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六章

80 エディの独占欲

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 ここはやはり、帰すべきだろう。

「ごめん。無理だよね。僕、帰る」

 エディはロキースの間を拒否とみなしたようだ。

 顔を俯けたまま、寂しげに「バイバイ」と背を向けるエディ。

 その姿を見て、ロキースは心底後悔した。

 抱きしめて甘やかすと決めていたのに。どうして、それが出来ないのだ、と。

 帰すと決めたくせに、逃げるように足早に扉へ向かうエディの腕を、ロキースは掴んだ。

「エディ。どうして、泊まりたいのだ?」

「……家に、帰りたくない。帰ったらきっと、ルタさんは僕に言ってくる。ロキースをちょうだいって。ロキースを渡す気なんてないけれど、彼女は美人だし、僕はこんなチンチクリンだから……心配に、なる。僕がここに居れば、少なくともルタさんに会うことはないし、万が一彼女がやって来ても、僕がロキースを引き離せるかなって、そう、思って……うぅぅぅ。ごめん、ただの独占欲。だから、ロキースは気にしないで。じゃあ、僕、帰るから。手、離して?」

 クイクイと掴まれた腕を振るエディに、ロキースは拘束する手を離すどころか、ギュッと掴んだ。

 そのまま強引に彼女を引き寄せ、ポスンと胸に顔を押し付ける。

 抱え込むように抱き寄せると、湧き上がる愛しさが口から零れ落ちた。

「エディ、愛している」

「ふぁっ⁈」

 耳元で、ゾクゾクするほど色っぽい|低音バリトンがエディに愛を囁く。

 エディの体から、ガクンと力が抜けた。どうやら、彼女は腰が抜けてしまったらしい。

 ヘナヘナと崩れ落ちていくエディを、ロキースは軽々と抱き上げた。

 エディを横抱きにして、膝の上に乗せながら、ロキースはゆったりとソファへ腰掛けた。

 力の抜けた腰を、労わるように撫でていたら、その途中でようやくエディは我に返ったらしい。

 真っ赤な顔で、ロキースを睨みつけてきた。

 彼からしてみたら、可愛いの一言に尽きるのだけれど。

「と、突然なにを言っているの!」

「思いがけず、エディから嬉しい話を聞けたから、そのお返しだ」

 叩くふりで振り上げられた手を取り、ロキースは小さな手の甲にキスを落とす。

 もうこれ以上ないくらい赤くなったエディは、茹でだこみたいだ。

「いぃぃぃ!」

 奇声を上げながらポカスカと叩いてくるが、ちっとも痛くない。

「可愛いな、エディは」

 わざと耳元で囁けば、エディの奇声と手が止まる。

 顔を覗き込むと、エディは隠すようにロキースの胸に顔を押し付けた。

 ああ、かわいい。
 かわいすぎて、食べてしまいたい。

 今夜はもう、彼女を帰せそうにない。

 帰りたくないと本人が言っているのだし、良いじゃないか。

 果たしてその晩、エディはロキースに何をされたのか。

 幸か不幸か、至って健全な一晩だったようである。
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