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四章 シュエット・ミリーレデルの新生活

56 次に向かう先は

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 市場で買い物を終えると、エリオットの腕には抱えきれないほどの袋がぶら下がっていた。

 さすがに一人で持たせるには申し訳ない量で、「これは僕の仕事だから」と遠慮するエリオットからシュエットはいくつかの袋を取り上げて持つ。

 来た道を戻るのかと思いきや、エリオットの足はシュエットの家とは違う方向へ向かおうとしていた。

 シュエットは、まさかまだ買い物をするつもりかと、ギョッとする。

 思わず腕を引いて引き留めた彼女に、エリオットはキョトン、と掴まれた腕を見て、それからはにかんだ表情を浮かべた。

「エリオット? さすがにもう、買い物は無理よ?」

「買い物じゃないよ。シュエットの部屋に住まわせてもらうのに、着替えとか取りに行きたいだけだ。それに、説明もしなくてはいけないし……」

「ヴォラティル魔導書院へ行くの? でも、同僚から、嫁選びの書を持ってくるまで戻ってくるなと言われているのでしょう?」

「ああ、だから持っていくよ?」

 そう言って、エリオットは上空を見上げた。

 つられるように空を見上げれば、大きく翼を広げたモリフクロウが、悠々と飛んでいる。

「また、持って出ることになるけれどね」

 おどけるように笑うエリオットに、シュエットもなるほどと笑みを零す。

 握手さえままならなかった男が、少しずつシュエットに懐いていくようで、なんだか嬉しい。

(嫌われているより、よっぽど良いもの)

 それに、ヴォラティル魔導書院へ行くのは初めてだ。

 魔力がないから行っても仕方がないのだが、いつかは行ってみたいと思っていた。

 学院の教科書でしか見たことがなかった『鳥籠』を思い出して、シュエットは足取り軽くエリオットの後を追った。
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