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魔大陸

128.天龍のお姉さん

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「うん、それでキミはどう責任を取ってくれるのかな?」

 俺は今、綺麗なお姉さんの前で身を縮こませている。
 森の拠点のリビングだ。
 俺の膝の上でヴェルとアウラがじゃれ合っている。

「えっと、そのう……不可抗力と言いますか……」

 ヴェルとアウラが身をよじらせてキャッキャと楽しそうだ。
 二匹がそろって俺の手をあむあむと噛んできた。
 こらこら、お兄さんは今お話中なんだよ?

 その様子を、綺麗なお姉さんは目を細めて眺めるのだった。



 俺たちは森の拠点に戻ってきた。
 あの後ティファが竜の巣のダンジョンとなにやら交渉をして、皆で転移で戻ってきたのだ。

 俺もよく分からんが、竜の巣は現在マスターが存在しないらしく、仮のマスターとして承認された。
 マスターとして承認されることにより、俺の拠点まで転移が開通するようになったのだ。

 その際、竜王国の姫であるガーベラまでついてきたが、その件は後で話しをする。
 混沌神の欠片はロキ神の像に捧げておいた。

 日常に戻り、まったりと生活を送っていたある日。
 俺は風呂に入ろうと脱衣所から風呂場に入った時だった。

 誰かが風呂場に居る!
 おかしいな。ちゃんと脱衣所も人が居ないのを確認したはずなのに。

 そこで出会ったのだ。
 この綺麗なお姉さんと。

 髪は長く、色は金とも銀とも取れるような不思議な色だ。
 どこかで見たことあるような色合いだ。どこでだっけ?
 瞳は金色、形の良い胸にくびれがしっかりとあり、出る所は出るといったプロポーションだ。

 その綺麗なお姉さんは「話がある」と言うと風呂から上がるのだった。
 そして冒頭に戻る、というわけである。

「それで、どうしてくれるのかな?」

「いや、悪気は無かったんです。すみません!」

「悪気があろうとなかろうと人様の子をかどわかすなんて、良くないことです!」

「えっ?」

「えっ!?」

「あのう、人をかどわかすとはどういうことでしょう?」

 俺は疑問に思い、綺麗なお姉さんに問いただす。
 綺麗なお姉さんは眉間にシワを寄せるとこう言った。

「キミのその腕の中にいる子よ! さらってきたんでしょう!?」

「ええ!?」

 俺の腕の中にいるのはヴェルとアウラだ。
 どっちのことだ!?
 それとも……両方?
 とりあえずは俺が綺麗なお姉さんの裸を見た事は問題視されていないようだ。

「えっと……ヴェルのことでしょうか? それともこのアウラ?」

 俺は右手にしゃぶりついているヴェルを掲げた後、左手にあむあむと噛みついているアウラを掲げた。

「そっちの天龍の赤ちゃんよ」

 綺麗なお姉さんは片手で眉間をもみほぐしながら、もう片方の手でアウラを指す。

「アウラの方でしたか。アウラはドワーフの国に行った時に卵を預かる事になりまして……」

 俺はドワーフの国で起こった邪神の眷属絡みの説明をする。

「……で、その邪神の眷属のガイシャリってヤツの荷物の中にですね、孵化寸前の卵が入っていたんです」

 綺麗なお姉さんは腕を組んで俺の話を聞いていた。
 形の良い胸がつぶれて盛り上がっている。

「そう。それでキミはその子をどうするつもり?」

「どうするも何も養育していくつもりですが……」

「人に龍が育てられますかっ!」

 ダン! とテーブルを叩く綺麗なお姉さん。
 ピクリ、とヴェルとアウラが首を向ける。

「クルルゥ?」
「キュアッ?」

「う……ゴホン! つまり、元の天龍の親御さんのところに返しなさい、ということよ!」

 綺麗なお姉さんは、からしわぶきをするとそっぽを向いて言い放った。

「いや、まぁ、この子に親が必要なのは分かっていますが……この子の親の事をご存知で?」

 俺がそう尋ねると、

「う……ゴニョゴニョ(仲間内でも子を産んだって話は聞かないし、何処の子なのかしら?)」

 綺麗なお姉さんはなにやらゴニョゴニョと言うと、キッと俺の方に向き直る。
 腰に手を当て、俺の方を指差し言い放った。

「とにかく! その子の養育は、この天龍でもあるエウリフィアお姉ちゃんも見ますからね!」

 そうしてこの天龍のお姉さんことエウリフィアも俺の家に住むことになるのだった。



 エウリフィアがまた風呂に入ってくるというので見送ると、俺は新しく部屋を作ることにした。
 ガーベラとエウリフィアの部屋だ。

 俺たちについてきたガーベラは現在、客間に泊まっている。
 主にアルカやゼフィちゃんが遊びに来た時に使う部屋だな。

 いつまでも客間というのもアレだし、ついでだから作っちまうか! という事だ。
 そのガーベラは、今はミーシャと狩りに出かけている。

 のは、いいんだが、一つ困った事がある。
 俺の事を呼ぶんだよ。
 ……「婿殿」って。

 いやいや、婚約した覚えは無いと言ってみても、婚約の儀はもう済ませたとか言うし。
 何でも竜人族の習わしで、お互いの肩口に噛みつくのが婚約の儀らしい。
 俺は噛んでいないよ!? って言っても、その後にしっかりと了承したではないか、と言われる。


(嫌なわけ……ねぇだろ)


 んあああああああああああ! 確かに! 俺、言ってた!
 俺は悶々としながらもガーベラとエウリフィアの部屋を大地の力で作り上げた。
 ベッドと机も完備だぜ! ガランとしていて他になにもないけどな!
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