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五章
64 元魔獣による魔獣講座
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家へ向かいがてら、ロキースは改めて魔獣について話した。
これ以上エディに無駄な心配をかけたくないということもあったし、なにより、彼自身のことを知ってもらいたかったのかもしれない。
魔獣は、人に惹かれる性質を持っている。
その性質があるために、理性のある魔獣は人に恋をして、理性のない魔獣は恋情をすっ飛ばして「人を食べたい」という食欲に繋がってしまうのだ。
食欲のままに、理性のない魔獣が人を襲う。
それによって、人は魔獣を警戒する。
人からしてみたら、目の前にいる魔獣に理性があるのか無いのかなんて分からない。
結果として、本能のままに人を喰らおうとする理性のない魔獣のせいで人は魔獣を恐れ、忌み嫌い、時に討伐し、稀に恋を実らせるという歴史が続いてきた。
「ロスティの魔獣研究者が『魔獣の初恋』という論文を発表してからは、以前よりやりやすくなったらしい」
「なるほど」
人が魔獣を忌み嫌っていることを、理性のある魔獣は理解している。
だから、基本的には近づかないようにしているそうだ。
「だから、理性のある魔獣は安易に村へ行ったりしない。人を怯えさせてしまうからな。稀に恋する相手を探しに行ったりもするが、人にやられるほど弱くはない。エディが普段相手にしていた魔獣は理性のない魔獣で、見た目は同じ魔獣に見えるだろうが、そこには明確な差がある。だがまぁ、基本は同じだ。奴らも、一応は人に惹かれる性質を持っている。理性がない故に、恋を自覚する前に食べようとするのだが」
そこで言葉を切ったロキースは、キッと鋭い視線を近くの枝の上へ向けた。
つられるようにエディがそこを見上げれば、アーンと今にもエディへ齧り付こうとしている魔栗鼠の前歯がギランと光る。
「うわっ!」
「ギュッ!」
ロキースの射るような視線を受けて、魔栗鼠はピューッと逃げていく。
「油断ならん」と呟くロキースの足が、少しスピードを上げた。
(まさに説明の最中に襲われかけるとか、タイムリーすぎじゃないか)
ここが魔の森の中だということを、エディは忘れるところだった。
ロキースの匂いと温もりに包まれてすっかり呆けていたと、彼女は慌てて気を引き締める。
「このように、理性のない魔獣は気に入った人を食おうとするわけだ」
「つまり、僕が今まで仕留めてきた魔獣は理性がない魔獣で、ロキースの仲間ではないということ?」
「そういうことだ。だから、エディが気にかける必要は一切ない。トルトルニアの民のために、存分に力を奮ってくれ。だが、たとえ理性がある魔獣をエディが仕留めたとしても、俺は何とも思わない。俺にとって、エディ以外はどうでもいいんだ」
臆面もなく「エディ以外はどうでもいい」と言い切るロキースに、エディは恥ずかしくてたまらない。
だけど、同時に嬉しくてしょうがないという気持ちもあって、モニョモニョと小さな声で「ありがとう」とだけ告げた。
重すぎる愛に臆することなく恥ずかしいと頰を染めるあたり、エディはロキースという沼に落ちているのだろう。それはもう、ズブズブに。
これ以上エディに無駄な心配をかけたくないということもあったし、なにより、彼自身のことを知ってもらいたかったのかもしれない。
魔獣は、人に惹かれる性質を持っている。
その性質があるために、理性のある魔獣は人に恋をして、理性のない魔獣は恋情をすっ飛ばして「人を食べたい」という食欲に繋がってしまうのだ。
食欲のままに、理性のない魔獣が人を襲う。
それによって、人は魔獣を警戒する。
人からしてみたら、目の前にいる魔獣に理性があるのか無いのかなんて分からない。
結果として、本能のままに人を喰らおうとする理性のない魔獣のせいで人は魔獣を恐れ、忌み嫌い、時に討伐し、稀に恋を実らせるという歴史が続いてきた。
「ロスティの魔獣研究者が『魔獣の初恋』という論文を発表してからは、以前よりやりやすくなったらしい」
「なるほど」
人が魔獣を忌み嫌っていることを、理性のある魔獣は理解している。
だから、基本的には近づかないようにしているそうだ。
「だから、理性のある魔獣は安易に村へ行ったりしない。人を怯えさせてしまうからな。稀に恋する相手を探しに行ったりもするが、人にやられるほど弱くはない。エディが普段相手にしていた魔獣は理性のない魔獣で、見た目は同じ魔獣に見えるだろうが、そこには明確な差がある。だがまぁ、基本は同じだ。奴らも、一応は人に惹かれる性質を持っている。理性がない故に、恋を自覚する前に食べようとするのだが」
そこで言葉を切ったロキースは、キッと鋭い視線を近くの枝の上へ向けた。
つられるようにエディがそこを見上げれば、アーンと今にもエディへ齧り付こうとしている魔栗鼠の前歯がギランと光る。
「うわっ!」
「ギュッ!」
ロキースの射るような視線を受けて、魔栗鼠はピューッと逃げていく。
「油断ならん」と呟くロキースの足が、少しスピードを上げた。
(まさに説明の最中に襲われかけるとか、タイムリーすぎじゃないか)
ここが魔の森の中だということを、エディは忘れるところだった。
ロキースの匂いと温もりに包まれてすっかり呆けていたと、彼女は慌てて気を引き締める。
「このように、理性のない魔獣は気に入った人を食おうとするわけだ」
「つまり、僕が今まで仕留めてきた魔獣は理性がない魔獣で、ロキースの仲間ではないということ?」
「そういうことだ。だから、エディが気にかける必要は一切ない。トルトルニアの民のために、存分に力を奮ってくれ。だが、たとえ理性がある魔獣をエディが仕留めたとしても、俺は何とも思わない。俺にとって、エディ以外はどうでもいいんだ」
臆面もなく「エディ以外はどうでもいい」と言い切るロキースに、エディは恥ずかしくてたまらない。
だけど、同時に嬉しくてしょうがないという気持ちもあって、モニョモニョと小さな声で「ありがとう」とだけ告げた。
重すぎる愛に臆することなく恥ずかしいと頰を染めるあたり、エディはロキースという沼に落ちているのだろう。それはもう、ズブズブに。
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