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第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?
第040話 涙の無限ループ
しおりを挟む「リリスちゃん、相手してくれる?」
「んっ」
まずはコレットか、俺より10cm高い140cmで片手剣に小楯を使う。今は竹刀に小楯を装備してる。竹刀は怪我をしないように作られていて、持ち手に重りが付いて実際の剣と同じくらいの重量バランスになっている。
俺もリリィの代わりの竹刀を持って構える。コレットは小楯を前の方にして斜に構えて距離を詰めて来た。
「やっ!」
コレットが踏み込んで突きを放って来る。けど良く見えてる。体をずらして竹刀を弾いて胴を薙ぐ、けど小楯で弾かれた。コレットは更に踏み込んで竹刀を大振りして来た。
意外と攻撃的、隙はあるのに勢いで押されてしまう。それでも冷静に見て躱して逸らして隙を作ってから小手を打って竹刀を落とさせた。
「ああー、やられたー」
『危なげ無かったが守りに入り過ぎじゃな』
うぐっ、でも下手に攻めてほぼ初心者のコレットに負けたらと思うとね?
「えと、剣を落としたら終わり、違う。実戦で剣を落としたら、……命を諦める?」
「うっ、そっか、……確かに。ごめんなさいリリスちゃん」
偉そうで柄じゃないけど年長者としてアドバイスっぽい事もしないとな。頼むぞリリィ。
『ってリリィ任せか。――まあ良いがの』
「次私ぃー、リリスちゃんお願いしまぁーす」
「んっ、お願い、します」
ラビィは短槍か、あんまり相手した事ないんだよな。ラビィもコレットと同じくらいの身長で見上げる形になる。女子の中でも低のはコンプレックスなんだよなぁ。
ラビィは短槍の竹刀を此方に向けながら前がかりの姿勢で距離を詰めて来る。けど中々手を出して来ない。仕方ない、コッチから行くか。
軽くフェイントを掛けて左側に回り込んで面を打つ。下がって躱された。けど追って踏み込んでラビィの竹刀を横に弾いて顔の前に竹刀を突き付ける。
「っ……うう、参りましたぁ」
「……ラビィはもっと、アグレッシブに来るかと」
3人の中で一番明るくて物怖じしないタイプだったからな。実戦では慎重派か。
「あはは、ミリアーナさんにも言われたんだよねー」
「慎重は良い。でも体、硬くなってる。もっと体でリズムとる、フェイント、使う」
「んん~、成る程ぉー、ミリアーナさんにはもっと攻めろって言われたけど、どっちが良いのかなぁ?」
「両方、鍛練で、自分に合う形、試す」
「おお~……」
「?? ……何?」コテリ
「リリスちゃんが凄い」
全部リリィのアドバイスだけどな。
「「「いっぱい喋れてる!」」」
そっちかい!!
流石に何日も寝食共にしてチームまで組んでるんだ。ちょっとは喋れるようにならないとな! 俺頑張ったよ!! でもまあ褒められるのは悪くない。うむ、寧ろ良い。
「いっぱい褒める」ふんすっ
「うんうん、頑張ったねリリスちゃん」
「うん、良い子良い子」
あれ? 何か思ってたのと違うんだけど?? もっとこう、称賛的なヤツが欲しかったのに。
『ちょっと喋れるようになっただけで尊敬されるとでも思うたのか? 本当に? ……嘘じゃろコヤツ??』驚愕
リリィが信じられないと言った風に見てくる。そうか、……頑張ったのにな。
「次は私」
ルルか。片手剣に小手、身軽そうだけど鈍臭そうにも見えるしどう来るかな。ルルはこの中で唯一俺より5cmくらい背が低いのが嬉しい。
『ほんのちょっとじゃがの』ボソッ
一定距離を保って右回りに回って来る。でも攻め気が無いように見える。こっちから打って出るか。軽く踏み込んで面を打つ、けど剣で弾かれてまた距離を取られる。
「「………………」」
あくまで攻めて来ないか、埒があかないな。踏み込んで面、弾かれて下がられる前に横薙ぎ、更に踏み込んで打ち込んで行く。でも攻めきれない。――ちょっと距離をとって一息つくか。
「ファイアボール!」
「えっ!」
その言葉に思わず両腕で防ごうとする。けど何も来ない。と思ったら目の前にルルが!? そしてルルの両手が俺の胸に押し当てられていた。
「どーーん」
トスン「ん痛っ!」
そのまま押し飛ばされて倒れてしまった。
『やられたの』
「おお~、ルル勝っちゃった!」
「くっ、私達負けちゃったのに」
「初魔法、初勝利」ブイサイン
「「いやいや、魔法使ってないよね!?」」
「大丈夫? リリスちゃん」
「……~~はぁ、……だいじょぶ」
「さて、んじゃあリリスちゃん? 私達もやろっか。それとも少し休む?」
「……やる」
リリィに回復魔法の補助を受けながら自分の魔法で体力を回復させていく。それにしても情けない。ほぼ初心者のルルにあんなので引っ掛けられて負けるなんて。
「――待った。……私にもアドバイス」
「……負けたのに?」
「負けたのに」
複雑だ。
「…………攻める気、無さそう」
「んっ、苦手」
「でも、挑戦する。――魔法も」
「ふふっ、魔法……頑張る」
「「んっ」」コクリ
『何じゃコヤツ等』
仕切り直してミリアーナと対峙、短めの片手剣の二刀流、で165cmで頭1つ半は高い。肉感的なスタイルに見えて中身は筋肉が詰まってる。抱き付かれた時全く身動きが取れなかったからな。
後マッサージの時改めて気付いたけどかなりの巨乳、胸のマッサージをさせようとして来たけど胸のマッサージって何だ? 結構バカなのかも知れない。
「行くよわよ~」
ドンッと一気に距離を詰められそのまま右の竹刀を振り下ろされる。何とか竹刀を両手持ちで受ける。けどミリアーナはその勢いのまま上下に左右にと打ち込んでくる。ヤバい、力が強くて全く受け流せない。このままじゃ腕が痺れてダメになる。
後ろに下がって距離を取ろうとするけど、ミリアーナの方が早くて直ぐ追い付かれて引き剥がせない。
リズムを取って体ごと右に左に動き出し、更に緩急にフェイントまで入れて来た! どんどん追い詰められていく。どうすりゃ良いんだ!?
何も出来ないままどんどん追い詰められていく。クソッ、そのまま打ち合いが続いていく。いや、一方的に打たれていくだけだ。偶に隙を付いて苦し紛れに竹刀を振るだけで何もさせて貰えない。
クウッ、もうちょっと何か出来ると思ってたのに。せめてっ、ミリアーナの右からの横薙ぎを何とか上に弾いた。体勢を崩しながらもその勢いを利用して回転しながら低く潜り込んで、そして切り上げる!
バシィ!
ミリアーナに右の竹刀で切り払われ、左の竹刀を首筋に突き付けられる。竹刀を落とさなかったのはせめてもの意地だ、けど。
「…………負けました」
ああ、……悔しいなぁ。
「「「……………………」」」
やっぱり俺はランク2が限界なのかね。皆んなにはリリィが言ったまま伝えただけだけど、偉そうにアドバイスなんて出来る立場じゃないんだよな。
何が体の調子が良いだ。魔法も体も全部リリィの力じゃないか。俺自身の才能なんてそんなモンだ。華奢で非力な俺が良い歳して今更何夢見てんだか……はぁ。
「うぷっ……なっ何??」
いきなりコレットに抱き付かれたよ!?
「リリスちゃんは頑張ったよ! 強かったから大丈夫! だからそんなに泣かないで!?」
うえっ!! 俺泣いてんの!? 泣いてんの俺!??
あっ、涙出てる。泣いてるわ俺。うわー! うわー! 恥ずかしい!! これは無いっ! これは無いわぁ。こんな若い女の子達とやり合って負けて泣くってなんなの??
『それだけ真剣に鍛練したからこその悔し涙なのじゃろうが、――言うても何の救いにもならんか』ボソッ
「うんうん、リリスちゃんは凄かったよ!」
「私達の時とはミリアーナさんの動きが全然違ってたもん。アレがミリアーナさんの本気だったんだね」
「頑張った」
若い女の子との鍛練で負けて、悔しくて泣いてしまって、少女達に慰められるとか……、情けなくてマジで泣けてくる。
『涙の無限ループなのじゃ』ボソッ
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