ダンピール

草平

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ダンピールとは

階級はふたつ

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時は夕刻までさかのぼる。

国分高校では、鈴木刑事と赤い人の形をした異形が対峙していた。

「階級ってなんだ?役職みたいなもんか?」

鈴木は気が動転していて、とりあえず思いついた言葉をつぶやいた。
右側の吸い取られた部分がしわがれて動きそうもない。

ひとまず時間稼ぎだ。応援が来るまではこいつをここに留まらせなければ、、、

今まで何度も死にかけた経験のある鈴木には、自分が最後に何を優先するか分かっていた。

「階級に役職などない。我々が主人で、お前らは下僕。ただそれだけだ。」

赤い異形は返した。

「我々ってお前らはなんだ?宇宙人か?」

鈴木が言い終わる前に、サイレンの音が聞こえてきた。

「へへ、もう安心だ。」
左手に銃を持ち替え構える鈴木。
ためらいなく引き金を、、、引けない、、、

「言ったろ。お前は下僕だ。少なくとも、半分はな。」

「な、なんだ?くそっ、、、」
鈴木は抗うが、指がピクリとも動かなかった。

「お前らヒトの相手は、アレだ!」

校舎の窓から外を見ると、吉田義教カラカラの身体が、動いているのが見えた。

「アレに、少しだけ血を戻した。お前らヒトの相手は充分出来るだろう。」
気づくと、赤い管が吉田義教にまで伸びていた。
「いつの間に、、、」
鈴木は異形と自分との圧倒的な力の差を感じずにはいられなかった。と、同時に、何故こいつは、こんな場所にいるのか?という疑問が浮かんだ。

何かある、、、この学校には、何か、、、

異形は、暗闇に溶け込みはじめる。

「てめぇ、逃がさねー!」
鈴木は追うも、赤い管をちぎることしか出来なかった。赤い管はべっとりとして触れたところから身体に同化してしまいそうであった。
鈴木は、逃したのを悔みつつも、保存用の袋に赤い管を入れた。

「ぎゃああああ!」

校門の方から男の叫び声が上がる。
鈴木は、しわがれた右手を押さえながら、校舎を出た。

そこには、横転したパトカー二台と無数のコード。それに、バラバラの肉片が転がっていた。

「は、、?はあ?」

鈴木は全く理解出来ない。
ぼう然と立ち尽くしていると、コードが次第に集まりだしてきた。
鈴木は理解した。
このコードは、あの少年だと。
そして、この惨状は、この少年が作り出したのだと。

それから、鈴木はコードが人の形になるのを冷静に見守った。

「刑事サン、あなた、ぼくとオナジ、階級なんですネ。」
コードは吉田義教になりつつ語りかけてきた。

「同じ?なら、おれもお前らみたいに、ズルズルのコードになっちまうのか?」

「よし、この周辺を皆殺そう!」
吉田義教は、赤い異形と同じく、会話をする気がないようだった。

「皆殺しだぁ?」
鈴木が怒りをあらわにするも、、、

パンッ

と、いう音のあとには、吉田義教はどこかに消えていた。

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