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二章
36 男装担当プリンス系悪役令嬢②
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(あぶない! これは危なかった。ちゃんと踏み止まれた私、偉い!)
踏み止まったところで、結局はローズマリーに押し通される未来しかない。
だが、流れるままに請け負ってしまうのは、なんだか癪だった。一矢報いるつもりも、はなからないのだが。
金色の長い髪を深紅のリボンで束ね、男性用のジャケットに細身のパンツを合わせた格好。
細身ながら無駄のない体躯は、綺麗系王子様に憧れる女子ならうっとりすること間違いなし。
晴れ渡る空のような青い目がついた顔は、爽やかの一言に尽きた。
彼──いや彼女は間違いなく、ニゲラルートにおける悪役令嬢、サントリナその人だ。
「すまない。自己紹介がまだだったね。ボクの名前はサントリナ。サントリナ・ローエンだ」
「……わ、私は、ペリーウィンクル、です。ローズマリー様の専属庭師をしております」
「どうぞよろしく、ペリーウィンクルさん」
「……よろしくお願いします?」
助けを求められて、自己紹介をされた。
怒涛の展開に置いてけぼりにされたような気持ちになりながら、ペリーウィンクルは困った顔で問いかける。
「あの……それで、助けてくれとは一体……?」
むしろ、助けてもらいたいのは自分の方だ。
現在進行形で、とても困ったことになっている。
(手を、離してくださぁぁい!)
もちろん、そんなことを面と向かっては言えない。
だって、サントリナは美形なのだ。
平々凡々としたペリーウィンクルは美形に手を握られるなんて経験はないに等しく、滅多にない経験を自ら手放すなんてことが出来ないくらいには、面食いなのである。
助けを求めてローズマリーへ視線を投げれば、わざとらしいまでにかわいい顔で微笑み返された。
自分でなんとかしてちょうだいとか、良かったわね、とかそんな声が聞こえてきそうである。
(ハァ~~かわいい~~)
かわいいが過ぎる。と、いつもの思考に戻ったところで、ペリーウィンクルははたと自分の格好を思い出した。
先程まで庭師の仕事をしていた彼女は、お世辞にも綺麗な格好とは言えない。
白のシャツに黒のパンツ、そして腰にはグリーンのガーデニングエプロン。
手袋をしながら作業をしていたので手は汚れていないが、エプロンのポケットにしまっている道具たちはそれなりに汚れている。
ローズマリーの庭師兼メイドとして、あるまじき失態だ。
ペリーウィンクルは丁寧にサントリナから距離を取ると、「着替えて参りますので失礼します」と自室へ逃げた。
踏み止まったところで、結局はローズマリーに押し通される未来しかない。
だが、流れるままに請け負ってしまうのは、なんだか癪だった。一矢報いるつもりも、はなからないのだが。
金色の長い髪を深紅のリボンで束ね、男性用のジャケットに細身のパンツを合わせた格好。
細身ながら無駄のない体躯は、綺麗系王子様に憧れる女子ならうっとりすること間違いなし。
晴れ渡る空のような青い目がついた顔は、爽やかの一言に尽きた。
彼──いや彼女は間違いなく、ニゲラルートにおける悪役令嬢、サントリナその人だ。
「すまない。自己紹介がまだだったね。ボクの名前はサントリナ。サントリナ・ローエンだ」
「……わ、私は、ペリーウィンクル、です。ローズマリー様の専属庭師をしております」
「どうぞよろしく、ペリーウィンクルさん」
「……よろしくお願いします?」
助けを求められて、自己紹介をされた。
怒涛の展開に置いてけぼりにされたような気持ちになりながら、ペリーウィンクルは困った顔で問いかける。
「あの……それで、助けてくれとは一体……?」
むしろ、助けてもらいたいのは自分の方だ。
現在進行形で、とても困ったことになっている。
(手を、離してくださぁぁい!)
もちろん、そんなことを面と向かっては言えない。
だって、サントリナは美形なのだ。
平々凡々としたペリーウィンクルは美形に手を握られるなんて経験はないに等しく、滅多にない経験を自ら手放すなんてことが出来ないくらいには、面食いなのである。
助けを求めてローズマリーへ視線を投げれば、わざとらしいまでにかわいい顔で微笑み返された。
自分でなんとかしてちょうだいとか、良かったわね、とかそんな声が聞こえてきそうである。
(ハァ~~かわいい~~)
かわいいが過ぎる。と、いつもの思考に戻ったところで、ペリーウィンクルははたと自分の格好を思い出した。
先程まで庭師の仕事をしていた彼女は、お世辞にも綺麗な格好とは言えない。
白のシャツに黒のパンツ、そして腰にはグリーンのガーデニングエプロン。
手袋をしながら作業をしていたので手は汚れていないが、エプロンのポケットにしまっている道具たちはそれなりに汚れている。
ローズマリーの庭師兼メイドとして、あるまじき失態だ。
ペリーウィンクルは丁寧にサントリナから距離を取ると、「着替えて参りますので失礼します」と自室へ逃げた。
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