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古の魔王
188.みんなでバーベキュー
しおりを挟むジュ~~~ッ!
鉄板の上で具材が火に通される。
突き刺さるような太陽の光の中、焼き料理をするのは効くな~。
お昼も近くなったので、俺はバーベキューを始めていた。
「コウヘイ、これも頼む」
水着姿のミーシャが、身長の倍ほども有るカジキマグロのような魔物を担いで引きずって来た。
「おいおい、また随分と大物だな……」
俺は半分呆れながらミーシャに言う。
「うむ。ちょっと沖に泳ぎに行ったら襲われたのだ」
いやいや、慣れない水中でこんな大物を捕まえるのがすごいよ。
「その大物は後で捌いて刺し身にしちゃおう。ちょっと待ってな……」
俺はミーシャにちょっとの間待っててもらうと、大地の力で大きい台を作った。
この大物が捌けるくらいのな。
カジキマグロもどきを氷の魔術で固めて霧夢の腕輪に放り込んでおく。
ちょいちょいっとな。
「むう。ミーシャに負けたか……」
見ると水着姿のガーベラも肩に大きな魚を担いでいる。
あれは拠点にお持ち帰りかな?
俺はせっせと鉄板の上の具材の面倒を見る。
「あなた様、私も何か手伝いますか?」
「のじゃ!」
「マスター、簡単な作業ならワタシにもできます」
「これは何をしているんですカ?」
水着姿のアルカ、ゼフィちゃん、ティファ、キキが手伝いを申し出てくる。
そうか、そんじゃちょっと焼くのを手伝ってもらうかな。
「いいぃ匂いがぁしますぅ」
「ですです~」
「アタシは腹が減ってきたんだぜ!」
「クルルゥ」
「キュアッ」
「ボクもお腹へりました」
三人娘とクーデリアもやって来た。
マロンが籠を持ち、その中にヴェルとアウラがいる。
「お姉ちゃんもお腹ペコペコなのよう」
「あい~」
エウリフィアとノーナも匂いにつられてやって来る。
「ぷぽ~……」
ルンに跨ってポポも来た。
ルンは暑さのせいか、心なしか形に張りがない。
よし! みんなも揃ったことだし始めちゃうか!
俺は霧夢の腕輪から皿とフォークなどを取り出した。
食材にかけるソースの準備も万端だぜ。
ジュースなどの飲み物も忘れずにな。
まずは串に刺さった大ぶりの肉からだ。
じゅうじゅうと油が滴り、煙を上げる。
う~ん! この香りだー!! たまらん。
「新鮮だからサッと火を通したら、いけるからな!」
俺は皆に肉串を勧めた。
皆が熱せられたグリルの上から肉の串を次々と取って口に運ぶ。
「どうだい? お味の方は?」
「あなた様、この肉は素晴らしいです!」
「のじゃ! はぐはぐ……」
「マスターも食べて下さい。もぐもぐ……」
「これは牛ですカ? 肉本来の濃厚な旨みのなかニ、ほんのり甘みもあって美味しいデス!」
アルカ、ゼフィちゃん、ティファ、キキは蕩けそうな顔をして食べていた。
いや、ティファはあんまり表情が動いていない、か?
お次はアスパラベーコンと海鮮だ!
次々にグリルの上に投入していく。
「マスター、食材はワタシが見ます」
おっ? そうかそうか、じゃあ少しお願いしようか。
俺も肉串を頬張る……ンンまい!
歯がスッと通るな! 口の中で溢れ出した肉汁が暴れるようだ。
焼いて塩コショウしただけだぞ? これほどとは……さすが異世界産の牛だ!
「アスパラベーコンがぁ美味しいですぅ」
「ですです♪」
「海老もぷりぷりなんだぜっ!」
三人娘も舌鼓を打っている。
「クルル」
「キュアっ」
「ぷぽぷぽ♪」
おちびーずたちも、お裾分けされてありついているな。行き渡っているようだ。
ルンもシュワシュワとせわしなく食材を取り込んでいた。
「ああっ! ボクの狙っていたお肉がぁ……」
「とても美味デス! くーサン。はぐはぐ」
食材はまだまだあるからな。喧嘩するんじゃありませんよ?
「うむ。これは上級の貴族でもなかなか味わえないだろうな」
「むむ……たしかに国で出される饗宴とは違った趣だが、これはいいな!」
ミーシャとガーベラがなにやらバーベキュー談義をしている。
早いものがちだぞ? 食材は。飾り立てる言葉などいらん! 食すのみ。
「熱々の串を食べて~、はぐはぐ。ここで黒いのをキュ~っと! くぅぅぅ効っくぅ!」
「あう! あちゅいのおいしいです!しゅわしゅわと合います!」
エウリフィアとノーナが串にかぶりつきつつ、コーラで一杯やっている……飲んだくれか! おっさん臭いぞ。
「みんな、まだ腹はあけておけよ?」
俺はみんなに声をかける。
まだとっておきがあるからなっ!
ここで特上のステーキを投入! 竜のステーキだ!
ジュワジュワと焼き上がっていく竜のステーキ。この匂いがたまらん!
ティファと俺でせっせと焼いていき、皆にさらに肉を配っていった。
刺し身は夜にするか……。昼は肉三昧だ!
みなに竜のステーキが行き渡ったようだ。どれどれ、俺たちもいただくとするか。
みなが先にステーキと格闘する中、遅れて手をつける。
スッと抵抗なく入っていくナイフ……期待感が高まる!
隣のティファをちらりと見ると、黙々と肉を口に運んでいる。
心なしか手が早い!
俺はゴクッと喉を鳴らしてフォークを突き入れ、おそるおそる口へと運んだ。
おお! これは……なんというか牛っぽくもあり、どこか鶏肉のような食感もする。
前に竜丼を食べたが、あの時とは違う感動がそこにはあった……。
これを食べれないのは人生の損失と言えるだろう。異世界に飛ばされてきて良かったんだぜ。
そうして俺たちは冬まっただかの中、あったかい、もとい暑い南の島で避寒するのだった。
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