彼女のdiary

べいかー

文字の大きさ
上 下
1 / 66

別れ話 一

しおりを挟む
 「突然だけど、私たち、別れない?」
大野優(おおのゆう)は、付き合っていた恋人の、新川史香(あらかわふみか)に、こう切り出され、戸惑っていた。
 「急に何でそんなこと言うの?昨日まで、俺たち仲良かったじゃん。そんな、急に…。史香、何かあった?」
「別に何もないよ。ただ、私が優と別れたくなっただけ。
 話したいことはそれだけだから、私、もう帰るね。さよなら。」
 こうして優と史香は、別れることになった。しかし、優の頭は、状況を理解できていない。確かに、ここ1週間ほどは、優と史香は2人とも忙しく、会う時間はなかった。でも、お互いにメールのやりとりはしており、そのやりとりの中には、
 「最近は忙しくて会えないけど、元気?」
「優に会えないと、ちょっと、いやかなり寂しいよ~。また連絡してね!」
「分かった。俺も史香に会いたい。また、時間ができたら、連絡するから。」
など、他人が見たら少し恥ずかしくなるような内容のものもあった。
 そして、優が史香に別れを切り出された前日のメールも、
「ごめん、優。明日、ちょっと話があるんだけど、いい?」
という内容のもので、少し業務連絡口調が気になったとはいえ、決して別れを匂わせるような文面ではなかった。
 それなのに…。
 1週間ぶりに優と史香が会って、最初に言われた言葉が、「別れよう。」という内容のものであった。そして、史香は有無を言わさず、その場から一方的に去っていった。1人残された優は、ただ、茫然とするしかなかった。
 そこは、優と史香がデートでよく行っていた、カフェであった。優は、特にカフェが好き、というわけではないが、史香がこういう場所を好きなので、一緒によく、あちこちのカフェへ行っていた。その中でも、今日会った場所は、優と史香の通う大学から近く、行きつけになっている、カフェであった。
 優は、そこに留まっていても仕方がないので、気を取り直し、カフェを後にした。外を見れば、そのカフェの近くには、桜の木がある。今は4月上旬ということもあり、また、今日は雲一つない快晴であったので、優は桜の花がきれいに咲いているのを、はっきりと見ることができた。春は出会いの季節であると同時に、別れの季節でもある―。そして今の優にとって、この季節は後者にあたる―。優は、悲しい気持ちになりながら、自分の心とは裏腹の、晴れわたった空と満開の桜を見上げた。また、優の目には、涙が光っており、空や桜を見上げていないと、それがそのままこぼれ落ちてきそうで、いたたまれない、優はそんな気持ちであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

乱交的フラストレーション〜美少年の先輩はドMでした♡〜

花野りら
恋愛
上巻は、美少年サカ(高2)の夏休みから始まります。 プールで水着ギャルが、始めは嫌がるものの、最後はノリノリで犯されるシーンは必読♡ 下巻からは、美少女ゆうこ(高1)の話です。 ゆうこは先輩(サカ)とピュアな恋愛をしていました。 しかし、イケメン、フクさんの登場でじわじわと快楽に溺れ、いつしかメス堕ちしてしまいます。 ピュア系JKの本性は、実はどMの淫乱で、友達交えて4Pするシーンは大興奮♡ ラストのエピローグは、強面フクさん(二十歳の社会人)の話です。 ハッピーエンドなので心の奥にそっとしまいたくなります。 爽やかな夏から、しっとりした秋に移りゆくようなラブストーリー♡ ぜひ期待してお読みくださいませ! 読んだら感想をよろしくお願いしますね〜お待ちしてます!

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

【完結】え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます

たろ
恋愛
★ 失った記憶編③のお話になります! わたしに興味のないお母様。 とっても優秀なお姉様。 わたしは屋敷の中でいつも一人。 侍女長がわたしを育てる係。 なのにこの人が最悪で、食事は抜かれるし厳しい家庭教師をつけて体罰を容認しているので見えないところはあざだらけ。 でも平気。 だってみんなが寝ている時にこっそり料理長はいつも美味しい料理を食べさせてくれるし、こっそりと助けてくれる人もいる。 でもね、王太子の婚約者になったら王宮でさらに酷い目に遭い出したの。 世間ではピンクの髪、可愛らしい庇護欲を誘う容姿が、隣国の王子を誑かした男爵令嬢と被るらしい。 わたしは8歳にして何故か悪女で嫌われ者? 家でも王宮でも学校でも嫌われ者のカトリーヌ。 何故か男の人には好かれるのに女の人には嫌われまくる侯爵令嬢の話です。 本当は、家族に愛されたい、好きな人に愛されたい、愛を求めているのに愛してもらえない、いじっぱりな女の子が少しずつ本当の愛を知っていく。 そして本当にわたしを愛してくれたのは…… ★たまに残酷な場面があります ★かなりイライラする場面もあります

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...