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二章

32 好きな子の家

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『家が完成したから、招待したい』

 その旨の手紙を出したら、エディからすぐに返事がかえってきた。

 答えは、イエス。

 すぐに返事がきたこと、それから以前の期待に満ちた彼女の目を思い出して、ロキースは密かにガッツポーズをした。

 エディからの手紙には、出来れば迎えに来てくれると嬉しいと書いてあった。

 魔の森からトルトルニアを守る彼女も、実際に森へ入ることは怖いらしい。

 そんなところも可愛いと、ロキースはルンルンで彼女を迎えに行った。

 ヴィリニュスの屋敷の場所は、よく知っている。

 魔の森からでもよく見える高い塔のような見張り台があったし、なにより、その台で見張りに立つ彼女を見つめるのは、ロキースの日課でもあったからだ。

「だが、ここへ来るのは初めてだな」

 遠くからは、数えきれないくらい見てきた。

 しかし、こうしていざ訪問するとなると緊張する。

 目の前の扉はロキースの背よりも小さいはずなのに、大きく感じた。

 まるで、ロキースの訪れを拒んでいるようにも見えて、つい怖気付く。

 何度も深呼吸して、それでも落ち着かなくて。何度も身支度をチェックしては帰ろうと踵を返してみたり。

 なかなかに不審者めいた行動をしていたロキースだったが、やっぱり約束しているのだからと思い切ってドアノッカーを叩いた。

 コンコンコンッ。

 軽く叩いたつもりだったのに、やけに耳につく。

 もっと軽く叩けば良かったかと心配していたら、中から少女が出てきた。

 エディより拳一つ分くらい背が高く、栗色の髪は後頭部で綺麗にまとめられている。黒いワンピースに白いエプロンという格好は、ロスティの大使館で見たことがあった。メイドだ。

 メイドは、ロキースを見るなり、ほんの少し驚いたような顔をした。

 それを見たロキースは、もしかして怖がらせてしまっただろうかと思った。

 実のところ、メイドは彼の優れた容姿と背の高さに目を見張っただけなのだが、元は魔熊な彼には思い至らないらしい。

 ヴィリニュス家のメイドを怖がらせてしまったと、帽子の中の耳はションボリと伏せっていた。

「ロキース様ですね。お待ちしておりました。ご案内致します」

「ありがとうございます」

 ロキースが礼を言うと、メイドはペコリと頭を下げた。

 怖がらせてしまったのに、応対はきちんとしている。エディの家は、しっかりとしたメイドを雇っているのだなとロキースは自分のことのように嬉しくなった。
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