 
 悲鳴が聞こえた場所は幸い真弓たちのいた場所と遠くなかった。
 三人が現場に行くと、子供が沢山座り込んで泣いていた。
 子供。それも、二歳や三歳レベル。

「子供がいっぱいいる……?」
「まゆみん、可愛い子たちが沢山いるよ! キャー可愛い! でも、泣いてるねみんな」
「こんな、子供がいっぱいいるのに、大人が周りに一人もいないのは異常じゃないか?」
「確かに、大人が見当たらないのはおかしい」

 赤塚が気づいた点は、多い子供の数に対して保護者である親が誰一人確認できなかったことだ。
 それに、子供たちの着ている服がその小さい身体よりも大きく、ぶかぶかで余っている。よくみれば、その服のどれもが大人が着る服だと分かった。

「どうなってるんだ、これは」
「有式! 男だ! そいつが何かしたんだ!」
「男……子供の中に、一人だけ大人が」

 スーツ姿のよくいるサラリーマンといった容姿で、その顔つきは疲れ果てていた。
 目の下に隈ができ、その目に光はない。
 明らかに様子がおかしい。
 子供の中に一人、男の大人がいると言うだけで怪しいのだ。
 この男が何かした可能性が高いと判断した真弓は、赤い巨人に変身にするか一瞬逡巡する。
 まさか、──この男も、超常現象を。そうであるなら、一刻も早く赤い巨人になり、二次被害を防がないと。けど、今は二人が近くに……どうする、僕……!

「二人とも、今は逃げ……古屋敷近づくな!」
「あなたが子供たちを泣かしたの? もしそうなら、ちゃんと子供泣かした責任取って──キャ!?」

 古屋敷がサラリーマンの男に近づいて、説教をしようとした矢先──男は古屋敷に逆に近づいてその体に手で触れた。すると、古屋敷の体がみるみるうちに小さくなっていき、子供になってしまった。

「ふ、古屋敷!? 子供の姿に……!?」
「有式、どうする!?」
「とにかく、僕らだけでも逃げないと!」

 一度撤退し、状況の再編を取り繕うとした真弓と赤塚だったが、男の目がその二人に向く。
 それだけで分かった。ターゲットされた。古屋敷がされたように、二人も子供にされてしまうのだ。

「──お前らも、他のみんなみたいに、まだ世間が分からない幼い子供になるんだ。そうすれば、誰も傷つかない、幸せになれる」
「何を言って……!? あんな小さい子供になったって、僕は幸せじゃない! それに僕らはまだ全然若いんだよ!」
「そうだ、そんなの求めてない。おれが求めてるのは、アメコミ漫画の話が更新されることだ!」
「赤塚! 男に触れられたらダメだ!」
「もう遅い」
「赤塚!」

 真弓の警告空しく、男は赤塚に迫り、その体に手を接触させる。
 たちまち、収縮していく赤塚の体。一瞬きすれば、そこには子供姿の赤塚がいた。

「すーぱーまん、かっこいい!」
「赤塚まで……子供に……クソ、こうなったら僕は──」
「最後はお前だ、女」
「僕は女じゃない、僕は男で、それにヒーローだ!」

 真弓は背中に回した手を前に出す。
 その手に握られていたのは、アダルト雑誌。
 女性の裸体が写っている本のページを大雑把に開き、てきとうなページに目を留める。
 その目が、女性の裸体を捉え、赤く変色しだし、その赤さは体全体にしみわたって、白い蒸気で体が隠れていく。
 膨張した白い煙が、少し散った時、赤い筋肉質の肌が露見した。

「グゥ……ふう……、もうこれ以上、被害は増やさせない」
「お、お前は!? 何者だ!」
「──僕にも分からないんだよ、お前が教えてくれるのか? ガぁアーーーーーッ!」
「ううわあわああ!?」

 男の前で一度吠えて威嚇して見せた赤い巨人は、一発殴って気絶させようと腕を振るった。それを申し訳程度の手でガードしようとした男。
 赤い巨人の拳と、男の手が接触する瞬間──波のようなものが発生する。
 波が起こったことに気づいた真弓は、だがしかし、そのままの勢いを乗せて男を殴り飛ばす。
 男は壁に身体をぶつけて気絶。
 赤い巨人が、沢山の子供が泣き叫ぶ中、一人立ち残された。

「……ち、力が抜けていく……? 暴走しそうになる性欲も、消えていく……? 何が起きて……」

 男を殴り飛ばした数秒後、遅れて真弓の体に変化が起きていた。
 赤い巨人の体が一瞬のうちに収縮し、元の真弓に戻ってしまったのだ。
 まぁ、元に戻るには大変なので、手間が省けた分有難くはあるのだが、何か嫌な予感を感じざるを得ない。

「力を使い過ぎた……いや、それにしては力の消耗が激しすぎる。まさか、あの男の力が、僕に作用したとでもいうのか? けどそれなら、どうして僕は子供になっていないんだ」

 赤い巨人の力が不自然に戻ったのは、気になったが、さしあたっては周りにいる子供の保護、ついでに同じく子供になってしまった赤塚と古屋敷をどうするかしないといけない。

「なあ、古屋敷、赤塚、意識はないのか?」
「まゆみん、しゅき!」
「すーぱーまんすき!」
「二人とも……でも、あんまり変わってないの、かな?」

 思考は見た目同様幼くなっているようだ。しかし、その根底の性格までは変化していない。
 やはり、二歳や三歳の体に、まるで時間が遡って戻ってしまったのだろうか。
 男は気絶している。
 けれど、依然もとに戻らない二人。
 
「どうすればいいんだ……とりあえず、僕の家でなんとかするしかない」

 気絶した男は警察に連絡し、周りの子供達も同じく警察に対処してもらうことにした。
 赤塚と古屋敷を手で繋いで歩いているさなか、真弓は気絶した男に振り返る。

「小さい子供になれば、確かに考えることも悩むこともなくなる。でも、そうじゃない。僕は必死な思いで、今を成長し続けているんだ」

 例え、成就したい恋があり、その恋が今、順調ではなく、挫折ばかりのものであったとしても。
 その恋をしたことを、小さくなって忘れたいとは思わない。
 また歩み始めた真弓は思う、自分ももうそろそろ踏み出さなければいけないと。
 ただ好きでいることに惰性で、結果も、選択も取らないでい続けているのは悪いこと?
 ──分かってるんだ、そんなこと。雨宮さんが蓮杖に告白したように、いつか僕も勇気を振り絞って……

「できたらいいんだけどな……」
「どうちたの、まゆみん? かなしい?」
「うん、平気。さぁ、行こう」
「すーぱーまんはとんでいけるんだ!」
「そうだね、スーパーマンは飛んでいける。でも、僕たちは残念だけど飛べない。だから、一歩ずつ歩くしかないんだよ」

 そんなことを言っても、今の子供状態になった二人はよくわからないといった感じの表情をした。
 
===

 家のリビングで二人の子供が暴れ回っていた。
 古屋敷はソファを何度も跳ねてはしゃいでいるし、赤塚のほうはテレビで録画していたスパイダーマンの映画をずっと眺めて興奮している。

「に、兄さんこれ、何なの……?」
「剣太……、ちょっと事情があってね……」

 普段部屋で引き篭もっている剣太でさえも、一階の煩い声や物音が気になってリビングにやってきて呆れている。
 真弓は剣太に今日起きたことを説明した。
 男に触れられた二人が幼少化してしまったこと。
 その解除方法が判明していないこと。
 二人を家に帰すわけにはいかなかったから、真弓の家に連れてきたこと。

「なるほどね、大体の事情は分かった。だけど、兄さんうちで預かるっていったって、世話できないじゃん!」
「世話ぐらい……僕にもできるよ。それに剣太もいるだろ?」
「まず兄さん、料理できるの?」
「……レシピを見れば、できるよ、たぶん」
「それって要するに、料理したことないってこと?」
「その通りです……でも、なんとかなるって」
「言っとくけど、俺は料理できないから」
「は? お前も手伝えよ」
「無理ったら無理! ひきこもりにそんなことできるわけないでしょ」
「剣太の役立たず」
「兄さんだって怪しい」
「「は??」」

 早速兄弟喧嘩を始めてしまい、雲行きが怪しくなってきた。
 そんな中、時刻は昼頃になり、ついにあの言葉が出されてしまうのだ。

「まゆみん、おなかすいた!」
「そうだよな、もう昼か……待ってて、ご飯作ってくるから。赤塚も食べるよね?」
「たべる、えいがみたら」
「まゆみん、お腹すいたー! お腹すいたー!」
「分かった分かった、今お兄さんが作るよ」

 幅広いキッチンで「さて、何の料理を作ったらいいのか」と、真弓は一番に悩みだす。

「子供が好きそうな、それでいて好き嫌いがあまりなさそうな……そう、オムレツとか、チャーハンとか! それでいこう!」

 フライパンを出し、卵の殻を割ろうとして強く叩き過ぎて結果卵を割ってこぼしてしまう。
 
「うわ。最悪……床にこぼした」

 二度目の再チャレンジはフライパンに卵の中身を乗せることに成功して、床にこぼしていない上々のスタートであった。

「よし! 後はてきとうに火をつけて……オムレツになるまで焼く! ……って、何だこの強い火は!?」

 フライパンから強い火が吹き荒れ、天井を軽く焦がす。
 様子を見に来た剣太が走って駆けつけて、フライパンを水道で素早く洗って流し消す。

「何してるんだよ、火事起こす気か! 兄さん」
「ご、ごめん……こんなに火が強く燃えるとは」
「もしかして油大量につけてない!?」
「うん、つけたけど」
「ダメだよ、それじゃ燃えるに決まってるじゃん! はあ……まさか、兄さんそのレベルなの……」
「そのレベル……って、油はつけすぎないのは分かったから、次は大丈夫だよ」
「そ、そう? ならいいんだけど」

 三度目の正直。
 結果、オムレツのような、黒い炭の物体。

「兄さん……この黒いのなに……?」
「オムレツ」
「絶対にオムレツではない、ただの焦げた炭だよこれ! これをオムレツだと定義するならば、オムレツ作った人に申し訳が立たないよ!」
「そんなこというなら剣太が作ってよ!」
「俺はもっとひどい」
「ダメだ……僕たちは、料理を作れないんだ……」

 キッチンからリビングに真弓が戻ってくると、ご飯がようやく出されるのかと目をキラキラ輝かせて古屋敷が待っていた。

「まゆみん、ごはんはー?」
「それが……こんなのだけど、食べる?」
「なにこのくろいのー!? イヤー! お腹すいたー! うわーん! おなかへったー!」

 
 黒く焦げたオムレツを見せれば、挙句泣き出してしまう古屋敷。映画にずっと魅了されている赤塚。
 
「いたた、叩かないで古屋敷」
「ばかばかばか! まゆみんのばか! はやくごはんだして!」
「古屋敷本当はそんなに変わってないんじゃ!? お前、ホントは気付いていて演技してるんだろそうなんだろ! そうだといってくれー!」
「おい、兄さん、何とかしてくれ! 耳がキンキンしてうるさくてたまらない! 俺は部屋に戻るから! こんなガキのいるところで生活できるか! 待っててね、俺のハニ(パソコン)ー!」

 真弓は赤塚の見ているスパイダーマンを見ながら、「僕にもスパイダーマンの助けがいるよ」と嘆く。
 こうなったら彼女の力を借りるしかない。
 先日交換したラインがこうもすぐ役立つとは思わなかった。
 
「もしもし、うん、有式だけど」

 スマホに耳を当て、スピーカーから甲高い女子の声が伝わってきた。

===

「来ましたよ、有式先輩」
「来てくれてありがとう、雨宮さん」

 玄関の扉を開けて入って来たのは、私服姿の雨宮つばめであった。
 彼女は少し照れながら、真弓に案内されてリビングに着く。

「つばめん! おなかすいたー!」
「なるほど……電話では聞いていましたけど……実際に見ると、凄いですね。ホント、こんなに小さくなって、古屋敷先輩。わぁ、赤塚先輩も小さくなってる! 可愛いー」
「そうなんだよ、可愛いのは可愛いんだよ。そのうちうるさくなってくるけどね」
「うるさいだなんて、それは有式先輩がちゃんとご飯ださないからじゃないですか」
「それは……その通りですね、はい」

 彼女は私服の袖を巻くって、自信満々に言った。

「ご飯はわたしに任してください。わたし、これでも学校では自分で作ったお弁当を持ってきてるんです! 先輩、その間、二人の世話頼みますよ」
「本当にありがとう……雨宮さんがいなかったら、どうなっていたか」
「有式先輩には、借りがあるので、これぐらいは構いませんよ。それに、先輩の家に来れて、少し……嬉しいし」
「少し? なに? 聞こえなかった」
「何でもありません! それでは、キッチン借りますね!」
「うん、お願い」

 文句を言い続ける古屋敷を宥めながらしばらく待つと、雨宮がおぼんにいくつかのお皿を乗せて戻って来た。
 おぼんの上にはオムライスやチャーハン、それだけではなく、可愛らしいたこさんウインナーやにっこりマークポテトがおまけでついている。
 
「わぁ、たこさん! にこさん! すご~い!」
「さ、古屋敷先輩、どうぞ食べてください」
「赤塚先輩も、スパイダーマン顔にポテトを作ったので、食べてください」
「すげーすぱいだーまん!」

 お腹が空いていた古屋敷は言わずもがな、映画に夢中であった赤塚まで雨宮の作った料理に飛びついていた。
 ただ料理を作るだけではなく、子供を夢中にさせ楽しませる遊び要素のある本当の料理。
 そんな料理ができる雨宮に真弓は深く感心する。

「雨宮さんって、良いお嫁さんになれるよ」
「へ?」
「僕、雨宮さんと結婚したいって今思っちゃった! 本当に凄いよ、雨宮さんは」
「け、けっこん……!?」
「雨宮さんを振った蓮杖が馬鹿に見えるぐらいだよ、勿体ないことしたなあ」
「そんな……これぐらいは、誰でも練習すればできますよ」
「それでも、凄い! 僕じゃ絶対にできないもん! でも、上手い雨宮さんに教えてもらえば、僕もできるようになるかな?」
「なれますよ! もしよかったら、わたし教えますので、今度一緒に──どうですか?」
「いいの!? ありがとう! じゃあ今度教えて!」
「はい……えへへ」

 昼ごはんを食べ終わり、はしゃいでいた子供の二人は少し落ち着いた。
 再び下に降りてきた剣太を交え、真弓は根本的な問題、二人をどう戻すかについて話し合う。

「俺部屋に閉じこもって考えたんだけど、やっぱり二人を子供にさせた男が戻す方法を知っているんじゃないか?」
「そうですね、わたしも超能力を使えるんですが、一度使った力を戻せるのはわたしだけです」
「じゃあ、もう一度男に触れさせて、戻してもらえばいいってこと?」

 剣太は真弓の辿り着いた答えを聞いて首を横に振るった。

「それは分からない、発動のキーは”接触”であったとしても、解除のキーが接触だとは限らないと思うんだ。結局もう一度男に会って直接聞くほかないよ」
「でも今はあの男は警察に身柄を拘束されているはずだから……まだ高校生の身分である僕たちが行っても、警察は会わしてくれないと思う」
「ですが、会いに行くほかないのなら、会いにいくしかない。違いますか、有式先輩。二人が小さくなって可愛らしくなったのは嬉しいですけど、きっとこのままってわけにはいかないです。それに、街の人も何人か子供化されてしまっています」
「じゃあ、結論、僕たちがどうにかして男に聞き出さないといけないってわけだ。警察はおそらく、法的な処罰を下すだけで、問題の解決には動かない。僕たちがやるしかないんだ」

 その時、剣太が視線だけで、なにか伝えようとしてきた。
 その視線を受けて、真弓は首を横に振るう。
 その意味は──雨宮は赤い巨人の事を知らない。
 剣太が真弓に訴えてきたのは、こうなった以上、赤い巨人として動ける真弓単体で何とか男を連れてくるしかないのでは、ということだった。
 雨宮自体も超能力者の一人である。しかし、真弓は彼女に己の力については明かしていない。
 真弓が赤い巨人の秘密を告白しているのは、弟の剣太とマスターの二人のみだ。どちらも致し方ない事情で告白したのであり、簡単に秘密を明かしていいことではないのだ。何故なら、赤い巨人のことを話すことは、リスクを増やす。
 その点、己の力を秘匿するというのは、利己的な考え方であった。
 逆に雨宮は自分の力を簡単に真弓へ明かした。
 明かしてしまってもいいとは思う、彼女は秘密を絶対に漏らさない謎の確証があった故だ。それは彼女への信頼と言ってもいい。

「雨宮さん、僕は……赤い──」
「兄さん! 男が現れた! 今度は駅前だ! ツイッターで今流れてきた! また沢山の人が子供化してる!」
「警察が拘束したんじゃないのか!? 警察が来る前に逃げた……?」
「これ以上、被害が広がるようなら……街はまずいことになるよ、兄さん!」
「雨宮さん、僕、ちょっと買い物に!」
「有式先輩、買い物っていま商店街は! 何か、わたしに隠してるんですか……先輩、わたし、誰にも言いません、絶対に……だから、わたしには話してください、先輩、貴方も……わたしと同じ──」

 雨宮にそう言われて、リビングから出ようとしていた足が止まった。
 その一瞬で逡巡する。
 言おうか、言わないか。
 言ってもいい。
 だけれど、話せば、何かあった時に危ない目にあわすかもしれない。
 それだけは真弓にとって許せざることだ。

「──ごめん、雨宮さん、僕ただ買い物にいくだけだから」
「先輩……」
「兄さん、早く!」
「行ってくる! それまでは古屋敷と赤塚頼んだよ、雨宮さん!」
「はい、先輩……任されました」

 家の外に飛び出した真弓はエロ本を開いてそれが来るのを待つ。
 しかし、一向に変身しない体。
 普通の男子高校生として正常的に興奮するだけで、赤い巨人になる兆候がいつまでもやってこない。

「どうなって……しっかり興奮してるのに、何で──変身しない」

 それを何分も待って、ようやく気付く異常。
 赤い巨人になるのがそもそもの異常なのだが、それが当たり前となったからこその異常。
 ──赤い巨人になれなくなってしまった。

「兄さん、なんでまだそこに」
「剣太……僕の力が無くなった」

 家の外に出てきた剣太に真弓は放心したように言う。
 赤い巨人の力を失ってしまったことを。

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