6 / 122
序章
06 マルベリーのお茶①
しおりを挟む
社交界で、小さな噂が流れている。
デュパンセ公爵家の娘、ローズマリー・デュパンセを助けた少女は、その功績を称えられて男爵家の庭師から公爵家の庭師へ昇進した、と。
まるで、濁流に飲まれた令嬢を颯爽と助け出したヒーローのような言われようだったが、実際はそこまでの一大事ではない。
あの場にいる誰もがローズマリーを助けられたはずなのにそれをしなかったのは、意地悪な彼女を疎ましく思っていたから。ちょっとくらい意地悪してやろうと、そんな気持ちだったに違いない。
(まぁ今は……悔い改めたみたいだし。そのうち、メイドたちも気づく……かなぁ?)
とはいえ、公爵家の庭師として雇われたペリーウィンクルは、現在ローズマリーの専属庭師ということになっている。
専属庭師、というとヴィヴァルディ以外の国ではなんのこっちゃとなるものだが、この国ではよくあることだ。
妖精が立ち寄りたくなる庭。
それを造るために、ヴィヴァルディでは庭師が重宝されている。
妖精と契約するためにはまず、妖精と出会わなくては始まらない。
その第一歩となるのが、妖精が立ち寄りたくなる庭、というわけだ。
さて、ではどんな庭が妖精たちに気に入られるのか。
一般的には、自然美を生かした田舎風の庭は植物系の妖精、幾何学的な庭は食べ物系の妖精、石を多用した庭は宝石や道具系の妖精が気にいる傾向にあるとされている。
ペリーウィンクルが得意とするのは、田舎風の庭だ。
ハーブをたくさん植えた実用的な庭が好きで、前世でも箱庭パートではハーブガーデンを作っていた。
普通は、狙っている攻略キャラの好みに合わせた箱庭を作るものだが、前世のペリーウィンクルは理想の箱庭を求めるあまり、攻略キャラ好みの箱庭を作ることはついぞなかった。
ちなみに、ローズマリーの妖精は食べ物系、ソレル王子の妖精は宝石系である。
妖精使いになることは、一種のステータスだ。
特に、高位の貴族は必須だと言っても過言ではない。
王族の場合、生まれた時に祝福しに来てくれた妖精の中から、もっとも相性の良い妖精が契約してくれる。
王弟を祖父に持つローズマリーも、生まれた時には妖精たちが祝福に来てくれたと言う。
祝福を受けられない貴族たちは、必死だ。
妖精と契約できた者こそ真の貴族だとされ、平民が妖精と契約しようものなら、彼らはこぞって養子縁組をしたがった。
ヒロインが平民であるにも関わらず次期国王であるソレルと結婚できるのは、そのおかげである。
強い妖精と契約することは、それだけの価値があることなのだ。
デュパンセ公爵家の娘、ローズマリー・デュパンセを助けた少女は、その功績を称えられて男爵家の庭師から公爵家の庭師へ昇進した、と。
まるで、濁流に飲まれた令嬢を颯爽と助け出したヒーローのような言われようだったが、実際はそこまでの一大事ではない。
あの場にいる誰もがローズマリーを助けられたはずなのにそれをしなかったのは、意地悪な彼女を疎ましく思っていたから。ちょっとくらい意地悪してやろうと、そんな気持ちだったに違いない。
(まぁ今は……悔い改めたみたいだし。そのうち、メイドたちも気づく……かなぁ?)
とはいえ、公爵家の庭師として雇われたペリーウィンクルは、現在ローズマリーの専属庭師ということになっている。
専属庭師、というとヴィヴァルディ以外の国ではなんのこっちゃとなるものだが、この国ではよくあることだ。
妖精が立ち寄りたくなる庭。
それを造るために、ヴィヴァルディでは庭師が重宝されている。
妖精と契約するためにはまず、妖精と出会わなくては始まらない。
その第一歩となるのが、妖精が立ち寄りたくなる庭、というわけだ。
さて、ではどんな庭が妖精たちに気に入られるのか。
一般的には、自然美を生かした田舎風の庭は植物系の妖精、幾何学的な庭は食べ物系の妖精、石を多用した庭は宝石や道具系の妖精が気にいる傾向にあるとされている。
ペリーウィンクルが得意とするのは、田舎風の庭だ。
ハーブをたくさん植えた実用的な庭が好きで、前世でも箱庭パートではハーブガーデンを作っていた。
普通は、狙っている攻略キャラの好みに合わせた箱庭を作るものだが、前世のペリーウィンクルは理想の箱庭を求めるあまり、攻略キャラ好みの箱庭を作ることはついぞなかった。
ちなみに、ローズマリーの妖精は食べ物系、ソレル王子の妖精は宝石系である。
妖精使いになることは、一種のステータスだ。
特に、高位の貴族は必須だと言っても過言ではない。
王族の場合、生まれた時に祝福しに来てくれた妖精の中から、もっとも相性の良い妖精が契約してくれる。
王弟を祖父に持つローズマリーも、生まれた時には妖精たちが祝福に来てくれたと言う。
祝福を受けられない貴族たちは、必死だ。
妖精と契約できた者こそ真の貴族だとされ、平民が妖精と契約しようものなら、彼らはこぞって養子縁組をしたがった。
ヒロインが平民であるにも関わらず次期国王であるソレルと結婚できるのは、そのおかげである。
強い妖精と契約することは、それだけの価値があることなのだ。
0
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される
未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」
目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。
冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。
だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし!
大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。
断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。
しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。
乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる