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二章 一年目あきの月
18 あきの月5日、出荷業を営む少女①
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イーヴィンの牧場には、野菜が十個収穫出来るくらいの、小さな畑が四つある。
その畑に、あきの月一日に買ってきた五種類の種のうち、ニンジン、ホウレンソウ、ナスとサツマイモを植えた。
二日にはホウレンソウの芽が出て、三日にはニンジンの芽が出た。
この世界の野菜は、前世の世界より遥かに早く育つ。ニンジンは七日、ホウレンソウとサツマイモは五日、ナスとピーマンは連作出来る野菜なので最初は十五日かかるが、その後は三日ごとに収穫出来る。
一年が百二十日ということを考えれば、納得の成長速度である。
どうやら女神や妖精の力が作用して、この世界の、特にこの国においては農作物が早く育つらしい。
残したピーマンの種は、そっと棚に置いてある。本当なら連作出来るピーマンは育てるべき野菜である。だというのに、彼女はそれを棚の飾りにしていた。
なぜなら、イーヴィンはピーマンが大嫌いだからだ。緑色にピカピカしているアレを見るだけで、口の中が苦くなる。
うっかり畑で作ったりしたら、シルキーが食卓に出すかもしれない。
これは売り物だから食卓に出さないでと言えば良いだけかもしれないが、イーヴィンはなんとなく彼にピーマンが苦手だと知られるのが恥ずかしい気がしていた。
その恥ずかしいという気持ちは、貴婦人のような佇まいの彼にどう思われるかーー綺麗な女性に認めてもらいたいとかそういう気持ちなのか、それとも男として意識してのことなのかは定かではない。
とはいえ、彼相手に多少の羞恥を感じるようになったということは、彼女の母からしてみれば喜ばしい進歩だろう。
水をたっぷり入れたジョウロを抱え、イーヴィンは畑ですくすく育つ野菜に水をかけて回る。
「ニンジンさん、おはよう!少し見えてきたオレンジ色の頭が可愛いね。もうそろそろ収穫かな。ナスさんもおはよう!……うん、もうちょっと頑張ろうか!大丈夫、しっかり収穫まで面倒みるからね。サツマイモさんもおはよう!土の下だからよく分からないけど、今日収穫するからね。いい子で待っているように。ホウレンソウくんも、おはよう!君も収穫時期だね」
前世の記憶通りなら、サツマイモはもう採れ頃である。
天に向かって青々とした葉を広げるホウレンソウは、見た目からしても収穫時期だと分かる。葉の上をコロンと落ちていく雫が、陽光に反射して綺麗だ。
「世界は光で満ちている!」
思わず詩的な言葉が出るくらいには、イーヴィンはご機嫌だった。
だって、初めての収穫なのだ。ご機嫌にならないわけがない。
「ニンジンやホウレンソウも連作だったら、ガッツリ稼げたのになぁ」
その畑に、あきの月一日に買ってきた五種類の種のうち、ニンジン、ホウレンソウ、ナスとサツマイモを植えた。
二日にはホウレンソウの芽が出て、三日にはニンジンの芽が出た。
この世界の野菜は、前世の世界より遥かに早く育つ。ニンジンは七日、ホウレンソウとサツマイモは五日、ナスとピーマンは連作出来る野菜なので最初は十五日かかるが、その後は三日ごとに収穫出来る。
一年が百二十日ということを考えれば、納得の成長速度である。
どうやら女神や妖精の力が作用して、この世界の、特にこの国においては農作物が早く育つらしい。
残したピーマンの種は、そっと棚に置いてある。本当なら連作出来るピーマンは育てるべき野菜である。だというのに、彼女はそれを棚の飾りにしていた。
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とはいえ、彼相手に多少の羞恥を感じるようになったということは、彼女の母からしてみれば喜ばしい進歩だろう。
水をたっぷり入れたジョウロを抱え、イーヴィンは畑ですくすく育つ野菜に水をかけて回る。
「ニンジンさん、おはよう!少し見えてきたオレンジ色の頭が可愛いね。もうそろそろ収穫かな。ナスさんもおはよう!……うん、もうちょっと頑張ろうか!大丈夫、しっかり収穫まで面倒みるからね。サツマイモさんもおはよう!土の下だからよく分からないけど、今日収穫するからね。いい子で待っているように。ホウレンソウくんも、おはよう!君も収穫時期だね」
前世の記憶通りなら、サツマイモはもう採れ頃である。
天に向かって青々とした葉を広げるホウレンソウは、見た目からしても収穫時期だと分かる。葉の上をコロンと落ちていく雫が、陽光に反射して綺麗だ。
「世界は光で満ちている!」
思わず詩的な言葉が出るくらいには、イーヴィンはご機嫌だった。
だって、初めての収穫なのだ。ご機嫌にならないわけがない。
「ニンジンやホウレンソウも連作だったら、ガッツリ稼げたのになぁ」
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