ほんとうに君が好き。

カスミソウ

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はじまり

二人の出会い

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季節は初冬。少し空気も冷たくなって、カーディガンが恋しくなる季節。

私は小川風子、17歳。父親の仕事の関係でここ、松風高校の転校生となりました!現在、初登校中!前にいた学校よりはちょーっと田舎かなぁとは思うけど、新鮮で楽しみ。

前通ってた学校では、私はいわゆるイケてるグループに所属してたんだよね。いつも放課後にカラオケ行ったり、買い物したりして。

でも、困ったことが一つだけ。

私、一回も恋愛したことないんだよね。そのグループ自体男子と仲良かったし、告られたことは何回かあった。でもなーんかしっくりこなくてさー。自惚れてるのかな?分かんないけど!

だから、本気の恋愛して、松風高校で青春できるように頑張るんだ!

「…あれ?」

こんな道、下見の時通ったっけ?そーいえば周りにいた同じ制服の子達がいない!
ボーッと過去を振り返ってたら迷っちゃった⁉︎ちょっ、私のバカ!!

焦って私は地図を見ようと携帯の在り処を探る。が、

「やっば、携帯も忘れた!どーしよぉ…」

転校初日の遅刻は避けたい…!けど、道分かんない!……積んだ。

「あの、」

ん?顔を上げると、そこには黒髪の女子生徒が立っていた。

「松風高校の生徒ですよね?」
「え…?あ、はい」
「おはようございます。私は相原未来。生徒会をしています。今日転校生が来ると聞いていたのですが、もう予鈴だというのに来る気配がないので、迷っているのではと思いまして…」

そう凛とした顔で話した彼女は、容姿端麗という言葉にぴったり当てはまった。睫毛は長く、手足は華奢で、髪はロング。そして、少し寂しそうな表情をする儚い少女だった。

「時間がないので、早く行きましょう」
「あ、うん!」

風子は、未来の少し後ろを歩いた。たまに冷たい風に乗せて香る、未来の髪のいい匂いに、風子は緊張しながら、前を歩くその後ろ姿を見つめていた。



「えー、はじめまして!小川風子です。松風高校すっごく気に入りました。仲良くしてくれたら嬉しいでーす!」

あの生徒会の女の子のおかげで、無事、HRに間に合ったんだ!かなりギリギリだったけど…笑

幸い、クラスには仲良くなれそうな人達もいるし、全体の雰囲気も良さげ。
しかも、あの生徒会の子も同じクラスだった。大人びてて、同学年だとは思わなかったんだけど…。

「そういや、小川。学校はもう案内してもらったか?」

担任の先生が声をかけてきた。私は首を横に振ると、

「じゃあー…相原。生徒会だし、小川を案内してやってくれ。」

私と少し離れた席に座っていた未来は嫌な顔一つせずに、わかりました、と引き受けてくれた。

「小川さん、昼休みで大丈夫?」
「うん、よろしくー!」

約束を交わした後の私は、何故だかとてもわくわくしていた。


昼休み。
昼食を早めに済まして、2人は教室の外に出た。

「この階段を降りれば食堂、左に曲がるとお手洗いがあるわ」
「ほーほーなるほど…」

2人で並んで校舎をまわる。寒いとは言っても、まだ廊下は生徒達で賑わっていた。

あ、そういえば、私の友達作りは絶好調です!私と同じように、お化粧とかネイルとか大好きそうな子達のグループに入れてひとまず安心。
それにしても、相原さんが誰かと親しく話してるのはまだ見ていない。けど、みんなが遠巻きに彼女を見て、特別な存在と思っているのは肌で感じたんだ。

「ねーねー相原さん。相原さんって普段何してるの?」
「普段?」

施設の紹介の時しか話さない未来との距離感に、コミュニケーションを取りたくてうずうずしていた風子は質問を投げかけた。

「ほら、放課後とかさ。誰かと遊んだりすんの?」

未来は風子の方を見ず、歩くスピードも緩める事なく答えた。

「基本的には遊ばないわ」
「えぇ⁉︎」
「何かおかしいことを言ったかしら」
「い、いや、ふつーにびっくりしただけだけど…」

風子の反応に未来はふぅ、とあからさまなため息をつく。まるで呆れているかの様な。

「私、吹奏楽部に所属しているの。オフなんて滅多になくて、勉強もしなくちゃいけないんだから、遊んでいる暇なんてない。それだけよ」
「…へ、へー」

もしかして、遠回しに私をバカにしてる⁉︎確かに髪は茶髪だしスカートも短くしてるから、遊びまくってるように見えるだろうけど。(まあ、実際そうだし)

相原さんは生徒会だから、ほんとは私みたいな人、嫌いなのかな…?

最初に優しくしてくれたからなのか、心がズキっと痛んだ。
思い込みならいいんだけど。

それでも、風子はめげずに話し続けた。

「…あ、そうだ!明日にでも一緒に食堂行かない?今日のお礼も兼ねてなにか奢るし!」
「いらないわ」

わー…。即答じゃん。

どうも人間同士の無駄なじゃれ合いを嫌うタイプらしい。
未来は風子と隣で並んで歩くのを止めた。

「これで学校案内は終わりよ」
「え?」

気づけば自教室の前だった。そうか、もう終わりなのか。
会話は上手く続かなかったが、それでも終わってしまうことを惜しく感じる自分がいた。

「朝みたいに校内でも迷う事がないよう、早く覚えるのよ」

そう言って、未来は颯爽と教室に入って行こうとした。

あっ、そういえば、言わなきゃいけない事あんじゃん!

「相原さん!!」

その声に反応して未来は風子の方を向く。その表情は少し驚いた顔をしていた。

「今日は一日ありがとね!それと、これからもよろしく!!」

「…っ」

教室に響き渡る風子の言葉を聞いて、未来は耳まで赤くして、俯いた。

その時微かに動いた唇は、うん、と発せられたように感じた。

……かわいい。

そんな未来の姿に風子もぼっと顔が赤くなり、その自分の反応に驚いた。

心臓の高鳴りが聞こえる。

…私、もしかして…?

心がキュッとなる。

あぁ、そうか。
風子は確信した。

これが、人に恋するってことなんだ。




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