公爵様だなんて聞いてません！〜恋もお店もジンクスも、全てもふもふにお任せください〜

五章 シュエット・ミリーレデルの悩み

68 エリオットの答え②

『変わったカフェが流行っているのだ』

　エリオットの案内を任された隣国の王子が連れて行ってくれたのは、猫カフェという猫を愛でるカフェだった。

　入り口の看板には『保護猫カフェ・ねこのいえ』と書いてあって、店内にはさまざまな猫たちが自由に暮らしているらしかった。

『この猫たちはみんな、保護された猫なのだ。もともと野良だった猫や、多頭飼育崩壊となった猫、捨て猫などさまざまな過去を持つ猫が生活している』

　保護猫カフェには、二種類の目的があるのだそうだ。

　一つは、保護猫たちの譲渡──里親を見つけるということ。

　もう一つは、家で猫を飼えない人や猫が大好きな人たちに、かわいい猫たちと楽しいひと時を過ごしてもらうということ。

　里親募集を目的にしていないカフェは、利用料金の一部を猫の保護活動に寄付しているらしい。

「カフェと言うとシュエットは尻込みしそうだが……猫カフェは確か、ドリンクだけの提供だったはず……」

「ふむ。何やら思いついたようじゃな？」

　思ったより早かったの。

　ピピはそう言って、カラカラと楽しそうに小さく笑った。

「隣国を視察した際、保護猫カフェという店を案内してもらったんだ」

　寝ているシュエットを起こさないように、二人はキッチンの片隅にしゃがみ込んだ。

「保護猫カフェ、とな？」

「保護した猫がカフェ店内で暮らしているんだ。客は猫と楽しいひと時を過ごすために入店して、決まった時間の間、猫と自由に過ごせる。そして、気に入った猫がいれば、面談などを行った上で猫を譲渡するらしい。猫を保護し、飼い主をマッチングする場所として、保護猫カフェはあると言っていた」

「つまり、それをフクロウに変える、と？」

「ああ。シュエットは、店のフクロウたちに家族を見つけてあげたいと言っていた。ただ待っているだけでは、店に客は来ない。でも、カフェなら？　少しは、客が来るかもしれない。ここは、ペルッシュ横丁。観光客なら、たくさんいる」

「なるほど。それはなんというか……面白そうじゃ」

　にやり、とピピが笑う。

　二人の話を聞いていたラパスが、「いいんじゃないの？」と言うように小さく鳴いた。