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四章

102 悪役令嬢たちの茶会②

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 三人に見られているとも知らず、枕を抱きかかえてベッドの上でうつぶせになったペリーウィンクルは、涙声で「ヴィアベル」と三人が知らない名前を連呼している。
 時折ズズズと鼻をすすっては、メソメソ泣きながら鼻をかむ。丸めた紙はゴミ箱に届かず、床に転がっていった。それがなんとも、物悲しい。

「あらまぁ。ヴィアベルって誰なのかしらねぇ」

「ローズマリー様も知らないのですか?」

「ええ、知らないわ。でも、それにしたって切ない声で呼ぶのね。あんなペリー、初めて見たわ」

「そうなのかい? あの様子から察するに、失恋だろうか」

 サントリナの言葉を肯定するように、ペリーウィンクルの自室から「なんで素直に好きって言わなかったの」とか「意気地なしのコンコンチキ」なんて呪詛じゅそみたいな声が漏れ聞こえてくる。

「コンコンチキってなんでしょう?」

「さぁ? ボクも知らない言葉だな」

「……人や物事のあとにつけて、語意を強調する言葉ですわ」

「へぇ。つまり、すごく意気地なしって言っているわけか」

「ええ、そうですわ」

 それ以上拾える情報はないと思ったローズマリーは、トーテムポールの列から離れた。
 そのあとを、サントリナとセリが続く。

「それにしても、ペリーの部屋はすっかり荒れてしまいましたわね。そのうちカビでも生えそうですわ」

 サントリナとセリにソファを勧めながら、ローズマリーはお茶の準備を始めた。
 残念ながら、ペリーウィンクルのように体調に合わせてハーブティーを処方するなんてことはできないので、いつもの紅茶だが。

「部屋の消臭には、ミントを容器に入れて、熱湯を注いで湯気を立たせるのが良いってペリーウィンクルさんが言っていたね」

「今日こそ四人でお茶が飲めると思っていたのですが……」

 残念そうに笑うセリに、ローズマリーとサントリナも同意するように苦く笑んだ。
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