ようこそ精神障害へ

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利用者さんのお話

思えば虐待だったのかも

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高齢の女性利用者さんの日下さん。
この方は若干認知症と精神が入っている状態の方だった。精神というよりも最早認知症の方が割合が多く、ちょっと施設での生活は危なっかしい所があった。

そんな日下さんだが無口で反応が可愛らしかった。例えばなにか必要か聞くと
「いらねッ」と早口で応えてくれる。その仕草が愛嬌があふれて職員からも好かれていた。


夏を過ぎた頃、若干まだ暑さが残る日の事。
日下さんの所在が不明で、職員、利用者も分からないという行方不明な事態となった。
幸い近くのコンビニの店員さんから一人で歩いて行ったよ、と目撃情報を得た。

私とサビ管での捜索が始まった。加えて認知症も患っていたので早めに警察へも連絡し協力を依頼した。
日下さんを見つけたのはその日の夕暮れ前だった。
何処で見つかったかという20kmも離れた高速道路の料金所だった。あと少しで高速道路に入る所を係の人が見かけ警察に連絡したそうだ。
「20kmも歩いて疲れたでしょー?」等とサビ管が聞くも、日下さんはいつもと変わらぬ感じだった。
事故報告書かヒヤリハットか忘れたが私が書類作って上司へ提出した覚えがある。

年末も近づいたクリスマス当日、施設は華やかに彩られ、みんな仮装グッズを付けたりして思い思いに楽しんでいた。ビンゴゲームやじゃんけん大会なども行われた。
その場には日下さんもいて、ちょこっと座って飲み物を持ってみんなを見ていた。
ある職員が「日下さんも着けよう!」と言ってトナカイの角やらサンタの赤鼻をつけて「かわいい!似合うー!」など楽しんでいた。

実はこれ障害者虐待の可能性があったのだ。
施設というと空間の中、世の中の非常識が常識になってしまっていた。
大の大人”かわいい”という表現は適切ではないし、認知症が入っている日下さんに無理に仮装グッズを付けさせていた。
施設ではよくある風景かもしれないが障害者自立支援法が出来てから、障害者虐待のガイドラインが具体的かつ細かく定められいたのだ。こういった病状、症状を無視して物を付けたり、利用者へんの呼び方、表現などについて大きくは虐待に繋がらなくても、虐待の芽になるような言動は適切じゃないと定義された。

今になって思うと日下さんにかわいいや、認知症を逆手に取って職員が本人の意志とは関係なくつけたりしたのも虐待に繋がっていたんじゃないのかなーと今更、改めて思うところであった。

ちなみに後日、入江施設長が日下さんに同行し、利用料金を払う為に口座からお金を降ろしたのだが、何故か200万もなくなっていた事があったが、私は一切知らないし施設長を疑ったことはない(大嘘)
これが事実なら金銭的虐待どころか刑事事件ものである。

おわり。
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