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三章

77 オレンジの媚薬③

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「ヴィアベル……」

 すがるような視線を受けて、ヴィアベルが「うっ」と声を漏らす。
 ペリーウィンクルに頼られることが生きがいといっても過言ではない彼は、そんな場合ではないと自身を叱咤しったした。
 それからつとめていつも通りのしれっとした表情を貼り付けて、ペリーウィンクルの頬を撫でる。

「安心しろ。私とひだまりの妖精の力は五分五分、さらに三日月の夜は私の力が強くなるから、勝算はある」

「五分五分……って、五分五分⁉︎ ヴィアベルってば、ひだまりの妖精と同じくらいなわけ⁉︎ 聞いてないんですけど!」

 ゲーム上では明かされていないが、設定資料集によれば、ひだまりの妖精は一国を滅することができるくらいの力を秘めているらしい、と書いてあったことを思い出す。
 五分五分ということは、ヴィアベルにも同じだけの力があるっていうことで──とそこまで考えて、ペリーウィンクルは改めてヴィアベルのすごさを感じた。

「ヴィアベルってすごいんだね」

 ペリーウィンクルのブラックオパールのような目が、星のようにキラキラ輝く。
 愛してやまないその目で見つめられて、ヴィアベルはらしくもなく顔を赤らめた。

 真正面から見つめられて、ヴィアベルの息が上がる。
 引っ込めたはずのやましい気持ちが、再び彼を襲った。
 見つめ返すことさえ難しくなって、ヴィアベルは口元を隠すように手で覆いながら顔を背けた。

「ヴィアベル?」

「なんだ」

「もしかして、照れていたりする?」

「そんなわけ……あるだろうが」

 うっかりではない。これは、わざとだ。
 こう言ったらペリーウィンクルはどんな反応をするのだろうと、そう思ったら見てみたくて仕方がなくなった。
 ちょっとした仕返しの意味もある。だって自分はこんなにもペリーウィンクルに振り回されているというのに、彼女はちっとも動じていないのだから。

「うぇっ⁉︎ あるの⁉︎」

 ヴィアベルの答えに、ペリーウィンクルは後退りながら驚いた。
 そこまで驚くことか、とヴィアベルは不機嫌そうに唇を歪ませ、彼女を睨む。

「おまえ、私をなんだと思っている?」

「え、ヴィアベルはヴィアベルでしょ」

 ケロリと言われては、毒気も抜ける。
 一世一代の大勝負とはいかないが、それなりに覚悟を決めて言ったセリフだっただけに、ヴィアベルは少なからず落胆した。
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