20kHz

べいかー

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恋心 三

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 そして、そんな他愛もない話や、真面目な話をしていくうちに、亜美子の気持ちに、変化が訪れるのを、亜美子自身が感じていた。
 「最初、トシさんと通話した時、第一印象は、最悪だった。この人は、もしかしたらストーカーかもしれないなんて、思ったりもした。
 でも、トシさんのことを知って、トシさんはそんな人じゃない、トシさんには、謝らないといけない、私はそう思った。
 でも、今、私の気持ちはそんなんじゃない。私は、トシさんのことをもっと知りたい。もっとトシさんと話をして、トシさんと繋がっていたい。そして、私は…、
 トシさんと一緒になりたいんだ。」
 これが、亜美子の心の声であった。
 今まで亜美子は、母子家庭で育ち、余裕がなかったためか、恋愛らしい恋愛を、したことがなかった。もちろん、亜美子に好意を寄せる男子は昔からいたが、亜美子の方から男子を好きになることはなく、
「中途半端なお付き合いは、したくない。」
という亜美子の気持ちから、これまで亜美子は誰とも付き合ってこなかった。
 しかし、今回は違った。自分でも、今までの男性と、どこが違うのか分からない。ましてや、トシさんとは会ったこともなく、声を聴いているだけなのに…。それだけであるにも関わらず、亜美子は、確実にトシに惹かれていた。これは、遅ればせながらの、亜美子の「初恋」かもしれない、亜美子は、そう思った。
 そして、亜美子は、こうも思った。
「人間、恋をする時は、理由なんて、ないのかもしれない。よく、
『あの人の、ここが好き。こんな所が好き。』
とか、テレビなどで言っているが、そんなもの、当てにならない。私は、今になって初めて、それが分かった。
 人を好きになるっていうのは、理屈じゃない。その証拠に私は、こんなにもトシさんに、惹かれている。
 …私は、トシさんのことが好きだ。」
亜美子は、自分の中に芽生えた初めての気持ちに、少し戸惑いながらも、その気持ちを大切にしよう、そう思った。
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