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五章

67 一触即発

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 ロキースはベッドの縁へ腰を下ろすと、エディを見つめた。

 寝起きだからか、彼女の匂いが濃い。ミルクに蜂蜜を混ぜたような甘い匂いは、ロキースの理性を軽々と揺さぶってくる。

 ロキースは本能のままに、ベッドの縁を握っていた手をエディの手の上に重ねた。

 ビクリと跳ねた手。だが、彼女は重なった手を見下ろしたまま、微動だにしない。

 手を繋いだこともあったのに。

 今更そんな反応をするエディが、ロキースは愛しくてたまらない。

 だって、どう考えたって意識されている。

 一体何が決め手だったのかは分からないが、彼女はロキースのことを男として意識しているに違いない。

 ロキースはこの確信を確かなものにすべく、エディとの距離を詰めた。

 少しだけ、座る位置を変えてみる。

 すると、エディはヒュッと息を飲んだ。

 呼吸するのを忘れてしまったように、エディは唇を引き結んでロキースを見つめてくる。

 まるで、獲物を見つめる猛禽類みたいだ。引き絞った弓のように、その目は決して、ロキースから離れない。

 ロキースが動いたら、彼女はどんな反応をするのだろうか。

 少しだけいじめてみたいという、意地悪な気持ちが湧いてくる。

 ロキースは、重ねていたエディの手を握る。

 親指でスリスリと撫ぜると、爛々らんらんとしていたエディの目が、今度は潤み始めた。

「ロキース……?」

 やめてほしいのだろうか。

 だが残念なことに、ロキースはやめたくないと思ってしまった。

 潤んだ目で見上げてくるエディは、食べたくなるほどかわいかったから。

 ロキースは、エディを食べたくて食べたくて仕方がなくなった。

 ゴクンと喉を鳴らした彼は、エディの手を持ち上げると唇を寄せる。

 紳士が淑女に礼をするように、指先へのキスで終わらせるつもりだった。

 まだまだ子供な彼女には、それだけでも許容範囲をオーバーすると思ったからだ。

 だが、理性が緩んだ獣人は、こんな時、ろくなことをしない。

 キスをするつもりで唇を寄せたはずだったのに、ロキースはあろうことか、エディの指を口に含んでいた。
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