ほんとうに君が好き。

カスミソウ

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色付く日常

旅行準備

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「ねぇ、香菜。私たちに隠してることあるんじゃないのぉ?」
「さ、さあ?無いと思うけどー…」
「とぼけんなって!ほら、ふーこからも言ってやりなよ!」
「え、お、おう!香菜姉、吐くんだ!!」
「げっ、風子も敵かよ…。やめろって声でかいし」
「ご、ごめんっ」
「怯んでどうするふーこ!?」

昼休み。相変わらずの調子で、三人はお弁当を食べながら過ごしていた。
今日は香菜への尋問で盛り上がっていた。どうやら昨日、友里がバイト帰りに香菜と男が歩いているのを見たと言うのだ。

「ともかく、あの人誰よ?」
「いや、だから、んなんじゃねーって…」
「もう!私ら友達じゃん?素のままを見せ合わなきゃダメだろ!?」

友里が今まで以上の勢いで香菜に突っかかっていた。香菜は執拗に迫ってくる友里と目を合わせないよう、必死に視線を逸らす。

「……素のまま、だぁ?」
「そう!隠し事はダーメー!!」

「……っ、んな事言ったら、引かれるし…」

へ…?

あれ、香菜姉なんか小声で言わなかった?どうやら友里には聞こえなかったみたいだけど…。

「おーいー、かーなぁ!!」
「あーっ!もう分かったよ!!言う、言います!」

はーっと香菜は大きな息を吐く。友里の攻め具合に耐えきれなくなったようだった。

「カ・レ・シ!!昨日告られて付き合ったの!」
「おおっ!?マジー!」
「凄いね、香菜姉!」

もー…、と香菜は顔を抑えて下に俯く。風子と友里はニヤニヤしながら照れる香菜を祝う。
そこで、おめでたい空間の中に新たに入ってきた人物がいた。

「ごめんなさい、今ちょっといいかしら?」
「……⁉︎あ、相原さんっ?」

ど、どーして相原さんがうちらに話しかけてきたんだ…?あんなに接触しないよう言われてたのに…。

目を見開く風子を傍らに未来は友里に向き合った。

「ん、どしたの?相原っち」
「…修学旅行の最終日の、班での自由行動、私達の班だけ行き先何も決まっていないと思って」
「あ、それねー」

ふふん、と友里は偉そうに未来の前に立った。首を傾げる未来に少し照れながら答えた。

「私、彼氏居るんだよ。二つ隣のクラスなんだけどさ」
「…それがどうかしたの?」
「もう、頭お堅いなぁ。だから、その自由行動の時間!彼氏と周ろうと思ってんだよねー」
「……班行動しないってこと?」
「ん!そゆことーっ!ごめんねー」

しん…、と、沈黙が流れる。未来の頭の上に黒い渦が浮いている気がして、風子と香菜はびびって縮こまった。

「……あなた。それはルール違反だって分からないの?」
「え?みんなしてるよ、カレカノの人達はー」

あ!、と友里は香菜の方に振り返った。香菜はとんでもないことに巻き込まれた、という表情で肩をびくっと震わせた。

「香菜も彼氏できたんだよね?なら、やっぱ別行動するっしょ?」
「え…、え?」

香菜はちら、と未来の様子を伺った。未来はその怯える目をみて、再度言葉を口にした。

「別に、正直に言ってくれて大丈夫よ」
「あ、じゃあ、はい。そうです…」
「……そう、分かったわ」

未来は香菜からの返事を聞いて、スッと自身の席に戻って行った。怖えーなー、と友里が笑って、命知らずだな、と香菜が突っ込んでいる。
風子はその未来の後ろ姿をじっと見つめていた。

相原さん、生徒会なのに見逃した…?こんなに堂々と違反を宣言してたのに…。

「にしても香菜に彼氏かー!良かったな、香菜」
「あ、ありがとう…」
「やっぱどこか行くんだね?うちらと場所被ったらちょっと恥ずいね」
「…ん、そだね。あたしらも気をつけるよ…」
「…あ!風子ごめんね!最終日以外は一緒に過ごそうねー!」

友里は風子の方に向き直り笑いながら肩を叩いてきた。風子も困りながら笑って、うん、と返事をした。

騒がしい雰囲気の中、どこか寂しげな感じを醸し出す不思議な休み時間が終わった。



放課後、いつもの三人は教室に残って修学旅行の予定を考えていた。修学旅行は3泊4日。最終日は小樽で自由行動。3日目はクラスごと目的地が違い、風子達のクラスは積丹半島となっていた。

「積丹半島に売ってるソフトクリーム超美味しいらしいよ?」
「マジ?それは外せないな」

風子以外の二人は携帯で口コミやブログなどを見て想像を膨らましていた。

相原さんも一緒にこの場に居れたら良かったんだけどなー…。クラブ18時までとか大変だよなぁ。

風子はぼーっと忙しい未来に思いを馳せていた。

「はあぁー…」
「いや、何ためいきついてんだよ!ここはワクワクしないと!」

友里に突っ込まれて、感情が表に出てしまっていたことに気づく。風子はごめんごめん、と手を合わせて謝った。

「えーと、1日目と2日目は民泊だよね?確かうちらは農家…」
「そうそう、これ結構面倒臭いよね。ひたすら作業手伝うんでしょー?」
「そう言わないの!案外楽しいかもだしっ」

香菜は文句を言う友里に注意し、ふうっとため息をついた。

そう言えば今日の香菜、あんまり元気ないよな。どうしたんだろ?

風子の心配を他所に、友里は笑顔で二人に提案した。

「夜は枕投げしようね!恋バナも!」
「生徒会員さんに迷惑かけない程度になー」

そんなこんなで他愛もない話をして、三人はそれぞれの帰路に至った。



『…っていう感じかな?二人とも結構張り切ってるよ、修学旅行の準備』

その日の夜、21時を回った頃、小川家のベランダで、1人、風子は電話をしていた。相手は勿論、未来だった。

『そう、ありがとう。わざわざ連絡をくれて』
『いやいや!二人にも伝えておいてって頼まれたし!それに…』
『…それに…?』
『…っ、いや、何でもないです…』

危うく自分の心の内を見透かされてしまいそうで、滑りそうな口を抑えた。まあ、恋人なのだし、多少好意が剥き出しでも良いとは思うのだが…、いざとなると恥ずかしくなってしまうものだ。

『……そういえばさー、小樽、2人行動になっちゃうね…?』
『そうだったわね…』
『ど、どこか行きたいお店ある!?』

風子は恥ずかしさを隠そうと焦って話してしまう。風子はそんな声色を聞いて、ふふっと笑った。

『そういう小川さんは行きたいところないの?』
『わ、私?そうだなー…。ガラス細工とか見たいかも?あ、あとオルゴールも有名なんだよね!?』
『じゃあ、私もそこで』
『ちょっ…、ちゃんと考えてよ~!』

未来のあっさりした返事に、風子はほっぺたをぷぅーっと膨らませた。未来は失礼ね、と言葉を発した。

『考えているわよ、小川さんの隣に居れたらどこでも楽しいだろうなって』
『……っ!!』

ぼっと風子の顔が赤くなる。もごもごとする風子の声を未来は頬を染めながらたっぷり堪能した。

相原さんはこういう事スラッと言っちゃうんだな…、敵わないや…。

二人はその後も暫く話を続け、おやすみの挨拶を交わした。もう後数日で修学旅行が控えている。風子と未来もそれぞれの思いを馳せて、その日を待ち望んでいた。
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