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二章 一年目あきの月
17 あきの月1日、動物屋の店主③
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「もちろん、あるよ。今朝とれたばかりの新鮮なものがね」
イーヴィンの素晴らしいスルーに毒気を抜かれながらも、ローナンはカウンターにタマゴとミルクを用意した。
紙製のエッグケースに入ったタマゴも、瓶に入ったミルクもキラキラ輝いていて、どちらも美味しそうに見える。
この世界の食べ物は、品質が高いと光るのだ。最も高いものになると、虹色に光るらしい。
目の前にあるのは星が瞬くように銀色に輝いているから、上から三番目のBクラスなのだろう。因みに、最上級がSで虹色、Aは金色、その下のBは銀色。C以下は無色と続く。
イーヴィンは皮袋から出した硬貨を渡すと、差し出された瓶とケースを慎重にカゴへしまい込んだ。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、お買い上げありがとうございます。あぁ、そうだ。初来店のお祝いに、これをプレゼントするね」
そう言ってローナンが差し出してきたのは、小さな笛だった。小指の第二関節くらいのサイズの筒状のものに、丈夫な革紐がついたそれは、ネックレスになっているらしい。
「それは魔法の笛だよ。吹くと、君が所有する全ての動物が小屋から入ったり出たりする。放牧する時、便利だろう?今はまだ必要ないかもしれないけれど、ニワトリを飼うなら持っていて損はない」
「わぁ!ありがとうございます!」
喜びながら、イーヴィンは「まただ……」と呟いた。
そう、またである。
雑貨屋の種に続き、この魔法の笛もゲーム中盤で売りに出されるアイテムだった。
まだ動物を飼育していないイーヴィンには無用の物だが、それは今だけだからと有り難く貰い受ける。
ゆくゆくは、あらゆる家畜を揃えていきたいと思っているから、遠くない未来に使えるはずだ。
早速首にかけてみると、ローナンは満足げに頷いた。
「牧場生活、楽しんでね。寂しくなったら、一緒に食事でもどうかな?」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、シルキーが一緒なので大丈夫です。今度はニワトリを買いに来るので、その時はよろしくお願いしますね!」
盛大にローナンとの恋愛フラグをへし折りながら、イーヴィンは店を後にした。
残されたローナンはしばらく窓から見える彼女の背を見つめていたが、その姿が見えなくなるとため息を吐いた。
「僕は、自分で思っているよりモテるタイプじゃなかったんだなぁ……恥ずかしい」
イーヴィンの素晴らしいスルーに毒気を抜かれながらも、ローナンはカウンターにタマゴとミルクを用意した。
紙製のエッグケースに入ったタマゴも、瓶に入ったミルクもキラキラ輝いていて、どちらも美味しそうに見える。
この世界の食べ物は、品質が高いと光るのだ。最も高いものになると、虹色に光るらしい。
目の前にあるのは星が瞬くように銀色に輝いているから、上から三番目のBクラスなのだろう。因みに、最上級がSで虹色、Aは金色、その下のBは銀色。C以下は無色と続く。
イーヴィンは皮袋から出した硬貨を渡すと、差し出された瓶とケースを慎重にカゴへしまい込んだ。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、お買い上げありがとうございます。あぁ、そうだ。初来店のお祝いに、これをプレゼントするね」
そう言ってローナンが差し出してきたのは、小さな笛だった。小指の第二関節くらいのサイズの筒状のものに、丈夫な革紐がついたそれは、ネックレスになっているらしい。
「それは魔法の笛だよ。吹くと、君が所有する全ての動物が小屋から入ったり出たりする。放牧する時、便利だろう?今はまだ必要ないかもしれないけれど、ニワトリを飼うなら持っていて損はない」
「わぁ!ありがとうございます!」
喜びながら、イーヴィンは「まただ……」と呟いた。
そう、またである。
雑貨屋の種に続き、この魔法の笛もゲーム中盤で売りに出されるアイテムだった。
まだ動物を飼育していないイーヴィンには無用の物だが、それは今だけだからと有り難く貰い受ける。
ゆくゆくは、あらゆる家畜を揃えていきたいと思っているから、遠くない未来に使えるはずだ。
早速首にかけてみると、ローナンは満足げに頷いた。
「牧場生活、楽しんでね。寂しくなったら、一緒に食事でもどうかな?」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、シルキーが一緒なので大丈夫です。今度はニワトリを買いに来るので、その時はよろしくお願いしますね!」
盛大にローナンとの恋愛フラグをへし折りながら、イーヴィンは店を後にした。
残されたローナンはしばらく窓から見える彼女の背を見つめていたが、その姿が見えなくなるとため息を吐いた。
「僕は、自分で思っているよりモテるタイプじゃなかったんだなぁ……恥ずかしい」
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