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眠り姫

163.少女の夢の中

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 ザン! ザシュ! ブオン! ヒュガッ!

 ミーシャ、ガーベラ、キキが各々武器を振るう。
 ミーシャは短剣二本、ガーベラが大剣、キキが槍だ。

 振るわれた相手は致命傷を負ったのだろうか?
 サラサラと白い粉に変わっていく。

 ここはニヴァリスという少女の夢の中。
 辺り一面は見渡す限り荒野である。
 荒い地面に岩がゴロゴロと転がっている。

 俺たちは夢の中の荒野をあてども無く歩いていたら、黒い影のようなモンスターに襲われたという事だ。

 黒い影は様々な形をしていた。
 ゴブリンのようなものから狼らしき形と千差万別だ。
 大きな虫の形の黒い影もあった。

 これらの影はそれほど丈夫な様ではなく、大体一撃でほふる事ができた。
 敵が固くない、というのはありがたい。
 が、ドロップもなんも残らないというのはな……。
 とはいえ、ダンジョンじゃないからしょうがないか。

 俺は軽く一息ついて風に流されていく白い粉を見る。
 なんかこの敵の倒れ方、見たことあるよな。

 いや、まさか。
 こんないたいけな少女にまで手を出すヒマがあるとは思えない。
 いくらなんでもアイツらだってそんなヒマじゃないよな?

 しかし、夢の中といっても随分と広いんだなここは。
 もう結構な時間を歩き続けている。

「果てしないな、ここは」

 俺がつい、ボヤく。

「うむ。夢の中とは言え、油断が出来ないな」

「あい。せいじょさんのゆめのなかカラカラ」

「むぅ、敵もこう、手応えが無くてはな……」

「こうへいサンに貰ったこの槍は使いやすいデス!」

 それぞれ、ミーシャ、ノーナ、ガーベラ、キキだ。
 ノーナはアインの背負籠の中にいる。
 俺の頭の上ではルンがミョンミョンしていた。

「ちょっと俺が探査してみる」

 俺たちは立ち止まり、俺が地面に膝をつく。
 大地の力を流して探査を開始。

 すると、地面が同心円状に肥えていく。
 何かの芽も生えてきた。
 なんだ、これは……?

 あっという間に膝下くらいの草に覆われた。
 ちょっと力の通り方が現実世界と違うぞ?

「む、これは凄いな」

「あい! 草さんぼうぼう!」

「婿殿、やるな」

「すごい……ふさふさデス」

 俺自信もびっくりしている。
 探査をしただけで、こんな事になることはなかったからな。

 俺はしばらく探査を続けていると違和感を覚えた。
 等間隔に六つ、いや七つ? 違和感がある。

「問題がありそうな箇所が七つくらいあるな」

「ふむ、七つか。多いな」

「あい。ななつ」

「婿殿、手応えのある敵を所望するぞ」

「キキは簡単な方が良いです……」

 俺たちはとりあえず一番近い場所に向かうことにした。
 周りはなんだか木も育ち始めている。

 カラカラの大地よりは茂っている方が良かろうと思い、俺は大地の力を足先から流すようにして歩いた。

 俺たちはグングンと実り豊かになる土地を歩き、やがて問題があるであろう場所へとたどり着いた。

 何かの舞台だろうか? 石造りの円形の黒い台の真ん中に大きな黒い者がいる。
 こいつは黒い影の様なモンスターではなく、実体がちゃんとある。
 俺は鑑定を通してみる。

 ~~~~~
 ミノタウロス
 非常に獰猛
 ~~~~~

「みんな、ミノタウロスみたいだ。油断しないように」

「うむ」

「あい」

「やっと手応えがありそうだな! 婿殿」

「とても強そうデス」

 地面に胡坐をかき、腕を組んでいたミノタウロスが目を開く。
 側に置いていた戦斧を手に取り起き上がった。

 デカいな。
 少なくとも四腕熊よりかは大きい。
 腕はみっちりと筋肉がつまっており、胸板はまるでガ○ダムだ。
 太もももいくつもの筋肉で別れている。ブロッコリーのようだ。

 俺たちを見下ろすその風貌は威圧感が半端ない。
 よく物語で最初のボスとかで登場するけど、そんなもんじゃ無さそうだぞ?
 まるで黒い山のように見える。

 ノーナをアインの背負籠から下ろす。
 アインが盾を構えて前に出る。

 ズガアアアアアアアアアアアアン!
 ミノタウロスの戦斧の一撃をアインが盾で受け止める!

「あい」

 カッ! ズドオオオオオン!
 ノーナの雷魔術がミノタウロスに入る!
 が、効きが悪いか? 電撃が黒い表皮で受け流されている。

「シッ」

 キン カンッ
 ミーシャの連撃がミノタウロスの戦斧に阻まれる。
 でかい図体なのに、なかなか素早い。

「むぅん」

 ブオン ガッキン!
 ガーベラの大剣とミノタウロスの戦斧で鍔迫り合いだ!

「でやっ」

 ヒュガッ!
 キキの獣王の槍がミノタウロスに突き刺さる!

 ズドオオオオオン!
 横からアインが右ストレートを入れる!

「ブモオウッ!」

 ミノタウロスに効いたようだ!

 ミノタウロスが怯んだ隙に俺は大地の力で拘束をはかる。

 ズモモモモモモモッ
 ミノタウロスの足が大地に飲み込まれていく。

「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ」

 ミノタウロスが雄叫びを上げると、ヤツの体から黒い蒸気のようなものが湧き出てくる。
 キキに付けられた刺し傷が回復している。
 この分だとアインのパンチも回復されたか?

「ブッ!モウッ!」

 バキッ バキン!

 ミノタウロスは気合を入れると、俺の大地の力の拘束から抜け出した!
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