ペニスマン

終焉の愛終(しゅうえんのあいうぉあ)

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3.火災事件

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 近年新設された大宮駅内のデパートには、『古時計』と看板が書かれた喫茶店があり、その名の通り、店内には大きな古時計が居座っている。
 若者は同じ駅内にあるスタバに行くため、この味があるお店には、おじさんおばさんばかりで、若者はほとんどいない。ほとんどといったのは、ごく少数派の真弓たち三人がいるからである。
 かちかちと鳴る古時計の針音を聞きながら、三人は店内隅のテーブル席に座る。
 
「はぁ、やっぱりこのお店は落ち着くね、スタバよりも僕はこっちのほうがいいな」
「うんうん、こうしてまゆみんの肩に寄りかかれるのも、こういう落ち着いたお店だからこそだよね♪」
「古屋敷は自重したほうがいいよ」
「えー、まゆみんのいじわるー!」

 真弓がぐいぐいと古屋敷の頭を押して、ちゃんと座らせる。こうでもしないと、今の真弓は危ないのだ。だって、古屋敷匂いが良いから。
 壁際にいる真弓と古屋敷の対面に赤塚がいてホットミルクを飲んでいる。
「赤塚、ホットミルクって渋いよね」
「……ん、そうか?」
「ねね、知ってる? あかつんはね、苦いの飲めないんだよ~」
「うわ、赤塚苦いの飲めないの!?」
「そんな驚くことでもないだろ、笑うな」
「マスター僕は、カフェラテでー!」
「あたしはブラックコーヒー! にがにがのげきにがの~」
「分かった」

 この『古時計』のマスターは、女性である。
 三十代前半か後半、詳しい年齢はマスター本人が黙認し通していて、真弓たちが聞こうとしても、険しい目つきで睨まれるのがおちだ。
 マスターの名は、藍田潮。
 女性にしては高身長で、胸が大きいとか張りのあるお尻の生み出す黄金のラインは真弓の性欲をいつもくすぐる大人の女性としての魅力をマスターは持ち合わせている。
 今ばかりは、彼女の豊潤な体を見ないほうがいいだろうと考えて、真弓の視線は宙をさまよい、迷った挙句に古時計に行き着いた。
 古時計を見つめて、真弓は口を開く。

「結局、なんもわかんなかったな、手から火を出す男」
「まゆみーん、本当はそんなの存在してないんじゃない?」
「そうなのかな」
「だってさー、ツイッターで回ってきた動画時には、あんなに暴れてたのに、一日後の今になってはなんの出現情報もないんだよ、ぜったいデマだよー」
「昨日の事件だって、結果的な被害者は軽症が少数で、死者はゼロ。そんな大事にするほどのことでもないしね、まあ手から火を出す男が犯人で暴れたっていうんならわかるけど」
「潜伏してるだけだよ、今は」
「潜伏っていっても、じゃあなんで手から火を出す男は最初に暴れたんだ」
「発現した力に最初は酔っていたんだろうな。だが、暴れた後になって、自分が警察に捕まるかもしれないというリスクに気づいた。だから、とりあえず姿を隠したんだ」
「ほう、赤塚、分かるの?」
「まあ、自分が怪人だったなら、そんな考えにも行き着くだろ」
「さすが赤塚、伊達にアメコミ漫画を読みつくしていることはあるね」

 マスターが大股で歩いてきて、テーブルにカフェラテとブラックコーヒーを大げさに置く。

「ありがとう、マスター」
「ありがとーますたー」
「礼はいらねえよ、金を寄越せ」
「あ、あとでちゃんと払います」
 
 真弓は笑いながら答える。
 マスターは目つきが怖いし、セクシーだし、ぶっきらぼうだけど、実は優しいのを真弓は知っている。
 ──できるのならば、妄想だけでもマスターを抱き……今は駄目だったんだ。ダメダメ。おにぎり、うめぼし、しゃけ。他のことを考えろ。あれ、がまた始まるかもしれないんだから。

 真弓が例の変化に対し、考え対策したものは三つ。
 1、エロイことは考えない。
 2、外にあるエロいものを避け、離れ、見ない。
 3、もし興奮しそうになった時は、おにぎりの具を考え続ける。
 
 真弓が暴走してしまうきっかけ、キーとなるのは、興奮してしまうことだと推測した。
 興奮するのがトリガーなのなら、一回目はなぜ、朝起きたばかりでなったのか説明がつかないが。こう考えるならば納得がいく。
 ──一物の勃起が、トリガーなのだと。
 男は朝起ちという生理現象があるのを知っているだろうか。
 勃起してしまうと、あの暴走したモードになってしまう。その呪いじみた謎の力。力というには、真弓にとってただ性欲が暴走するデメリットしかないが。
 まだ二回しかあの状態になったことがないため、真弓もよくわかっていなかった。
 あの状態になるわけにはいかないから、この真弓が考えた三つの対策で現状なんとかしていかなくてはいかないのが現実だ。まあ、この対策で今のところは上手くいっているので案外間違っていない。
 ただし、現状の脅威は、古屋敷の奴。こいつ、うざいけどエロいし、いいにおいするし、胸元晒してるし、いかんせん誘惑が多すぎる。
 
「くあーっぱ、この苦さだよね~生き返る」

 ブラックコーヒーをあたかも、ビールのように飲み干す女が現実にいるのだろうか。いた。
 その時。
 店外から、悲鳴が響いて聞こえた。
 
「今の、聞こえた?」
「あぁ、悲鳴みたいだった」
「まゆみん、怖いよ~」

 悲鳴が聞こえた数秒後に、爆発したような音が続く。
 
「おい、やばいだろ、何か爆発したぞ。駅内で何かあったんだ」
「爆発……火、か」
「火、ってもしかしてあの……」
「まゆみん、ライン見て」
「……嘘だ」

 真弓が自分のスマホに入っているアプリ、ラインを確認すると、高校のグループラインに一件の通知が来ていた。
 
 【駅内のスタバで、変な男に襲われた、助けて】:月丘はづき

 そのメッセージを見て、真弓は驚くべきことに──席を立っていた。

「マスター、財布置いていくから、あとで取りに来る!」
「まゆみん、どこいくの!?」
「おい、有式、お前どこへ」
「ごめん、僕行かないと!」

 ──僕が行かないと、月丘さんが危ない。
 頭のどこかでは自分ごときがその場に行っても助けられないのは分かっていた。どうすることもできずに、その場の被害者の一人になる、そんなことは分かり切っていた。
 だが、理屈ではなかった。
 これは、本能だ。
 好きな人を失いたくないという、ある種のオスがメスを守る生物としての本能。それが、真弓の原動力の全てだった。
 駅内の通路を走りかけながら、次第に焦げた匂いと空気に交じって増えてきた煙が目に入ってしみる。
 炎。火事。前の先から赤い光が漂っているのを見て、そう推測する。
 火事の時の対策は小学校の時から避難訓練で経験してきた故、いくらかは知っている。しかし、今はポケットに口を押えるハンカチはないし、真弓はただスタバに向かって走るのみだ。
 スタバが目前になっていき、次第に悲鳴が大きくなっていく。
 ガラス越しで店内を観察してみるが、白い煙でよく見えない。
 今が店に入るチャンスだ、そう思い、真弓が音を立てないように店内に入る。
 そうして、蹲っている集団を見つけ、必死になって月丘はづきを探す。
 幸いなことに探すのに時間はかからなかった。
 月丘はづきが苦しそうにハンカチで口を押えて、しゃがみこんでいるので、静かに近づく。

「あの、月丘さん。大丈夫ですか?」
「あ、何で──有式君が」
「グループラインで見て、ちょうど駅内にいたので、来ました」
「来たって……しっ、静かにして、あいつよ」
「あいつ?」

 月丘はづきが人差し指を立て、静かにしてというポーズをとり、真弓が店内を見回してようやく気付く。
 全身火傷した、見るに堪えない男を。
 その男が、ギロッとした目で、怖がっている客の集団を睥睨する。
 
「お前ら、ちょっとでも変な仕草したら、さっきのアイツみたいになるの見たよな? 無事に帰りたかったら、何もするな、分かったな」

 男が指さした先には、黒ずみ倒れた人の形をしたものが床に横たわっていた。

「……なんてやつだ、殺人を犯したのか……!」
「……有式君、どうして来たの、君もここに来たら危なくなってしまうのに……」
「それは、」何を月丘はづきに答えたらいいのか、わからずに何かを口にしようとした瞬間、火傷男の目が真弓を捉える。

「おい、お前……さっきはいなかったな? 隠れてたのか? まあいい、お前も何かしたら即燃えカスになるから気をつけろよ」
「っ……」

 あとから入ってきたまゆみは火傷男に怪しまれたがなんとかしのいだ。
 歯を食いしばって、この状況をどうにかする方法を考える。

 ──どうするどうする、こんな時。月丘さんを助けるには、どうする。逃がす。月丘さんを逃がす。どうやって。あいつの目をかいくぐって。あいつの目をかいくぐるにはどうする。隠れて……ダメだ。バレたら、もっとまずい。なにも、浮かばない。

 考えても考えても浮かばない名案。
 そもそもこういう時、いい案を思いつくのは、赤塚のほうが得意だ。
 赤塚に説明してからくればよかったと、今更になって後悔する。
 店内の奥が燃えて、煙が充満しつつある。このままでは、一酸化炭素中毒で窒息死してしまう。
 
「こほっけほけほっ」
「……月丘さん」

 まずい、月丘はづきの咳がひどくなってきている。一酸化炭素中毒の前兆だ。
 そもそも、犯人は何が目的なんだ。それを知らなけれなどうすることもできない。客を窒息死させたいわけじゃないだろうし。

 ならば。
 真弓は立ち上がって、犯人に向きあう。

「あなたは何が目的なんだ! このままじゃ、みんな煙で窒息死してしまう!」
「有式くん!?」
 
 月丘はづきの悲鳴が上がり、振り返った犯人と真弓の目が合う。

「何だ、あ、さっきの奴かよ。目的? 身代金だよ。お前らと引き換えに金をもらうんだ」
「そうだとしても、人質がこのままじゃもたないっていってるんだ! あなたにとっても、人質が死ぬのは痛いことなはずだ! だから……」
「関係ねえよ」
「え?」
「関係ねえっていってんだよ。人質の数人が死のうが、一人でも残ってれば問題ねえ。それに警官が来ても、俺には敵いっこないんだ!」

 そう言って、犯人は壁に手を振りかざす。
 犯人の手から出現される炎の塊が、壁に跳ね返り、天井に吹き荒れる。
 あり得ない、と目の前で見ている光景を、真弓は脳で否定する。
 人間がやっていいことじゃない。あの炎、どうやって出してるんだ。
 
「お前も、女の前で勇敢ぶってるのかもしんないが、うぜえから死ねよ」
「やば──」
「キャッ」
 
 真弓に向かって手が開かれ、赤い光が見えたと思ったら、真弓は月丘さんを巻き込んで後方に吹っ飛んでいた。
 
 真弓の服に火が移り、だが奇跡的に床を転がって消化。
 そして真弓は目を開ける。
 上から左手が床を押え、右手が何かを掴んでいた。
 その右手が掴んでいる何かが、目を開けてすぐに理解できた。
 今の状況は、あおむけになっている月丘はづきを、真弓が上から覆っている。
 真弓の右手が、柔らかいものを掴んでしまっていた。
 右手に収まりきらない、柔らかくも確かな弾力を備えた悪魔の代物──おっぱいを掴んでいた。
 
「あ、あっ」
「有式、く、ん……」

 一瞬目を開けていた月丘はづきは、自分の胸が異性に掴まれているとはつゆもしらずに意識を失う。
 一方、意識を失うどころか、益々覚めていく真弓の意識は、たったいま、興奮にシフトしていた。
 興奮のボルテージが上昇し、跳ね上がる心臓が血流を否が応でも加速させていく。
 どくん。
 どくん。
 どくん。
 心臓の音が聞こえた。
 犯人が出した火の煙とは、少し異なった白い煙が室内に現れる。
 ぷしゅう、と蒸気が吹く音がし、何か物体がぶつかるような、肉が動く音がした。
 
「──ぁア、月丘さんのおっぱい」

 室内を覆った白い煙が揺れ動き、対面している犯人の目に、赤い影が映る。
 
「な、なんだよ、これは……おい、なんだよおいっ!」

 天井にまで達した頭が、さらに伸び、首を傾けざるを得ない、
 白い煙が少し晴れ、その異様を晒す。
 赤い筋肉の塊。巨人。赤い何か。それを表現する言葉はいくらでもあった。
 ただ一つ言えるのは、そのものに敵対しては命がないだろうと思わせるのに十分だった。

「ば、化け物がっ! これでもくらえっ」
「──?」

 火傷男の手から連続で放たれる炎が、赤い塊を攻撃する。
 爆発炎が、赤い壁に当たり、衝撃波を生み続ける。
 見ている側にオーバーキルなのでは、と思わせた。

「はっ、俺の炎には流石に化け物も……!?」

 が、炎が散った時、そこには傷一つない赤い塊が立っていた。
 それを見て、火傷男は絶望し、直ちに足が後退し始める。
 後退する火傷男に、赤い塊がついに動き出し、どんどんと音を立て迫った。
 
「逃げるつもりか、この野郎」
「しゃ、しゃべった!? 言葉が通じるなら、俺もうこんなことやめるから、人質も解放するから、やめ、やめて!」
「月丘さんに謝れ!」
「ぐわっ!?」

 太く、赤い筋肉の体から一振りの拳が、犯人である火傷男に向かい吹っ飛ばす。犯人が、スタバのガラスを破り、駅内のコンクリートの壁に激突し、ばたんと意識を失った。
 それを見送ってから、赤い巨人は、店内の燃えている部分に近づき、巨大な手で火を潰す。じゅう、と火が消える音。
 火を消した後は、倒れて、意識を失っている者たちを幅広い肩に乗せ、店外に運び出していく。
 店員含め客を全員外に出した後、赤い巨人は姿を消した。

===


 喫茶店『古時計』の入り口にある鈴の音が鳴った。
 店内にいる二人の視線が、入り口に向かう。二人とは、古屋敷と赤塚だ。
 
「有式」
「まゆみん!」

 入り口にいたのは、体の所々が黒く焦げている真弓だった。
 真弓はテーブル席に座り、二人と話す。

「有式、お前、何があった」
「あー、えっと、スタバが燃えてて、僕は入ろうとしたけど、無理だったから戻ってきた」
「無理だったって、火傷してないのかよ、大丈夫か有式」
「ちょっとはしたけど、大丈夫」
「犯人はどうなったんだ」
「あー、平気なんじゃないかな」
「何故有式が分かるんだ、入れなくて戻ってきたのに」
「あ、はは、あーそうそう、勘、みたいな」
「何だよそれ」
「まあまあ、まゆみんが無事なら何でもいいよ♪ それにたった今、グループラインで月丘はづきから、無事だったって送られてきたしね~」
「そう、よかった! 一時はどうなるかとー」
「……ヒーロー」

 ぼそっと赤塚がそのワードを呟く。
 そのワードを耳にし、真弓がびくっとする。

「ひ、ヒーローって? 赤塚」
「警官がやってきてもいないのに、人が勝手に救われる。これは、ヒーローの仕業に違いない」
「あ、赤塚なにいってるんだよ、ヒーローなんて存在するわけないだろう、ばかばかしいなあはは」
「…………」

 赤塚は黙って何かを考えているのか。
 真弓は赤塚と話す裏で、冷や汗をかいていた。
 なぜなら実はそのヒーローのようなことをしたのは、真弓だからだ。
 月丘はづきたちを救出した後、しゃがんでトイレに駆け込み、オナニーで性欲をなんとかした。
 走る速度が、けた違いに早かったので、駅内に点在している監視カメラには正確に映っていないはずだ。
 
 あの時、真弓が偶然に、月丘はづきのおっぱいをもんだことで、あの状態への条件がそろってしまったのだろう。
 つまり、興奮状態、勃起を。
 あの状態になると、性欲が暴走することともう一つ、さっきわかったことがある。
 それは、超人的な力をあの状態は発揮するということ。
 数度の火炎放射を浴びてもなんともなかったし、火傷男を軽々と投げ飛ばすパワーも持っていた。ついでにあり得ないような速さもあった。
 まるでスーパーマンだ。性欲が異常に上がるという以外は。
 
「まゆみんが無事でよかったよ!」
「ちょっと、古屋敷」

 古屋敷が真弓に勢いよく抱き着いてくる。
 
「……すんすん(あれ、なんかまゆみん、いか臭い)」

 

 
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