11 / 24
11.黒づくめの女
しおりを挟む
「古屋敷は赤い巨人と直接出くわしたんだよな」
「うん、そうだよあかつん」
「そこまではいい。だけど、古屋敷が現れた赤い巨人と対面している時、有式はどこに行ってたんだ?」
「それはえっと……」
赤塚が真剣な顔をして、真弓に問いただす。
──古屋敷には無理な言い逃れをしてきてなんとか平気だったけど、赤塚には通用しない。どうする、どう答える僕!
事の問題は、先日課外授業の際に古屋敷が傷つきそうになった時、その場で真弓が赤い巨人に変化してしまったことだ。
古屋敷は目をつぶっていて、幸いなことに赤い巨人=真弓だとは気付かなかった。
しかし、後日古屋敷から赤塚へ、その時のことが伝わってしまったのだ。
目敏い赤塚は話の不自然さに気づき、赤い巨人がいた時刻、真弓はどこにいっていたのかと疑問に思ったのだろう。
真弓は赤塚にそう聞かれ、背中が冷や汗で濡れるのが分かった。
「それは……」
「まゆみん、なんか外にバイク乗った女の人がいるよ」
「バイクに乗った女の人?」
この機会を逃すな。
この偶然差し伸べられた救いの手に、真弓は手を伸ばす。
赤塚の質問を、違う話題で上書きするために。
「おい、有式、話はまだ途中……」
「あ、本当にいるぞ。なんだろう、あの人」
真弓は席から立ち上がって、席横にすぐある窓ガラスに顔を向けると、古屋敷の言う通り、校門に女性がバイクに乗っている。
黒いヘルメットを着けて、その顔は確認できないが、長い髪とこれまた黒いライダースーツを纏っているその体はスタイル抜群で女体として神がかっていた。
艶のある黒髪に黒いヘルメットとライダースーツ。その上、黒いバイクに乗った黒づくめの女性は自然な仕草でヘルメットを取り、頭を振るって髪を靡かせる。
美しきパーツを照らす太陽の光で輝かせて、校舎を見つめ微笑む。
「ここが、大宮高校ね。赤い巨人が現れた」
教室でそれを見ていた真弓は、その女性が自分と目が合った気がした。
「……今僕を……、いやいや、あんな美人な女性が僕なんかを見るはずがない」
「まゆみん、あたし、あの人と目が合ったよ今!」
「まあ、古屋敷も十分可愛いしな。古屋敷が目に映ってもおかしくないんじゃないかな」
「か、可愛い……まゆみん、いきなり変なこと言わないで!」
「イタっ、何で叩くんだよー古屋敷」
「知らないしらないしらな~い!」
古屋敷が顔を赤くして、真弓の背中を手でトントン叩く。
この前、真弓が赤い巨人としての条件興奮を得るため、古屋敷の胸を服越しに掴んだ以来、古屋敷の様子が少しおかしい。
散々この数日は、古屋敷に謝り続けて、昼休みに高いグレート黄金パフェを何個も奢らされるはめになった。自業自得ではあるのだが、真弓の財布は一向に寂しくなっていくばかりである。
真弓はあの時、泣いている古屋敷を抱きしめたことを思い出していた。
──あの古屋敷が泣くなんて。一応、僕を心配して泣いてくれたのかな。古屋敷を抱きしめた時、甘い匂いが……やばい、またアレか。
「まゆみん、どうしたの? 黙って。うそ、本当に痛かった? ごめんっまゆみん」
「だ、大丈夫だよ、ちょっと僕、トイレに行ってくる」
「あっうん、分かった。いってらっしゃい~」
トイレに急いで向かった真弓は、個室の扉を鍵をかけて閉め、壁に手をついて寄りかかる。
「またかよ……あの一件以来……性欲は落ち着いて来てたのに」
力の暴走、その前兆を真弓は感じ取っていた。
以前は街の女性を襲いかけ、なんとか耐えきった真弓は、喫茶店『古時計』のマスターを無理やりに襲ってしまった。レイプと言われても、真弓は言い逃れができないほどのことをしてしまったのだ。
それでも、マスターは真弓のしたことを忘れると言って、許してくれた。
そうなのに、また力の暴走が起こったら、今度は街の女性を本当に襲ってしまうかもしれない。次は耐えきれる自信がない。
前の力の暴走は一週間ぐらい前のことだ。
再発の期間として、ほぼ一週間。
マスターベーションを真弓は性欲が暴走しないように、度々行っているのだが、やはり自分の手では真弓の一物は満足しないのか。
赤い巨人になる前の真弓も性欲が平均男性よりもあったとはいえ、赤い巨人後の真弓は性欲が異常である。
これが力の代償だとしたら──。
真弓が力を今後使っていくたびに、暴走が早まり、理性を失うまでの期限が加速するのであれば。
赤い巨人は、犯罪を防ぐヒーローではなく、犯罪を犯す側になってしまう。
──僕はやっぱり、ヒーローにはなれないんじゃ……。
真弓は学校のトイレでオナニーをする罪悪感と、自分の理性が今この瞬間にもなくなってしまうのではないかと焦燥感を抱く。
「い、イクっ……最悪、だマジで」
射精をする高揚感と、射精後の賢者モードが恐るべき速さで入れ替わる。
連続で三発出し終えた真弓は、一生懸命行為の匂いを消した後、男子トイレから廊下に出る。ただ下を見つめて、歩いていたからか──トイレの入り口を出た真弓は歩いていた誰かと思いっきりぶつかってしまった。
「いったた……すみません、大丈夫ですか!?」
「あいたたー……あー大丈夫、そっちこそ怪我はない?」
「あっこっちは平気ですけど……ってさっきの女性!?」
廊下に尻もちをついて転んでいた黒づくめの女性は立ち上がって、黒い革製のハイヒールを高らかに鳴らす。
「君、指血出てるじゃない! ごめんなさい、私の靴で切ったのね」
「別にこれぐらいだったら、問題ないですよ」
「ダメ! もしばい菌が入って、悪化したら手を切らないといけなくなることだってあるの! ちょっと私に見せなさい」
「は、はい」
真弓よりも一回り身長が高いスラリとした彼女は、体に引っ提げていたバッグから、一つの絆創膏を取り出して真弓の指に優しく付けてくれた。
「今はこれぐらいしかできないけど、ないよりはましでしょ。一応消毒つきの絆創膏だから安心して。これで、よしっと。本当にごめんなさいね」
「いや、僕が下を向いて不注意だったのが悪かったんです。謝らないでください。僕の方こそ、服を汚してしまってすみません。その上、怪我の処置までしてもらえるなんて、ありがとうございます」
「礼儀正しい男の子ね。凄くキュートな顔だし、お姉さんキュンときちゃう」
「あっ」
そういった女性は、真弓にいきなり近づくと膝を折ってしゃがみこみ、よしよしと真弓の頭を撫でる。
顔の位置が同じ高さになり、改めて彼女の美しさに気づかされ、真弓の顔が真っ赤に染まった。
「あの……あんまり、その頭とか撫でられるのは僕……」
「そうだよねぇ、ごめんなさい。私、君みたいな可愛い子みると、すぐ頭よしよししたくなっちゃうんだわ」
「そ、そうなんですか……(変わった人だな)」
廊下で改めて向き合った真弓は、彼女のスラリと伸びた長い手足に驚き、彼女の美しさに単純に男として見惚れてしまう。
そんな彼女はごほんと咳をする仕草を取った後、口紅で赤い唇を震わせた。
「私の名前は明間(あけま)メル。東京でジャーナリストやってます」
彼女はそう名乗り、にかっと歯を見せて笑った。
ジャーナリストと聞いて、真弓は嫌な予感がするのであった。
「うん、そうだよあかつん」
「そこまではいい。だけど、古屋敷が現れた赤い巨人と対面している時、有式はどこに行ってたんだ?」
「それはえっと……」
赤塚が真剣な顔をして、真弓に問いただす。
──古屋敷には無理な言い逃れをしてきてなんとか平気だったけど、赤塚には通用しない。どうする、どう答える僕!
事の問題は、先日課外授業の際に古屋敷が傷つきそうになった時、その場で真弓が赤い巨人に変化してしまったことだ。
古屋敷は目をつぶっていて、幸いなことに赤い巨人=真弓だとは気付かなかった。
しかし、後日古屋敷から赤塚へ、その時のことが伝わってしまったのだ。
目敏い赤塚は話の不自然さに気づき、赤い巨人がいた時刻、真弓はどこにいっていたのかと疑問に思ったのだろう。
真弓は赤塚にそう聞かれ、背中が冷や汗で濡れるのが分かった。
「それは……」
「まゆみん、なんか外にバイク乗った女の人がいるよ」
「バイクに乗った女の人?」
この機会を逃すな。
この偶然差し伸べられた救いの手に、真弓は手を伸ばす。
赤塚の質問を、違う話題で上書きするために。
「おい、有式、話はまだ途中……」
「あ、本当にいるぞ。なんだろう、あの人」
真弓は席から立ち上がって、席横にすぐある窓ガラスに顔を向けると、古屋敷の言う通り、校門に女性がバイクに乗っている。
黒いヘルメットを着けて、その顔は確認できないが、長い髪とこれまた黒いライダースーツを纏っているその体はスタイル抜群で女体として神がかっていた。
艶のある黒髪に黒いヘルメットとライダースーツ。その上、黒いバイクに乗った黒づくめの女性は自然な仕草でヘルメットを取り、頭を振るって髪を靡かせる。
美しきパーツを照らす太陽の光で輝かせて、校舎を見つめ微笑む。
「ここが、大宮高校ね。赤い巨人が現れた」
教室でそれを見ていた真弓は、その女性が自分と目が合った気がした。
「……今僕を……、いやいや、あんな美人な女性が僕なんかを見るはずがない」
「まゆみん、あたし、あの人と目が合ったよ今!」
「まあ、古屋敷も十分可愛いしな。古屋敷が目に映ってもおかしくないんじゃないかな」
「か、可愛い……まゆみん、いきなり変なこと言わないで!」
「イタっ、何で叩くんだよー古屋敷」
「知らないしらないしらな~い!」
古屋敷が顔を赤くして、真弓の背中を手でトントン叩く。
この前、真弓が赤い巨人としての条件興奮を得るため、古屋敷の胸を服越しに掴んだ以来、古屋敷の様子が少しおかしい。
散々この数日は、古屋敷に謝り続けて、昼休みに高いグレート黄金パフェを何個も奢らされるはめになった。自業自得ではあるのだが、真弓の財布は一向に寂しくなっていくばかりである。
真弓はあの時、泣いている古屋敷を抱きしめたことを思い出していた。
──あの古屋敷が泣くなんて。一応、僕を心配して泣いてくれたのかな。古屋敷を抱きしめた時、甘い匂いが……やばい、またアレか。
「まゆみん、どうしたの? 黙って。うそ、本当に痛かった? ごめんっまゆみん」
「だ、大丈夫だよ、ちょっと僕、トイレに行ってくる」
「あっうん、分かった。いってらっしゃい~」
トイレに急いで向かった真弓は、個室の扉を鍵をかけて閉め、壁に手をついて寄りかかる。
「またかよ……あの一件以来……性欲は落ち着いて来てたのに」
力の暴走、その前兆を真弓は感じ取っていた。
以前は街の女性を襲いかけ、なんとか耐えきった真弓は、喫茶店『古時計』のマスターを無理やりに襲ってしまった。レイプと言われても、真弓は言い逃れができないほどのことをしてしまったのだ。
それでも、マスターは真弓のしたことを忘れると言って、許してくれた。
そうなのに、また力の暴走が起こったら、今度は街の女性を本当に襲ってしまうかもしれない。次は耐えきれる自信がない。
前の力の暴走は一週間ぐらい前のことだ。
再発の期間として、ほぼ一週間。
マスターベーションを真弓は性欲が暴走しないように、度々行っているのだが、やはり自分の手では真弓の一物は満足しないのか。
赤い巨人になる前の真弓も性欲が平均男性よりもあったとはいえ、赤い巨人後の真弓は性欲が異常である。
これが力の代償だとしたら──。
真弓が力を今後使っていくたびに、暴走が早まり、理性を失うまでの期限が加速するのであれば。
赤い巨人は、犯罪を防ぐヒーローではなく、犯罪を犯す側になってしまう。
──僕はやっぱり、ヒーローにはなれないんじゃ……。
真弓は学校のトイレでオナニーをする罪悪感と、自分の理性が今この瞬間にもなくなってしまうのではないかと焦燥感を抱く。
「い、イクっ……最悪、だマジで」
射精をする高揚感と、射精後の賢者モードが恐るべき速さで入れ替わる。
連続で三発出し終えた真弓は、一生懸命行為の匂いを消した後、男子トイレから廊下に出る。ただ下を見つめて、歩いていたからか──トイレの入り口を出た真弓は歩いていた誰かと思いっきりぶつかってしまった。
「いったた……すみません、大丈夫ですか!?」
「あいたたー……あー大丈夫、そっちこそ怪我はない?」
「あっこっちは平気ですけど……ってさっきの女性!?」
廊下に尻もちをついて転んでいた黒づくめの女性は立ち上がって、黒い革製のハイヒールを高らかに鳴らす。
「君、指血出てるじゃない! ごめんなさい、私の靴で切ったのね」
「別にこれぐらいだったら、問題ないですよ」
「ダメ! もしばい菌が入って、悪化したら手を切らないといけなくなることだってあるの! ちょっと私に見せなさい」
「は、はい」
真弓よりも一回り身長が高いスラリとした彼女は、体に引っ提げていたバッグから、一つの絆創膏を取り出して真弓の指に優しく付けてくれた。
「今はこれぐらいしかできないけど、ないよりはましでしょ。一応消毒つきの絆創膏だから安心して。これで、よしっと。本当にごめんなさいね」
「いや、僕が下を向いて不注意だったのが悪かったんです。謝らないでください。僕の方こそ、服を汚してしまってすみません。その上、怪我の処置までしてもらえるなんて、ありがとうございます」
「礼儀正しい男の子ね。凄くキュートな顔だし、お姉さんキュンときちゃう」
「あっ」
そういった女性は、真弓にいきなり近づくと膝を折ってしゃがみこみ、よしよしと真弓の頭を撫でる。
顔の位置が同じ高さになり、改めて彼女の美しさに気づかされ、真弓の顔が真っ赤に染まった。
「あの……あんまり、その頭とか撫でられるのは僕……」
「そうだよねぇ、ごめんなさい。私、君みたいな可愛い子みると、すぐ頭よしよししたくなっちゃうんだわ」
「そ、そうなんですか……(変わった人だな)」
廊下で改めて向き合った真弓は、彼女のスラリと伸びた長い手足に驚き、彼女の美しさに単純に男として見惚れてしまう。
そんな彼女はごほんと咳をする仕草を取った後、口紅で赤い唇を震わせた。
「私の名前は明間(あけま)メル。東京でジャーナリストやってます」
彼女はそう名乗り、にかっと歯を見せて笑った。
ジャーナリストと聞いて、真弓は嫌な予感がするのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる