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stop! In the Name of Love
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しおりを挟む慌てて駆け寄る先輩にエレベーターのドアはカタリと閉まる。
で、なんで俺ってば追い詰められてんの?
奥まで追い詰められ、俺の背中は壁にタッチ。
アップに絶えうる美貌にポカーンと見つめてしまったのが間違いってね。
ちゅっと軽く重ねられる唇はしっとりと、そして唇を甘噛みされ俺は無自覚にもコイツの袖を掴む。
一旦離れたかと思うと後頭部の方へ手が回り顔を上向かせる。
またキスされちゃうなーと思えば案の定、唇が迫ってきてそのまま見る顔が目を閉じても遜色なくいい男だと感心する。
ぶっちゃけ、こんなことされて嫌悪も感じないなんてバイ決定?
濃厚に舌を絡めながら目をうっすら開け、エレベーターを伺う。
意外と下に着くのは時間がかかるな。
エレベーター特有の浮遊感を感じつつ、呑気にされるが儘でいたら反撃をくらい視界が真っ暗になる。
「ン……!ふ……ぁ……っ」
くちゅりと卑猥な水音をたてながら角度を変え、攻められ続けて鼻で息をしてても呼吸が追いつかない。
どんだけ濃厚なんだ。
いつの間にかがっちりと腰に腕がまわり脚の間に片脚を差し込まれた。
片腕は頭の後ろに張り付いたままか。
いい加減苦しくなってきて男の制服を引っ張る。
「んん……っ、はぁ……っ」
水音をたてて離れた唇と俺に繋がる透明な糸。人差し指を曲げて撫でた後、爪で軽く唇を引っ掻く。
その行為に閉じていた瞼を上げ、微かに震える自分に叱咤し、ぼやける視界のなか俺は目線を男に位置づける。
「なに」
エロくさい笑みをする男に嫌な予感がする。
いつの間にか外されていたボタン。
スルリと首を撫でる不躾な指に擽ったさを覚えて悪寒に似た震えが首から下へと流れていく。
「誰にマーキングをされた」
明らかに怒気をはらむ声。
言われた俺は問われたことが分からず内心首を傾げる。
「キスマーク」
「……虫さされ?」
く、苦しい!つか、なんて定番。
「へぇ」
あれ?
「まぁ、虫がいないこともないな」
誤魔化し成功!
「なんて馬鹿みたいに言うわけねぇだろ」
「……ですよね」
くっ、もっとボキャブラリーが欲しがった。
少しばかりへこんで俯いていた顎に指をあてられ、顔を上向かせられる。
そこには何故か苦みばしったような表情(かお)をした男。
「で、誰な訳」
「さぁ」
キスマーク首んとこに残したのが水城さんだって言っていいもんかね。
ここは黙秘するしかねぇか。
「言え」
「なんでよ」
「知りたいから」
「なんで名前も知らないアンタに教えなきゃなんねぇの」
「……九鬼」
「ん?」
「九鬼 拓斗(クキタクト)」
えーっと、この傍若無人みたいな感じのお兄さんは目が険しい面してるけど根は素直?
ちょっと、そのギャップは反則よ?俺が女なら落ちてるだろーなー。
「おい」
「あ?」
いつの間にか頭と腰にあった手は外され、九鬼と名乗る先輩は俺と同じように壁にもたれていた。
恋人手繋ぎは忘れずに。
「誰だ」
「んなことより離せよ、手」
「イヤ」
こんな奴を素直だとか思った俺のバカ──!!
「あとお前の名前」
「……名無しのゴンベエです。以後宜しくしないで、コノヤロー」
「なに怒ってんだ」
自分を見ることもなく、エレベーターのドアの方を見て答える俺に首を傾げる。
「別に怒ってない。ただアンタに呆れてんだよ。あと、マーキングしたのが誰かなんて野暮なこと聞くくらいなら」
一階に着いたエレベーターの効果音が鳴る。
「当ててみろ」
ガガッと開く出口に行く前に男を一瞥すると納得のいかない表情をする。
見なかった振りをし、繋ぐ手をスッと外してエレベーターから降りた。
こんな奴らばっかいるところなら先が思いやられるな。
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