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しおりを挟むなに拗ねた態度とってんだ、失礼しちゃう。
「相変わらず仲がいいな」
「先輩の目の錯覚」
「そー思うんならこいつにちょっかい出すのやめてください」
「それは無理」
さっくり言われてやんの。
今の会長はどっちかって言えば中性的な感じで、ナヨナヨしくはないけど我が道をいくタイプ。
伊原先輩はなんつーか、男らしいがっしりした体躯なんだけど男臭いっていうよりいい匂いがして野性的なもんがあるんだよな。
だからか、先輩の親衛隊はなよっちー小柄な男の奴等とちょっとグレかかった厳つそうな奴等と二分してたっけ。
「なんで一般に来たんですか?」
「データだけじゃ人なんて理解出来ないから食堂に来たら二人をみつけた」
「どーせなら向こうに行けば良かったのに」
なに言ってんの、こっち来て正解じゃね。
憮然とする棗には悪いが賛成出来ないわ。今の生徒会よりも影響力あり過ぎる。万が一、先輩と転入生が接触してみろ。自治に偉い打撃がくるのは目に見えて分かるってもんだ。
冗談じゃねぇ。そん時は絶対風紀に棚上げして面倒押し付けるぞ。
「なぁ、折角だから今から二階席行かないか。都築や橋爪たちもいるって」
ほらって携帯を見せられ、二階席に誘われる。
二階席かぁ、暫く行ってないなぁ。去年の冬休み前以来か。
「なんなら棗も来ればいい」
棗を見れば先輩のこと睨んでるし。ちょっと、なにしてんのコイツ!周りが騒いだらどうしてくれんの。
「どうする、織田」
行くか?って聞かれたらついて行く自信があります。俺、先輩のこと嫌いじゃないし。
あのね、棗クン。そんな態度とったりするから面白がって先輩にからかわれるんだよ。いい加減気付けばいいのに。
「二階席行くけど、棗はどうする?」
前風紀の先輩もいるみたいよ。
「行く」
棗の返事に、ちょっと笑った先輩を見逃さなかった。やっぱりからかってるし。イジルにはもってこいの人材ですからね。悪ぶってるけど根が真面目だからな。
「今から二階席だと俺、授業出れないな」
「特権あるだろ。何今更気にしてんだ」
そうだけど、ゴールデンウイーク後はテストあるし気になるでしょ。まぁ教科書見とけばなんとかなるし、いっか。
「伊原先輩、先に行っててください。これ置いたら行きます」
「あ、あのっ」
ん?突然入ってきた俺たち以外の声に、見れば照れた仕草の小柄な奴が側にいる。
「良かったら、僕たち片付けます」
「え、いいの?」
「はいっ」
おー、三人で顔赤らめて必死な感じ。いいのかねぇホントに。なんか初めてのことで気が退ける。
「悪いな。じゃぁ、二人ともテラスから出るぞ」
「ありがと」
「頼むわ」
何偉そうに言ってんだか少しは遠慮しろ。毎度楽しようとしやがって。
俺が礼を言うとやけに動揺する三人になんとも言えない気持ちが膨らむ。慣れてんのかね、こーゆうの。
五月蝿い転入生たちに見つからないよう伊原先輩とテラスへ出た俺たちは少し遠回りしてエレベーターを目指す。
あー、緑って酸素出してるんだっけ?生き返るわ。食堂、空調設備あんのに空気悪すぎだ。
「今の、お前の親衛隊だろ」
「はぁ?」
なにそれ棗クン。聞いたことないんだけど。
「間違いないな」
伊原先輩まで。俺の親衛隊なんてホントにいるのかね。
「お前のところは隠れてるから公じゃ分かんねぇよ」
それって親衛隊って言えるのか?
でも二人は分かってる感じがする。なんだろうこの疎外感は。
まぁ、いるならいるでいいけどね。あー、久しぶりにパフェ食べたいかも、特大のやつ。腹いせにみんなで食べようか。
甘いものが苦手な二人に俺からの可愛い洗礼を。
20100710.
20160211.
応援ありがとうございます!
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