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利用者さんのお話
滝さん
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施設に新しい利用者が増えた。
滝久美子さんという。なぜこのホームに来たかというとDV避難施設から期限が来たのでこちらにお願いします、という流れだった。
当初、ご本人と顔合わせした時には少し不安そうな声だったが自己紹介と、これからよろしくお願いします、と挨拶を済ませた。
最初のうちはなぜこのホームに来たか分からなかったが、徐々に滝さんの症状があらわになってきた。
①感情的になると大声を出す。
②壁を叩いたり、モノを投げたりしてしまう
滝さんは今までの生活では少し気になる程度の知的障害だったのである。
ちなみに私が知的障害者の支援が苦手だなと感じるようになった原因は滝さんであった。
ある日、滝さんが他の利用者の聡子さんと口論になってしまった。
丁度昼時であり、配膳もされていた。滝さんは感情を抑えきれずに聡子さんへトレーをぶちまけた...
聡子さんは食事を体に被り、泣き始めた。滝さんは自室に戻る際に壁を蹴ったり、ティッシュを投げたり...
兎に角、みんなが不穏になってしまう状況であった。
そう、この一件で滝さんは軽度の知的障害、社会参加の機会が今まで少なかった事が判明した。
入居前のケア会議では、一切触れられていなかったが軽度の知的障害があったのだ。
知的障害にもいろいろあるが、、大まかにいうと軽度の知的障害は感情のコントロールが難しい、一つの事に固執しやすいという傾向があると私は経験からそう思った。
それでも、滝さんが自分が知的障害である事を理解してもらうよう自己研究、自己分析を重ねていった。
またある時は症状がひどく、担当の病院へ指示を仰ぐと
「それは性格なので、病気じゃない。そちらで対応してください」と言われ、匙を投げられたようだった。
ある雪の日、滝さんは他の女性利用者と、まぁ案の定”K事務長を独占してる”という事で口論になった。
正直、面倒だったのでなんか打開方法はないかなと考えた。
そして、滝さんの話を聞くふりをしつつ、玄関間に出てもらった。
そこで私は「雪合戦だ!」といって滝さんに向けて雪玉を投げてみた。
滝さんも今までの持っていた感情を持ちつつも私に投げ返してきた。
ふたりは息が切れるくらい合戦をし、いつの間にか滝さんは泣きながら笑っていた。
本人曰く「悲しいのと、楽しいのがまざってもう訳が分からないし、こんな時に雪合戦するK事務長が信じられない」と泣きべそをかきつつ笑って言ってくれた。
電車に飛び込もうとすることもあったが、それはまた別の機会に紹介できればと思う。
知的障害が軽度でも集団生活ではけっこうハードルが高いことを知ってもらえればなと、私は願う。
おわり。
滝久美子さんという。なぜこのホームに来たかというとDV避難施設から期限が来たのでこちらにお願いします、という流れだった。
当初、ご本人と顔合わせした時には少し不安そうな声だったが自己紹介と、これからよろしくお願いします、と挨拶を済ませた。
最初のうちはなぜこのホームに来たか分からなかったが、徐々に滝さんの症状があらわになってきた。
①感情的になると大声を出す。
②壁を叩いたり、モノを投げたりしてしまう
滝さんは今までの生活では少し気になる程度の知的障害だったのである。
ちなみに私が知的障害者の支援が苦手だなと感じるようになった原因は滝さんであった。
ある日、滝さんが他の利用者の聡子さんと口論になってしまった。
丁度昼時であり、配膳もされていた。滝さんは感情を抑えきれずに聡子さんへトレーをぶちまけた...
聡子さんは食事を体に被り、泣き始めた。滝さんは自室に戻る際に壁を蹴ったり、ティッシュを投げたり...
兎に角、みんなが不穏になってしまう状況であった。
そう、この一件で滝さんは軽度の知的障害、社会参加の機会が今まで少なかった事が判明した。
入居前のケア会議では、一切触れられていなかったが軽度の知的障害があったのだ。
知的障害にもいろいろあるが、、大まかにいうと軽度の知的障害は感情のコントロールが難しい、一つの事に固執しやすいという傾向があると私は経験からそう思った。
それでも、滝さんが自分が知的障害である事を理解してもらうよう自己研究、自己分析を重ねていった。
またある時は症状がひどく、担当の病院へ指示を仰ぐと
「それは性格なので、病気じゃない。そちらで対応してください」と言われ、匙を投げられたようだった。
ある雪の日、滝さんは他の女性利用者と、まぁ案の定”K事務長を独占してる”という事で口論になった。
正直、面倒だったのでなんか打開方法はないかなと考えた。
そして、滝さんの話を聞くふりをしつつ、玄関間に出てもらった。
そこで私は「雪合戦だ!」といって滝さんに向けて雪玉を投げてみた。
滝さんも今までの持っていた感情を持ちつつも私に投げ返してきた。
ふたりは息が切れるくらい合戦をし、いつの間にか滝さんは泣きながら笑っていた。
本人曰く「悲しいのと、楽しいのがまざってもう訳が分からないし、こんな時に雪合戦するK事務長が信じられない」と泣きべそをかきつつ笑って言ってくれた。
電車に飛び込もうとすることもあったが、それはまた別の機会に紹介できればと思う。
知的障害が軽度でも集団生活ではけっこうハードルが高いことを知ってもらえればなと、私は願う。
おわり。
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