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一章

13 かわいい担当テディベア系令息②

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 入学時と卒業時だけ渡される船で孤島に降り立ったペリーウィンクルは、二人分のトランクを抱えながら、「ほぁぁ」と口を半開きにしつつ、つたが絡んだ立派な門を見上げた。

 本日のペリーウィンクルは、わかりやすくクラシカルなメイドの格好だ。
 落ち着いた青紫色の髪色もあいまってか、妙に大人びて見える。

 結局、親離れを決意した手前ヴィアベルに助けてもらうことははばかられ、かと言って庭へ訪れた妖精たちは皆こぞって「ペリーウィンクルと契約なんて無理だよーう!」とお断りされてしまった。

 そんなわけで、ローズマリー付きの庭師ガーデナー兼メイドとして随伴ずいはんすることになったペリーウィンクルである。

「ここが妖精使い養成学校、スルスですか」

 スマートフォンの画面越しに見ていた世界が、ペリーウィンクルの目の前に広がっていた。
 船頭の手を借りて降りてきたローズマリーも、彼女の隣へ並び立ちながら感動しているようである。

(丸いほっぺがほんのりピンク色に……! 実に愛らしいです、お嬢様!)

 思わず抱きしめたくなる可愛らしさだ。
 やっぱりダイエットして良かったと、ペリーウィンクルはもう何度目になるか知れないことを考える。

「なんだか、感動しますわね」

「ええ。実際に見てみると、グワッとくるものがあります」

 正面に見える瀟洒しょうしゃな白の建物は、校舎のはずだ。
 今は見えないがその後ろにも立派な建物があって、そちらは寮。
 ゲーム通りであれば、二つの建物に挟まれるような形で中庭のような場所があって、そこは各自に与えられる箱庭のエリアになっているはずである。

「建物の白が、湖の青と森の緑で一層輝いて見えるようですわ」

「そうですねぇ」

「……ねぇ、ペリー。わたくしたち、できるかしら?」

 心配そうに見上げてくるローズマリーに、ペリーウィンクルはニッコリと笑いかけた。と、その時である。
 二人の目の前で、一人の少女が転んだ。

「きゃっ!」

 ズシャア、と音がするほど大胆なすっ転びようで、ローズマリーは思わず驚きに身を竦める。
 ペリーウィンクルはといえば、すかさずローズマリーの前へ立った際、ふわりとめくれ上がった少女のスカートの中に水色ストライプを見つけ、「ヒュウ、王道」とこっそり呟いていた。

 クセのない白銀色の長い髪が、白いレンガ道の上に散らばる。
 光の角度によって色を変える不思議な色をした髪だ。
 虹色の髪。何色にも染まる、髪。

 ペリーウィンクルもローズマリーも、その髪の少女を嫌というほど知っていた。

 いつだって俯いていて、表情がうかがえないようになっている、特徴のない顔。
 だけど髪だけは、強烈な印象を放っている。

 彼女の名前はなんだろう。
 分からないが、知っている。

 彼女は間違いなく、この世界のヒロインだった。
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