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四章

43 魔力属性のはなし

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 ロキースとエディ、二人だけのお茶会はそれから何度か続いていた。

 トルトルニアには秘密の逢瀬が出来る場所なんてなかったし、それに、エディ自身がロキースの家を気に入ったせいもあった。

 ロキースがロスティの菓子店で茶菓子を用意し、エディが紅茶を淹れる。

 回を重ねて、なんとなくそんな流れが出来ていた。

 二人が出会った秋の季節は、そろそろ終わりを迎えようとしている。

 魔の森にも、じわじわと冬の気配が近づいてきていた。

 ロキースの家の周りには特別な何かを施しているのか、秋も終わりだというのに春のような暖かさだ。

 地面に生える草花の周りを、蝶や蜂が忙しなく飛んでいる。

 長閑のどかな春のような風景を、エディは不思議そうに眺めた。

「ねぇ、ロキース」

「なんだ?」

 庭先の土を掘り返していたロキースは、エディの声に顔を上げた。

 彼の足元には、作りかけの畑がある。

 庭があるなら家庭菜園でもしてみたら、と軽い気持ちでエディが提案したら、早速作ることにしたらしい。

(こういうの、尽くし系男子って言うんだっけ?)

 確か、リディアはそう言っていたはずだ。

 女の子のお願いやワガママ、無理無茶無謀な命令まで全力で叶えてしまう。それが、尽くし系男子だと。

 〇〇系男子はいろいろ種類がありすぎて、覚えるのが大変だ。エディは興味がないから尚更に。

 クワを持つロキースの手つきは、熊が川で鮭を岸へ放り投げるような感じで危なっかしい。

 エディは本職じゃないから正しい持ち方なんて分からないけれど、少なくとも、クワは横じゃなくて縦に振るものだろう。

(クワっていうより、カマみたいな使い方なんだよなぁ。まぁ、一応耕せてはいるみたいだし、いっか)

 楽しそうに農作業に励むロキースに、エディは口の中で「かわいい」と呟く。

 彼のことをかわいいと言うのは、もう何度目だろう。

 何事にも一生懸命で、かわいくて仕方がない。

「どうしてこの家の周りは、暖かいままなの? もうすぐ、冬がくるのに」

「あぁ。この家の周辺は、俺の縄張りだからだ」

「縄張りだから?」

 言っている意味が分からなくて、エディは尋ね返した。

 だって、縄張りだから冬でも暖かいなんて、そんなおかしな話はない。

「魔獣はそれぞれ相性の良い属性の魔術を、息するのと同じように使える。エディも知っているだろう?」

 森守であるエディは、「もちろん」と答えた。

 魔獣が魔術を使うのは、常識である。だからこそ、魔鳥の一羽、魔兎一羽と侮らずに確実に仕留めなくてはいけないのだから。

「俺と相性が良いのは土属性。地熱を調整して、ちょうど良い暑さにしている」

「へぇぇ、すごいね」

「そうか? 人でも、魔術を使う者はいるだろう」

 特別なことでもない。

 そう言いながらも、ロキースの耳はピンとしている。

 エディのなんでもないような褒め言葉が、嬉しかったらしい。

 目は口ほどに物を言うということわざがあるが、ロキースの場合は目より耳に出やすい。

 ピョコピョコ、ピルピル。彼の耳は、器用に動く。

「いるけど……ずっと使っている人はいないんじゃないかな。だって、普通は詠唱とか魔法陣とかいろいろ準備が必要だし。だから、ロキースのその力は、すごいものだと思う」

 キラキラと尊敬の眼差しで見上げてくるエディに、ロキースの手からクワがすっぽ抜けそうになる。

 慌てて握り直したせいで力加減が出来ず、クワの柄は無残にも真っ二つになってしまった。
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